憲法改正の手続きを定めた国民投票法の改正案を巡り、自民・公明両党が今の国会で成立を目指す方針を確認したと、NHKなど複数のメディアが報じている。
これに対し、Twitterでは「#国民投票法改正案に抗議します」が急速に拡散。5月20日午前10時半までに30万ツイートを超え、トレンド1位となった。
改正案の内容は?議論になっているポイントをまとめた。
■国民投票法とは?
「国民投票法」とは、憲法の改正手続きを定めた法律で、2007年5月18日に公布された。14年6月20日には、同法の一部を改正する法律が公布・施行された。
日本国憲法第96条は、憲法改正の手続きについて、以下のように定めている。
日本国憲法第96条
1 この憲法の改正は、各議院の総議員の三分の二以上の賛成で、国会が、これを発議し、国民に提案してその承認を経なければならない。この承認には、特別の国民投票又は国会の定める選挙の際行われる投票において、その過半数の賛成を必要とする。
2 憲法改正について前項の承認を経たときは、天皇は、国民の名で、この憲法と一体を成すものとして、直ちにこれを公布する。
■国民投票法改正案の内容は?
国民投票法改正案は、2016年に改正された公職選挙法の内容を、憲法改正の手続きに関する国民投票にも適用するというもの。
具体的には、
・駅や商業施設などへの共通投票所の設置
・期日前投票の理由に「天災又は悪天候により投票所に到達することが困難であること」を追加
・投票所に同伴できる子供の範囲を「幼児」から「児童、生徒その他の18歳未満の者」に拡大
などの7項目。
■「改正案」の何が問題?
問題となっているのは、現行の国民投票法の、投票日前の「国民投票運動」に関する規定だ。
憲法改正案に対し、賛成又は反対の投票をするよう、又はしないよう勧誘することを「国民投票運動」という。政党などは、一定のルールのもとに「国民投票運動」を行うことができる。例えば、投票期日14日前からは、国民投票広報協議会が行う広報のための放送を除き、テレビやラジオの広告放送は制限される。
この規定だと、14日前より前の期間では規制がないままとなっている。与党が提案する国民投票法改正案では、こうしたテレビやラジオのCM規制のほか、インターネット広告の規制も検討されていない。
主要野党はこの点を問題視し、「政党の資金力によってCM量に違いが出る」と指摘。「お金があれば広告手段をフル活用し、高い視聴率が見込める枠で宣伝されてしまう。これでは国民投票の結果が左右されてしまう恐れがある。現行の国民投票法では、意見広告として堂々と事前運動が可能で、公正な国民投票とは言えない」などと主張。
野党は「改正案には、本当に改正すべき問題に触れられていない」ことを理由に、改正案に反対してきた。
NHKなどによると、日本民間放送連盟(民放連)は19年5月の衆院憲法審査会で、CM規制に関しては、「表現の自由」の観点から「テレビ広告の量的な自主規制はしない」との方針を示している。
■これまでの審議経過は?
国民投票法改正案は18年6月、自民、公明両党と日本維新の会、希望の党の4党が共同提出した。同年7月に憲法審で提案理由説明があったが、その後法案審議は一度も行われず、継続審議扱いとなっている。