政府の専門家会議や厚労省クラスター対策班のメンバーが国民への情報発信を目的に結成した「有志の会」が4月23日、記者会見を開き、新型コロナウイルスの感染拡大防止策について「ウイルスとの戦争」という表現を控えるよう呼びかけた。
また、専門家からの情報発信について、ジェンダーや障害のある人たちなどへの配慮の必要性も示された。
■ジェンダーや障害のある人などへの配慮は
武藤香織・東京大学医科学研究所教授と、仁木崇嗣・一般社団法人ユースデモクラシー推進機構代表理事の2人が出席した。感染拡大防止の観点から、ビデオ会議ツールを経由して実施された。
このなかで、政府の専門家会議のメンバーでもある武藤教授は、新型コロナウイルスをめぐる治療方法の研究について、患者のケアと治療方法の開発が並行して進んでいる状態にあると指摘。
治療方法の開発のなかで、本来は、自分ではなく将来の医療のために必要とされるインフォームド・コンセント(十分な説明を受けたうえでの同意)が、患者自身の治療への期待からなされる可能性があることなどを紹介した。
武藤教授は、新型コロナをめぐる感染拡大防止策が、一部で「ウイルスとの戦争」などと表現されていることについても言及。
「戦いというメタファーから戦争と使いがちですが、個人的にはこの表現に反感を持っている。戦争で犠牲になるのは大将ではなく弱い人たち。弱い人の犠牲のうえに成り立って勝つ、というのは承服しかねる表現です」とした。
さらに武藤教授は「有志の会でも課題だと思っていますが、ジェンダーの視点や、文字が読みにくい・音が聴きにくい人にどう情報を保障するか。ダイバーシティに配慮された情報発信になっているかは常にテコ入れが必要だと感じています。インクルーシブにやっていかないとこのウイルスとはうまく付き合っていけない」と強調した。
またこの点について、有志の会が発信している情報を、視覚障害や聴覚障害などを持つ人が適切に理解できているか、検証を進めていく意向を明らかにした。
武藤教授は「ろうの方々にとっては、皆がマスクを装着したことで唇が読めなくなって情報が取れなくっているのではと思います。また、日本語話者ではない人たちには今何もできていない。英訳をしたいという人もいるので、広がっていければいい」と話した。
さらに、ナイトクラブやキャバレーなどでクラスター感染が発生したことについて、「“夜の街”ということがフィーチャーされ過ぎてしまい、そういった場所で働いている人への配慮が十分だったかどうか」と疑問を呈したうえで「有志の会でも用意していたが、色々な人を傷つけずに注意喚起をする記事が書ききれなかった」と課題を口にした。