イタリアのラグジュアリーブランド「グッチ(GUCCI)」が、従来の「美の価値観」を塗り変えるような広告を次々と展開している。コスメラインのGucci Beautyでは、歯並びが整っていないモデルを起用し、肌のしわを修正しない広告も打ち出した。
重ね塗り、まつげが固まったマスカラの広告
グッチは2019年から、ブランドのクリエイティブディレクターを務めるアレッサンドロ・ミケーレ氏の監修で、新たなコスメラインを発表している。これまでに、新作の口紅やファンデーション、マスカラなどが発売された。
注目を集めたのが、新作マスカラの「L’Obscur」シリーズだ。
SNSなどで公開されたイメージ写真では、マスカラを何度も重ね塗りしているのか、まつげが固まってしまっている。
キャンペーン映像でも、モデルのまつげに何度もマスカラを重ねていくメイクアップを「チュートリアル」として紹介している。
「ダマにならない」ことが良しとされてきたアイメイクの基本に習わない宣伝手法で、注目が集まった。GUCCIは公式サイトで、「印象を左右する大切な目元に重ね塗りができるマスカラです」とコンセプトを明かしている。
しわやシミもそのまま
さらに、前述したイメージ写真では、モデルの肌のしわやシミが修正されず、自然のままの状態になっている。
写真の加工は、若者に現実離れしたボディ・イメージを植え付けるとして、ファッション業界やエンターテインメント業界では大きく問題視されてきた。過去には、歌手のゼンデイヤさんや俳優のキーラ・ナイトレイさんらが、細すぎるウエストのサイズや修正後の大きな胸などに抗議している。
世界最大の写真画像代理店、Getty(ゲッティ)社は、2017年からモデルの体型をPhotoshopなどで修正加工することを禁止している。
グッチが展開する広告写真は、こうした時代の流れに即したものと言えるだろう。ブランドは公式サイトで、「真の美しさは、不完全なものの中にこそ宿る」とのミケーレ氏のメッセージを紹介している。
口紅の広告も新しい
2019年に発表した口紅のキャンペーンでも、従来の化粧品の広告とは異なるイメージを打ち出した。
広告には、隙間の空いた前歯がチャームポイントのダニー・ミラーさんを起用。ミラーさんはマスカラの広告でもモデルを務めており、歌手としても活動している。
ミラーさんは自身のSNSで、「変わっている部分を祝福し、たとえどんな姿でもありのままの自分たちが特別で美しいということを祝福したい」とつづっている。
ミラーさんの広告写真は、ミラノやロンドン、ニューヨーク、メキシコシティのアートウォールでも大きく掲載された。
グッチの広告が見せる多様な美しさ
そのほかにも、Gucci BeautyのInstagramには、人種や性別、年齢など、さまざまな個性を持つモデルが登場している。
口紅の広告には、ダウン症のモデル、エリー・ゴールドスタインさんが起用された。
さまざまな人の美しさに焦点をあてた広告には、SNSでは賞賛の声も上がるが、一方では否定的な声も上がった。
しかし、売り上げは好調だ。WWD JAPANによると、口紅は発売から1カ月で100万本以上を売り上げたという。
Gucci BeautyがInstagramで展開する「多様な美」を示す広告は以下の通り。