なぜ、20代は寄付意識が高いのか? コロナ禍が変える日本の寄付文化【コロナシフト】

給付金10万円の使い道、もう決めましたか?
「コロナ給付金寄付プロジェクト」公式サイトより
「コロナ給付金寄付プロジェクト」公式サイトより
HuffPost Japan

新型コロナウイルス対策で始まった国民1人に一律10万円を支給する特別定額給付金。使い道の選択肢に、「寄付」はどうだろうか?

ヤフーなどが5月に立ち上げた「コロナ給付金寄付プロジェクト」には、7月3日午前11時時点で1億8000万円以上の寄付が集まっている。

100円と少額からの寄付が可能で、寄付先を自分で選ぶのではなく、①医療、②福祉・教育・子ども、③文化・芸術・スポーツ、④経営困難に追い込まれた中小企業ーーの4つから支援したい分野を選ぶのが特徴。「寄付」への心理的なハードルを下げる仕組みがとられている。

コロナ禍は、日本の寄付文化を変えるだろうか。

その10万円どう使う?「こんな状況は、そうそうない」

同プロジェクトを企画したのは、若者と政治を結ぶNPO法人ドットジェイピー理事長の佐藤大吾氏だ。発起人には、元ヤクルト監督の古田敦也氏ら200人以上が名を連ねる。

「コロナ給付金寄付プロジェクト」の発足会見
「コロナ給付金寄付プロジェクト」の発足会見
Kasane Nakamura/ Huffpost japan

 佐藤氏は2010年、イギリス発の寄付サイト「JustGiving」の日本版(15年にジャパンギビング、19年にLIFULLソーシャルファンディングに改称)を設立し、日本に寄付文化を創造しようと活動を続けてきた。

コロナ禍で国民全員に一律に給付金が支給される状況について、「1人10万円の原資があるという状況は、そうそうない。寄付文化を広げる1つのきっかけになる」と指摘する。

日本における寄付文化の転機は、2011年3月11日の東日本大震災。大手クラウドファンディングサービスの「READYFOR」(2011年3月)や「CAMPFIRE」(2011年6月)が始まったのも、同時期だった。

2008年から始まっていたふるさと納税の広がりとともに、オンラインで共感できる寄付先を選び、ポケットマネーを寄付する仕組みは加速度的に普及した。一方で、クラウドファンディングで資金集めに成功した事例が知られるようになり、気軽にプラットフォームを使って寄付を募る習慣も生まれた。

「100円でもいい、できる人ができる範囲で

日本における寄付文化の広がりについて、佐藤さんは「思い描いていた形に近づいている」と語る。

「自分は生活にそれほど困っていないので、給付金の受け取りを放棄しようという声もある。でも、放棄するくらいなら、受け取って寄付に回してほしい」と訴える一方、任意性を大事にしたいという。

「寄付をしない人はけしからん、という間違った同調圧力につながることは避けたい。100円でもいい。できる人ができる範囲で、というスタンスを大事にしたい」

佐藤大吾さん(本人提供)
佐藤大吾さん(本人提供)
HuffPost Japan

ショッキングな映像がないコロナ禍。寄付は広がるか

それでも、国際的に見れば日本に寄付文化が根付いているとは言い難い。

寄付白書2017によると、2016年の日本の個人寄付総額は7756億円(名目GDP比率0.14%)だった。アメリカ(30兆6646億円・同1.44%)やイギリス(1兆5035億円・0.54%)との差は一目瞭然。韓国(6736億円・同0.5%)と比べても低水準だった。

さらに、今回は、被害者と支援者を切り分けることができないウイルス禍ならではの事情もある。

ヤフーCEOの川邊健太郎さんは、プロジェクト開始時の記者会見で、「自然災害のたびにネット基金を立ち上げてきた経験上、身近に困っている人がいると寄付のきっかけになりやすい。自然災害はテレビの映像がショッキングで、被災者がはっきりしているため、応援しようという機運が盛り上がりやすい」と語った。

