【3分でわかる】黒人死亡事件、アメリカで今起こっていること。5つの出来事で解説

黒人男性のジョージ・フロイドさんが警察官に首を押さえつけられ亡くなった事件を発端に、アメリカで抗議活動が広がっている。

黒人男性のジョージ・フロイドさんが警察官に首を押さえつけられ亡くなった事件を発端に、アメリカで抗議活動が広がっている。

今何が起こっているのか?

この記事では、これまでに起こったことを5つの出来事で振り返る。日付はいずれも現地時間。

 1:ジョージ・フロイドさん死亡事件(5月25日)

フロイドさんは5月25日、アメリカ中西部、ミネソタ州のミネアポリスで警察官に首を押さえつけられ亡くなった。フロイドさんが「息ができない」と訴える様子を撮影した動画がSNSで拡散し、怒りが広がった。動画でフロイドさんを押さえつけていた元警察官(免職済み)のデレク・ショービン容疑者は第3級殺人などの疑いで訴追された。
BBCによるとミネソタ州法の第3級殺人罪は「殺害の意図はないまま、不道徳な考えから人命を無視し、著しく危険な行為で他人を死亡させた」場合に適用される。

ジョージ・フロイドさんの写真を掲げての抗議
ジョージ・フロイドさんの写真を掲げての抗議
Carlos Barria / Reuters

アメリカでは警察官によって黒人が不当に殺される事件が何度も発生している。2013年以降の抗議活動は「ブラック・ライブズ・マター(黒人の命だって大切だ、黒人の命を守れ)」と称される大規模な運動が行われている。

警察の暴力に抗議し黒人差別撤廃を訴える趣旨のものだ。

黒人の人権運動はそれまでも行われていた。しかし、2013年以降に起こっている運動の特徴は、TwitterなどのSNSで、不条理に黒人の命が奪われた現場の動画が拡散され、ハッシュタグとともにアメリカ全土、国外でもその抗議が広がっていることだ。

2014年には、黒人男性のエリック・ガーナーさんが白人警官に首を絞められて死亡している。ガーナーさんも、フロイドさんと同じように「息ができない」と訴えていた。

2:抗議活動がさらに広がり、暴徒化(5月26日~)

抗議デモはまず事件現場になったミネソタ州ミネアポリスで26日に始まった。

最初は平和的に行われていたが、2晩目となる27日夜~28日にかけては、いくかのエリアで暴徒化。自動車用品店や警察の建物に火を放ったり、ディスカウントストアでの略奪行為と貧困層に対する分配なども行われた。

警察は参加者に催涙ガスやゴム弾を使用して応戦し、負傷者も出ている。 ミネアポリスでは29日と30日の夜間外出禁止令が発令された。

警察署の建物に火を放ち抗議するデモ隊。ミネアポリス市では大規模な爆発の可能性もあるとして警察関係者や一般市民に対しても避難も呼びかけられた。(5月28日)
警察署の建物に火を放ち抗議するデモ隊。ミネアポリス市では大規模な爆発の可能性もあるとして警察関係者や一般市民に対しても避難も呼びかけられた。(5月28日)
ASSOCIATED PRESS

さらに、抗議活動は西部のカリフォルニア州ロサンゼルスや南部のテネシー州メンフィスにまで広がった。 

ロサンゼルスでは、27日夜、抗議活動の参加者たちが高速道路を塞ぎ、警察と衝突した。

メンフィスでは、27~28日、参加者たちが「Black Lives Matter(黒人の命だって大切だ)」「Stop Killing Black people(黒人を殺すのは止めてくれ)」「Silence is Violence(沈黙は暴力)」といったサインを掲げて、フロイドさんらの死に抗議した。

3:トランプ大統領と、ツイッター

続く抗議活動に関して、トランプ大統領とTwitter社との争いも行われている。
トランプ大統領は暴動が激しくなっていた5月28日深夜、デモ隊を非難し、ミネソタ州知事に対しては軍隊の出動も可能であり「略奪が始まれば銃撃する」とつづった。

これに対してTwitter社は、暴力の賛美を禁じたルールに違反しているとして、警告を表示し、ツイートを隠す(閲覧は可能)という対策を取った。 

警告が表示されるトランプ大統領のツイート
警告が表示されるトランプ大統領のツイート
Twitterより

Twitter社は5月26日にも、トランプ大統領の郵送投票に関するツイートに対して「ファクトチェックが必要」とのラベルをつけていた。トランプ大統領はこれに反発し、28日にソーシャルメディア企業の規制強化に向けた大統領令に署名している。SNS上での言論の自由に関する争いにも発展している。

4:CNNレポーターが逮捕される(5月29日)

29日午前5時すぎ、CNNのレポーター、オマル・ヒメネスさんら3人がミネアポリスでの抗議活動を取材中、警察官に逮捕された。レポーターが手錠をかけられ連行される一部始終はCNNによって撮影されていた。

A CNN reporter & his production team were arrested this morning in Minneapolis for doing their jobs, despite identifying themselves - a clear violation of their First Amendment rights. The authorities in Minnesota, incl. the Governor, must release the 3 CNN employees immediately.

— CNN Communications (@CNNPR) May 29, 2020

さらに、同じように取材していた同僚の白人レポーターは、警察官に接触されながらも逮捕されなかったことから、警察の黒人差別的な取締手法がさらに明るみに出ることになった。

逮捕されたヒメネスさんは、身元を明らかにし、現地の規制にしたがって取材を行っていることを警察官に説明したが、警察官はこれを聞き入れずに逮捕。その後午前6時半ごろに公安施設から解放された。

CNNはこれに厳重に抗議。ミネソタ州知事が謝罪する事態に追い込まれた。

5:抗議活動、著名人やホワイトハウスでも

5月29日、オバマ元大統領も声明を発表し「2020年のアメリカでこれは正常ではないはず」と事件を非難。

ワシントンD.C.では29日午後、デモ隊がホワイトハウス前に集まったため、ホワイトハウスが封鎖された。その後、夜に議会議事堂前に移動した群衆は「撃つな!」と声を挙げた

ホワイトハウス前に集まる人々(5月29日)
ホワイトハウス前に集まる人々(5月29日)
ERIC BARADAT via Getty Images

アトランタでは、CNN本部前で警察に対する抗議が行われ、CNNの建物の一部が破壊された。

その他、抗議活動はアメリカ全土に広がっている。

※情報を一部追加しました。

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