性犯罪をめぐる刑法改正などを議論する法務省の検討会が始まった。初会合となった6月4日は、ウェブ会議システムを使って非公開で行われた。法務省によると、検討会は今後、性暴力の被害者らへの聞き取りを進めることを決めた。
検討会は、刑法や心理学の専門家、性被害の当事者団体の代表や支援者、弁護士など17人で構成する。同省によると、4日は今後議論すべき論点などについて意見交換したという。
■「表に出ない被害を知って」
性犯罪は、被害者が二次被害受ける可能性があるなど、声を上げにくい。このため、検討会では被害者団体などから「表に出ていない被害の実態を知った上で議論を進めるべき」との意見が出た。この他、刑事弁護の専門家からは「被害者の声に耳を傾けることも大事だが、無罪判決となった性犯罪事件もあり、そうした実態についても当事者の意見を聞いてほしい」といった指摘もあったという。
今後は、男性や性的少数者の被害者、教師から性暴力を受けた当事者、障害者や子どもの性被害に詳しい識者などへのヒアリングを検討しているという。検討会で刑法などの改正が必要との結論になった場合、法制審議会に諮問する。
■何が課題になっているのか?
刑法の性犯罪規定は2017年、110年ぶりに改正された。
・法定刑の下限を3年から5年に引き上げ
・「性交」の対象範囲を拡大
・被害者と加害者の性別を問わない
・被害者の告訴がなくても起訴できる「非親告罪」とする
・18歳未満の子どもに対し、親など生活を支える者が影響力を利用してわいせつ行為などをした場合、暴行・脅迫がなくても処罰する「監護者性交罪」「監護者わいせつ罪」を新設
といった点が改められた。だが、
・性交同意年齢(13歳以上)の引き上げ
・時効(強制性交等罪10年、強制わいせつ罪7年)の撤廃や一定期間の停止
・暴行・脅迫の要件の撤廃や緩和
・教師やスポーツ指導者などによる、地位を利用したわいせつ行為を処罰する規定
などの課題解消は見送られた。そのため、性被害に遭っても犯罪の成立要件を満たさず、罪に問えないケースが問題となっていた。一方、「性犯罪の被害の実情や改正後の状況を見ながら、必要があれば見直しを検討する」との記述が附則に盛り込まれていた。
■議論のポイントは?
こうした課題が残る中、検討会ではどういったことが議論されるのか?
17年の法改正後、法務省は被害の実態を調査するワーキンググループを結成。ここで洗い出された課題を踏まえ、検討会では以下のような問題を話し合う。
・強制性交等罪の「暴行・脅迫」要件の見直し
・準強制性交等罪の「心神喪失・抗拒不能」要件の明確化
・性犯罪の時効の見直し
・地位関係を利用した場合の処罰規定
次回の検討会は6月下旬を予定している。