「寄付を受けたい人が爆発的に増えている」として、「全員が感染するかもという時に、他人に気を向けるゆとりがない状況がある」と指摘した。

「寄付したい」「寄付した」…どちらも最多は20代。

だが、変化の芽は着実に息づいている。

「コロナ給付金寄付プロジェクト」調査をもとに作成
「コロナ給付金寄付プロジェクト」調査をもとに作成
HuffPost Japan

プロジェクトが6月11〜18日に行ったオンライン調査(20代以上の男女1249人が回答)によると、10万円の給付金のうち「少しの金額でも寄付したい」と考えている人は全体の27.9%。最も寄付に前向きだったのは、20代(37%)だった。

寄付したい金額は、年代が上がるにつれて高くなる傾向が見られたが、「10万円以上」と高額の回答をした20代は5.6%で、全年代の中でもっとも割合が高かった。

「コロナ給付金寄付プロジェクト」調査より作成
「コロナ給付金寄付プロジェクト」調査より作成
HuffPost Japan

実際の寄付行動も20代が突出している。

コロナ禍で給付金以外のお金をすでに1回以上寄付した人の割合は、20代で18.7%に上った。他の年代と比べると、「複数回寄付」との回答が多いのが特徴的だ。

「これまで寄付はしておらず、今後も寄付する予定はない」という回答は47.8%で、全年代の中で唯一5割を切った。

一方、30代は、寄付に前向きな回答も実際に寄付経験がある割合も20代に次いで高かったかったが、寄付に後ろ向きな回答も多かった。

「寄付金を受け取りたい」という個人によるプロジェクトへの助成申請は30代からのものが多かったといい、結婚や出産などで生活を背負う人が増える世代のジレンマが浮き彫りになった可能性もある。

「コロナ給付金寄付プロジェクト」調査をもとに作成
「コロナ給付金寄付プロジェクト」調査をもとに作成
HuffPost Japan

なぜ20代の寄付意識は、高いのか。

佐藤さんは「20代はクラウドファンディングに対する抵抗感もなく、身近な友人などから寄付や応援を頼まれた経験を持つ人が増えてきているのではないか」と見る。

「普段は資金的にゆとりがないため、積極的に寄付をすることはできないものの、今回は10万円という原資ができたことで『やってみよう』と考える20代が多いのだと思います」

多感な時期に3・11を経験した20代にとって、寄付という行動や助け合いという考え方そのものが、特別なものではなくなっているのかもしれない。

佐藤さんは、20代にとっては今回が初めての寄付体験になる可能性も指摘する。

「『一度でも寄付したことがある』のと『一度もない』のとでは、今後の人生において寄付に対する向き合い方に大きな開きができることは間違いない。寄付文化の促進に取り組んできたぼくとしては、大変うれしい結果でした」

寄付のイメージ画像
寄付のイメージ画像
krisanapong detraphiphat via Getty Images

寄付先に悩まない。支援したい分野を選ぶ

「コロナ給付金寄付プロジェクト」では、Yahoo!ネット募金と、ふるさと納税総合サイト「ふるさとチョイス」を運営するトラストバンクの特設サイト、どちらか使い慣れているプラットフォームから寄付することができる。

著名でないがゆえに寄付金を集めにくいが、現場支援のために何とかしたいという団体。どこに寄付したらいいか分からないけれど、給付金の一部を寄付したいという個人。同プロジェクトが、両者の橋渡しをしているかたちだ。

クレジットカードを利用し、100円からの寄付が可能。ヤフーではTポイント(1ポイント=1円)でも寄付できる。(寄付控除の対象になるのは3000円以上)

それぞれの分野に寄せられた寄付金は、公募と審査を経て決定されたそれぞれの分野の団体や個人に助成金として届けられる。

5月末までに集まった約7200万円については、新型コロナの重症患者を受け入れている病院やフードバンク事業を手がける認定NPO法人など、51の団体や個人に対して助成されることが決まった。助成先第2弾の公募も始まっている。

佐藤さんは「今回助成が決まったのは、著名ではない団体も多い。寄付に協力していただいた方にとって、初めて名前を聞いた団体もあったと思う」と語り、「プロジェクトがなければサポートが集まらなかった所にもお金を届けることができた」と意義を語っている。

寄付と助成の流れ
寄付と助成の流れ
「コロナ給付金寄付実行委員会」

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