2019年7月の参院選広島選挙区で初当選した自民党の河井案里氏と、夫の河井克行前法相(衆院広島3区)が、広島県内の地方議員や運動員らに現金を配ったとされる買収疑惑。
検察当局が、克行氏を17日の国会閉会後に公選法違反(買収)容疑で立件する方向で最終調整に入ったと、中国新聞デジタルが6月4日報じた。同法違反容疑で、案里氏も立件する方針を固めたとみられる。報道を受け、政治家も反応した。
小沢一郎氏(国民)は「総理はこう言うだろう。『任命責任は私にあります。御批判は真摯に受け止めます』。それでおしまい。任命責任とはそんなに軽いものか」。有田芳生氏(立憲)は「資金のもとになった1億5000万円の出所も焦点」とそれぞれツイートしている。
2019年10月に、週刊誌に公選法違反の疑いが報じられてからおよそ8カ月、これまでの経緯を振り返る。
■車上運動員に法定を越す報酬を払った疑い
2019年10月、「週刊文春」(2019年11月7日号)で、7月の参院選で案里氏の陣営が車上運動員に、法定を越す報酬を払った公選法違反の疑いを報じられた。
克行氏は9月11日より、第4次安倍第2次改造内閣で法務大臣に就任していたが、この報道を受けて、10月31日に辞任。
この疑惑について克行氏は辞表提出後に、「私も妻も全くあずかり知らない」「今後調査して説明責任を果たしていく」などと記者団に対して述べた。
その後、克行氏と案里氏は、国会の本会議や委員会を欠席し続けた。
■自民党本部から計1億5000万円の入金
2020年1月22日、参院選にあたり公示前に自民党本部から、克行氏と案里氏のそれぞれの支部に計約1億5000万円が振り込まれていたと、「週刊文春」によって報じられた。
案里氏は1月23日に、入金があったことを認め、「違法性はない」と強調。また、支部を設立して政治活動を始めたのが4月半ば以降だったことから、選挙までの「わずか2カ月半の間で活動していくことで、短い期間に資金が集中したものだと考えている」と述べた。
毎日新聞などによると、案里氏と同じ広島選挙区に党公認で出馬して落選した溝手顕正氏の陣営への入金は約1500万円であり、明らかな差があったことが判明した。
■案里氏と克行氏の秘書が逮捕、起訴へ
2020年3月3日、広島地検は、案里氏の公設第2秘書立道浩被告と、克行氏の政策秘書高谷真介被告らを公選選挙法の疑いで逮捕、その後24日に起訴した。
車上運動員14人に、公選選挙法に基づく上限の日当1万5千円を上回る報酬を支払った疑いがあり、報酬の総額は204万円にのぼったとみられる。
■広島県内の議員ら複数人にも現金
2020年4月、克行氏が案里氏の立候補が決まった2019年3月以降、選挙区となる広島県内の議員や、原則無報酬とされる陣営関係者らに対して、複数人に数十万円を渡した疑いがあるとして、検察当局が捜査を進めていた。
中国新聞デジタルによると、買収額は2000万円を超える見通しで、検察当局は、案里氏も一部の議員らに現金を配ったとの見方を強めていた。
■政治家の反応
立憲民主党所属の参議院議員の有田芳生氏は自身のTwitterで「悪質な買収容疑ですから在宅起訴ではありません。資金のもとになった1億5000万円の出所も焦点です。自民都本部からだけでなく、官房機密費からも出ている可能性が高いと見られています」と自身の見解を述べた。
また、国民民主党所属の衆議院議員の小沢一郎氏は「総理はこう言うだろう。『任命責任は私にあります。御批判は真摯に受け止めます』。それでおしまい。任命責任とはそんなに軽いものか。こんな人物を法務大臣にしておいて、言葉だけ、反省したふりで、それで終わりか。いま一人ひとりが、この内閣について考えないといけない」と、安倍晋三首相を批判した。