「育休延長なら保育園の内定辞退を」新型コロナで決断を迫られる親たち(東京都江東区)

「保育園は感染症対策には十分に気をつけて運営しているので、安心して預けていただける」と言われても、親たちの不安は消えない。
赤ちゃんのイメージ写真
赤ちゃんのイメージ写真
D-BASE via Getty Images

新型コロナウイルスの感染が国内でも急速に拡大している。本来なら4月は、進学や進級など新生活への希望に胸を膨らませる季節だが、働きながら子供を育てる親たちの不安は尽きない。

「復職」か「内定辞退」か

「『3密』の環境に、自分で手洗いもできない0歳児を長時間置くことに強い不安を覚えています」

東京都江東区に住む育休中の女性(37)は0歳の長女を認可保育所に預けて4月に職場復帰する予定だったが、今も復職時期を悩んでいる。

通常なら4月入所で認可保育園に内定した場合、親は4月中に子ども預けて復職する必要がある。4月中に復職できない場合は入園条件を満たしていないと見なされ、退園になる。

2020年度に限り、新型コロナウイルス感染防止のため、「育休を5月末まで延長しても入園資格を保持できる」とする対応をとる自治体は多いが、江東区は都内で唯一“例年通り”の運用を決めている。

女性は区役所に入園資格を保持したまま育休を延長したいと訴えたが、「4月復職ができることを前提に申し込みましたよね?」と受け入れてもらえなかったという。女性は言う。

「ルール通り4月復職ができないなら、辞退してはどうかと提案されました。でも、今は非常事態。申し込み時点とは状況が違います」

「江東区は保育園激戦区なので、比較的入りやすいと言われる0歳の4月で育休を切り上げて保育園に預けようと、懸命に保活をし、あえて0歳で入園させようとしました。利用者側にできることは、全てしてきたつもりです。なぜ、住んでいる場所によって、置かれる環境がこんなに違うのでしょうか」

女性の不安に拍車をかけているのが、乳幼児でも重症化するケースが複数報告されていることだ。

中国では「低年齢の小児に重症の割合が多い」とするレポートが発表されている。アメリカでは新型コロナウイルスに感染した生後6週の乳児が死亡。日本国内でも、福岡、山梨、愛媛の3県で0歳児の感染が報告されている。

江東区「安心して預けていただける」

内閣府は3月6日、新型コロナウイルス感染症対策を理由に一時的な育休を延長した場合でも、「機械的に利用調整を行うのではなく、柔軟な取扱いとすることが考えられる」とする対応例を各自治体に送付した。

だが、江東区は3月30日に公式サイトで「内定枠を確保した上での育児休業の延長について」と題し、待機家庭や既に在園している家庭との公平性の観点から「4月から入園予定の方については、従来通り、4月末までの復職をお願いする」との姿勢を表明。

・4月中に復職さえすれば、子どもは登園自粛しても退園させない
・入園を辞退し育休を延長した場合でも、再申込みをした時に不利な扱いはしない

という特例対応をとるが、基本的には従来の考えを貫く方針だ。

江東区保育課はハフポスト日本版の取材に対し、「保育園は感染症対策には十分に気をつけて運営しているので、安心して預けていただける」としたうえで、「区として状況を見て判断した」と強調する。

「新型コロナが心配で既に入園を辞退して育休延長した人もいます。認可外に預けながら(認可の枠が空くのを)待機している方もいます。枠を確保したまま育休延長を認めるのは不公平だという声もあり、復職していただくか、辞退して内定枠を待っている方に譲っていただくか、一つの決断をしていただきたい」

江東区によると、区の認可保育所への4月入園の申し込みは0〜2歳児で計3763人だったのに対し、落選したのは1044人。3月31日時点の内定辞退は279人で、新型コロナウイルスの感染拡大により育休を延長したことが原因となっているケースも多数あると見ている。

「対応、統一して」

内閣府の担当者は「自治体に連絡した対応例は強制や指示ではなく、最終的には自治体の判断に委ねる」と江東区の判断に理解を示すが、女性は「不安を抱える親に判断を委ねるのではなく、都や国で対応を統一してほしかった」と訴えている。

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