アメリカ・ミネソタ州で黒人男性のジョージ フロイドさんが警察官に暴行を加えられ死亡した事件を発端に、世界中で広がっているBlack Lives Matterデモ。6月14日午後、東京・渋谷区でも平和的なデモが行われ、主催団体によると約3500人の参加者らが行進しました。
なぜ日本でBlack Lives Matterを訴えるのか。デモに参加した18人にその理由を聞きました。
「私は黒人ルーツの“ハーフ”で、アメリカと日本で生活する中で、両方の国で差別を経験しました。世界各地で起きている黒人差別をなくし、肌の色などの外見ではなく、心で相手と知り合えるようにならなくてはなりません」
「黒人差別は世界中にあると思います。日本にはない問題だと友達に言われたことがありますが、私は“外国人に見える”ということで警察に止められたり、怪しまれたりしたことがあります」
「今回のきっかけとなったような事件は過去にも起きています。この繰り返しを止めないと次の世代にも引き継がれ、人類に大きな影響を及ぼすものになると思います。みんなと一緒に戦い、人種差別や差別自体をなくしていきたいと思っています」
「自分の子ども達にフェアな未来を残したいと思っています。子ども達が将来どこで生活をするかは分かりませんが、人種差別は世界のどこへ行っても存在します。人種差別を完全になくすことができるとは思いませんが、それを最小限に抑えようと訴えることはできると思います」
「私がBlack Transgender Lives Matterも訴える理由は、トランスジェンダーの黒人はアメリカのLGBTQコミュニティーの中で特に暴行の被害に遭っているからです。黒人コミュニティー内でも、ホモフォビアやトランスフォビアがあって、暴行や殺人の被害に遭うLGBTQの黒人も少なくありません」
「先日もトランスジェンダーの黒人女性が遺体で発見されたというニュースが2件ありました。内1人は、スーツケースに詰められた状態で、川底で発見されました。シスジェンダーの黒人が亡くなると多くの人が立ち上がりますが、トランスジェンダーの黒人が亡くなってもあまり声は上がらず、私たちの死は抹消されてしまいます。デモで共に歩んで抗議をしているというのにフェアでありません。私たちにも声がある。そして、光を当てられるべき。そのためにトランスジェンダー・プライド・フラッグを纏っています」
「ニュースを見た時に、自分がこの問題をあまり考えてこなかったことに気がつきました。キング牧師のスピーチを見直したりして、当時は“黒人のことは黒人でデモをする”という印象だったのが、今は白人もデモに参加しているし、アジア人も参加してしっかり意思を示していこうと思いました。差別というものが日本にもあるというのはみんな知っているものだと思いますし、今日参加することが、もっと考える第一歩になるのかなという気がしました」
「今はアメリカにいないのでできることが限られていますが、差別を容認する制度の改革を訴えるために参加しました。アフリカ系アメリカ人に対する警察の暴行は問題で、肌の色を理由に標的にされる国で生活したくありません」
「大きな変化を起こすには、結束は不可欠です。日本やアメリカにいる人も、声を出せる限りどこからでも発信ができると思います」
(たつやさん)「第一に、人権問題としてこの運動に賛同しています。さらにはこれがアメリカだけでなく、日本、そして世界に関わりのある問題とも思っています。人種差別は世界各地で起きていて、日本では黒人や、いわゆる“日本人”以外に対する差別があります。人ごとではなくて、自分の生活や社会の中で起きていることなので参加をして声をあげたいと思いました」
(ジョージーさん)「LGBTQの活動をしているのですが、今世界中で起きているLGBTQ権利獲得の運動も、かつてアメリカ・ニューヨークのストーンウォールの反乱でトランスジェンダーの黒人が先頭に立っていたということがありました。彼女らがいなければ、私たちの今の生活もきっと違う形をしていたと思います。LGBTQコミュニティーもちゃんと理解をして、あらゆる差別がなくなるような行動や発信をしていかなくてはならないと思ってます」
「なぜ日本も関心を持つべきか?それはアライアンスです」
「Black Lives Matter運動が取り組もうとしている問題はとても重要だと思います。世界各地で黒人が経験している構造的な差別は明らかに間違っています。それをなくすために、私たちは手を尽くさなければなりません」
「日本人ではありませんが、ここは私が住んでいる場所で、私のホームです。この国の良い動きに参加できることを光栄に思います」
「アメリカで正義のために戦っている人たちと、日本にいる私たちが共にあること。そして、日本で暮らすマイノリティの人たちも生きやすい社会を作りたいことを示したいと思っています」
