美容院は休業要請の対象に入らず。ある従業員は訴える「予防の徹底は不可能。怖いです」【新型コロナ】

東京都の休業要請では、対象外となった理美容業界。ただ、客との緊密な接触は避けられず、従業員から悲痛な声が上がっている。
美容室のイメージ画像
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新型コロナウイルスの感染拡大に伴う休業要請をめぐって、理美容業界が揺れている。国の意向を受けて東京都が休業要請の対象外とした理美容院では、営業を続ける店もある。その一方で、福岡県内では美容院でクラスター(感染者集団)が発生した可能性も報告された。働く人からは「休業要請の対象にして」との訴えも出ている。

 ハフポストの取材に応じた千葉県内の美容師の30代女性。政府が「理美容業は休業要請の対象外」との認識を示した4月7日、勤務先から「店の営業を再開する」と告げられた。

施術中、美容師と客の距離は近くならざるを得ない
施術中、美容師と客の距離は近くならざるを得ない
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この日、店側は1カ月間の休業を決めたばかりだったが、方針を受けて再び店を開けるというのだ。

 女性はこれまで、店で不安と闘いながら働き続けてきた。そして、感染の予防は不可能だと感じているという。

 「お客さんはシャンプーする時、息苦しかったり水に濡れるのを嫌がったりしてマスクを外します。顔を近づけて会話をするので、つばも飛ぶ。カットの時も、お客さんとの距離は当然近くなります。店の換気をしたくても、髪の毛が濡れている人は寒がるので、常時ドアを開けておくことはできない。『人と人との間隔を2メートル空けて』と言われても、お客さんの椅子と椅子の間は人が一人入れる幅しかない。こんな状態で予防を徹底することは不可能です」

緊急事態宣言の発令を受けて、理美容業界では大手を中心に自主休業の発表が相次いだ。

 Ash」は5月6日までの臨時休業を発表。「ガーデン」「カキモトアームズ」も当面の休業を決定した。一方で、女性の務める中小規模の会社のように、営業を続ける店舗もあり、業界内でも判断が分かれている。

Hair cutting tools and accessories on blue background with space
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女性は「私の店の経営者たちは、『他店が休業しているうちに、行く先がなくなったお客さんを取り込みたい』という考え。店を閉めてほしいと言っても聞く耳を持たないんです」と嘆く。

 「私の父親は肺炎を患っています。他の従業員は、同居する母親ががんの患者だそうです。私は自分が、抵抗力の弱い家族にうつしてしまうことが一番怖い。それでも、店を開けるとなったらお客さんの指名もある。私たちは行かないわけにはいかないんです」

 東京都は10日、国の方針に合わせて「社会生活の維持に必要な施設」として理美容店の営業も認める方針を表明した。業界からは、休業対象に含まれることが「死活問題だ」として反発の声も上がっていた。

 一方、働く人はこの決定を必ずしも歓迎していないようだ。Twitterでは、美容師などを名乗る人々から「店内感染を自分たちが起こしたらと考えると恐怖しかない」「理美容業の(新型コロナ感染の)危険性を国に理解してもらいたい」「3密だし長時間接触しているし予防しようがない」などと、不安を訴える声が相次いでいる。

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