これが、新型コロナに対応する救急救命士の1日だ 【アメリカ・動画】

彼は自分の仕事に誇りを持っているが、この職に伴う恐怖を感じないわけではない。

アリゾナ州の救急救命士、ライアン・ヒラードさん。誰かが医療的な助けを必要としているとの連絡を受けると、彼はすぐに行動にでる。世界で、そしてアメリカ中でも新型コロナウイルスの感染が広がる今、一連の動作は今までとは少し違ってきている。

ヒラードさんは救急車のドライバーとその後ろの乗車席の間に仕切りがあることを確認しなくてはならない。頭からつま先まで防護服を着用し、グローブも装着。そして、ガスマスクをつける。

「患者は、私のマスクが少し面白かったようです。『あなた方は怖いんですか?』と聞かれたからです」とヒラードさんは4月初期にハフポストUS版に話した。「彼は、私と同僚にその質問を投げかけました。私たちは、不安を彼らに見せてはいけない...見せるべきではない、常に強くいなくてはいけません。だから私たちは、『いいえ。楽勝ですよ』と答えました。でも正直に言うと、少し緊張していました」

これが、アリゾナ州のシエラビスタ地域で働くヒラードさんや、アメリカの地方で働く他の救急救命士にとっての新たな常識、New Normalだ。全ての患者を新型コロナに感染している前提で接しなくてはならない。そして、すべてのスタッフは、それぞれの症状を、最悪のケースとして対応しなくてはならない。

ヒラードさんがアリゾナ州で使用している救急車
ヒラードさんがアリゾナ州で使用している救急車
RYAN HILLIARD

「アリゾナ救急」のチーフでありオペレーション・マネージャーであるクリストファー・アルマンさんは、救急医療班として23年の勤務経験があり、今まで多くを見てきたが、このような状況は初めてだという。

「この新型コロナウイルスに関する全ては、今まで経験してきた中で、最も恐ろしいことの1つです」と話す。

地方では、患者に必要な治療を受けさせることが特に困難だ。ヒラードさんは、キャニオン・ビスタ・メディカルセンターまでは6分で到着できるが、そこは小さな病院で集中治療室の病床数は6床しかない。そのため、一部の患者は1時間半かかる場所にある他の病院に行かなくてはならない可能性があるという。

無事に搬送を終えると、ヒラードさんと彼のチームは30分かけ、彼ら自身や救急車を除菌し、ウイルスが拡散しないよう確認しなくてはならない。彼は自分の仕事に誇りを持っているが、この職に伴う恐怖を感じないわけではない。

「自分がどれだけ不安かを、家族には見せないようにしています。私は今、36時間シフトをこなしていて、この前の朝以降家に帰っていません。家をこれだけ離れているのは、楽しいものではありません」

「家に居るときは、すべての瞬間がとても大切です。いつも、またしばらく会えなくなるかもしれないという気持ちです。だから、全ての瞬間を大事にしています」

アルマンさんは、彼のチームは米連邦緊急事態管理庁と協力していると話す。つまり、ヒラードさんのような救急救命士は、ニューヨーク市のような、さらに深刻な状況のエリアに派遣される可能性がある。アルマンさんは、このパンデミック下で第一線で働く彼らは、無私無欲で働いているという。

「彼らはみんな、無私無欲の精神を持っています。この業界では大したお金を得られません。人々のために働いているのです」とアルマンさんは話す。「ありきたりの言葉に聞こえるかもしれませんが、人類のためにやっているのです。今のような状況のとき、彼らをとても誇りに思います。彼らも、家には家族がいる。小さな子供がいる。私と同様の恐れがありますが、それでも働いているのです」

ハフポストUS版の記事を翻訳・編集しました。

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