「日本にも黒人がいます。黒人ルーツの日本人は、黒人であることを理由に、“日本人であること”を否定されてしまうことがあります。過去にミス・ユニバース日本代表に選ばれた女性に対して、黒人のルーツを持つという理由などで、ヘイトが起きたこともありました。そうしたことがまさに、日本でもBlack Lives Matterについて話す必要がある理由でもあります」
「アフリカ系アメリカ人として、この運動は自分自身だけでなく、私の家族、友達、そしてコミュニティーに深い関わりのあることです。構造的な差別というのはアメリカの警察に組み込まれているもので、組織的な改革が求められています。そうすれば、私も警察に撃たれることに怯えることなく生活ができるようになると思います」
「運動が世界規模に拡大したのは素晴らしいことで、アメリカにも変化を促す力になると思います。警察の人種バイアスはどこにでもある問題で、アメリカだけの問題ではありません」
「アメリカほど人種が多様ではない日本にとって一見関係のない問題に見えますが、そんなことはありません。テレビに映る黒人の姿は、それを見た人の“黒人像”を形成します。なので警察に逮捕されたり、暴力に遭ったりする黒人の姿ばかりテレビに映る状況を変えなければなりません。黒人が不正に対して声をあげ、アメリカ以外でもこういった動きに参加している姿も見せる必要があると思います」
「テレビは暴力的な風景に放送時間を割きます。平和的なデモをあまり映さないのは、視聴者が集まらないからです。それでも、今起きている現実を見ることは重要だと思います」
「デモを見た人に、この問題が全ての人に影響するものだと知ってほしいと思います。Until Black Lives Matter, All Lives Can’t Matter(黒人の命が守られるまで、全ての命は尊重されていない)。私たちはみんな同じ人間です。NHKの動画に描かれていたようなステレオタイプは、黒人に対する暴力や殺人に繋がる危険性があります」
「より多くの人に自身の持つ価値観や偏見と向き合い、話し合って欲しいと思います。日本では今回のようなセンシティブな話題を避けがちな印象がありますが、これをきっかけに会話が起き、自ら学ぼうという動きが増えることを願っています」
「音楽やダンス、髪の毛のスタイルなどブラックカルチャーの恩恵を受けている中で、日本にいる自分にも関係があるなと思ったので参加することにしました」
「グローバル化で黒人コミュニティーは日本でどんどん増えていくと思います。今アメリカで起きていることがもしかしたら将来日本やアジアでも起きるかもしれないと思った時に、この問題を自分事として感じるようになりました」
「黒人がアメリカから移住すると、差別の問題も置いていけると思われがちです。しかし海外への移住は、差別からの解放という訳ではありません。むしろ母国で負わされた差別の傷に、移住先で経験する新たな差別が上乗せされると感じます」
「私もアメリカ出身の黒人なので、今アメリカのデモで抗議している人たちの痛みが分かります。日本生活の中でも、差別を経験したことがあります。今日のデモ行進を通して、ここに集まった人たちと思いが一つであること、そして私たちが日本にもいることを示したいと思いました」
「この数年間で、自分が白人であることで与えられている特権を自覚するようになりました」
「私が何の疑いもなくできることを、黒人が同じようにできる機会があるとは限りません。アメリカが何百年に渡りしてきた差別には失望しています。それでも私は友人たちと共に立ちあがり、彼らにずっと前に与えられるべきだった人権を訴えたいのです。私の特権は、彼らを支えるために行使できるものだと思います」
(ユウジさん)「小さい頃に肌や髪のことや、“ハーフ”であることを理由にからかわれたりしました。なぜ日本でそのようなことが起きるのかと考えた時、自分と違うものに対応する方法が分からないからなのだと思いました。でもそれがずっと続くのも良くないので、こういったデモがあれば、今起きていることの背景を自分で調べる人が出てくるかもしれません。子どもにも、人によって見た目も考え方も全部違うからどれかを正しいとは言えない、ということを伝える教育も大切だと思います」
(ダンさん)「デモに参加することで、日本や母国のアメリカにいる人たちに共にあると示すことをできると思いました。何かできることがあれば、行動を起こしたい。なので団体へ寄付をしたり、こういったところで時間をささげています。日本とアメリカはそれぞれ違う文化や歴史がありますが、だからといってこの問題が重要でないというわけではありません」
(エリカさん)「今回の事件をきっかけに、歴史を調べたり、自分が持つ特権と向き合うようになりました。それらをより深く知れる情報はSNSでも共有されていて、少しずつ理解を深めています。自分にもできることはあって、このように支持を示すのは大事だということも知りました。日本でこうして多くの人が集まるのは素晴らしいと同時に、ここで終わる運動ではないと思います」