“男性に見られる”怖さ、気持ち悪さがわかりますか?
先日、私はとても怖い体験をした。
それは、早朝の京都市営バスの中での出来事で、私はうとうとしながら家に向かっている途中だった。
バスに乗っている間、半分くらい寝ていたけれど、途中から乗ってきた、金髪で黒いスーツの中年男性がいきなり私の目の前の席に座った。そして、突然「お姉ちゃんどこ行くん?」と声をかけてきた。
まだ、半分寝ボケていた私は一気に目が覚めて「びっくりした」と唐突に声をあげた。
そして、声をあげた後すぐに席を移動した。
なんで私の方が席を移動しなくちゃいけないんだと思いながら、せっかく移動したのに、その男性はその後も私のことをずっと見てきた。こちらが何回かその男の方を向くと必ず目があう。
彼は私から視線をそらすことをしなかった。「なんで私のことをこんなに見ているんだろう、怖い」と思いながら、私は後ろの席へ移動した。
それでも、その男はバスに乗っている間、座ったままずっと私のいる後ろの方を見てきたのだ。バスに座っている時、前を向いて座っているのが普通だと思う。バス停10個分くらいずっと目を逸らさずに見てきた。
「この男は、いったい私をどうしようというのだろう」という思いが私の中から消えることはなかった。
このようにずっと男性に見られている恐怖、わかってもらえるだろうか?
本当にずっと見てくるのである。とにかく怖かった。
電車やバスに乗っているとたまに出食わす、男性からのあの視線、本当に気持ちが悪い。
接触があるわけではないので、証拠もなく、「見ないでください」といっても、「見てねーよ」とか「自意識過剰じゃねーか」と相手に言われてしまうのではないかと思うと、何もできずさらに怖く感じる。
私が乗っていたバスには、出勤前の男性と思われる人たちが他にも5人くらい乗っていた。
私がその中年男性に声をかけられて席を移動したことは、彼らには見えていたと思う。それでも何もしてくれなかった。
しばらく時間が経っても、さっきの男性が舐め回すように私を見ることをやめなかった。
痺れを切らして
私は「あーもう!」と周りの人が気づくくらいの声をあげて、さらにバスの一番後ろに移動した。バスに乗っていた他の乗客は私の方をみんな見た。
それでも、同乗していた他の男性は誰も声をかけてくれなかった。
運転手さんは、車の運転に集中しているのか、車内の様子に気づいていないようだった。
「いつまでこの男は私を見てくるのだろう、家を特定されたら……」と怖かった
この私の恐怖体験を、「ナンパ」という気軽で、悪気もなく、大したことない世間でよくある経験として扱わないでいて欲しい。
多くの女性はこのような恐怖体験にあったときに、どのように対処していいかわからなくなると思う。
では、同乗していた、目撃していた男性は?
本当に無関心でどうでもいいと思っていた人もいたのかもしれない。でも、もしかしたら男性も、女性が怖い思いをしているのを知った時、どのように助けたら良いかわからないのかもしれない。
先日も逃げている痴漢を捕まえようとした男性が重傷を負った事件があったが、自分が何か口を出すことで、逆に嫌な目に遭ってしまうのではないかと思って、何も言えなかったのかもしれない。
それでも、たとえば私の前に座って、男性の目線から私を庇ってくれるとか「大丈夫ですか?」と私に声をかけてくれるだけでもよかったのに……。
バスに乗っている間、私はこの状況をどうしたらいいかとグルグルグルグル考えていた。
いつまで経ってもあの男は降りない。
「いつまでこの男は私を見てくるのだろう、どうしたら見るのをやめるのだろう」
「いつまでこの男はバスに乗っているのだろう。私が家の前でバスを降りたとき、ついてきたらどうしよう」
「家を特定されたらどうしよう」
すっとそんなことを考えていた。
「接触行為がないなら逮捕できひんねん」おまわりさんは言った
私は結局、家の最寄りのバス停よりだいぶ前のバス停で降りることにした。なぜなら、バス停のすぐ近くに交番があるとわかっていたから。
その時も「ついてきたらどうしよう」と頭の中でグルグル考えていた。
交番に行って誰もいなかったので、私はその場ですぐ、警察署に電話した。
そうして10分後くらいにパトロールから戻ってきたおまわりさんに私はバスの中での話をした。男はついてきていなかったけれど、待ってる10分の間も怖かった。「あの男が、私が降りた次の駅で降りて待ち伏せしてたらどうしよう」などと思うと本当に怖かった。
私の話を聞いたおまわりさんは、私に言った。
「接触行為がないなら逮捕できひんねん、同じ被害があったりした女性にも声をかけるくらいしかできひんねん」。
おまわりさんに
「バスは怖いやろ、タクシーで帰る?」
「男が待ち伏せしてるとかそういうことはないやろ? 近くにいるわけじゃないよな?」
と言われ
「ずっと交番の中で待ってたんだから、あの男がどうしてるかなんかわからないに決まってるじゃん。そんなのこっちが知りたいわ。ほんまに何かあったらどうしてくれんねん」。
と思った。
どうして? 嫌な思いをした方がお金も時間も使うのか
そして私は、次にやってきた市営バスに乗って家に帰った。
何事もなく、無事に帰宅できたので、私はいま、こうしてこの原稿を書いている。
そして思うのだ。
なんで嫌な思いした方が余分な時間もお金も使わなければいけないのだろう。
いろんなことがフラッシュバックした。
これまで遭ったナンパの数々。
どうして道端でもバスの中でもところ構わず声をかけてくるんだろう。
どうして彼らは後ろから声をかけてくるんだろう。
どうして突進してくるようにいきなり声をかけてくるんだろう。
どうして誰でもいいから適当に声をかけようという感覚で近づいてくるんだろう。
どうして、後ろから歩いてきて徐々にスピードを緩めて、近づいて声をかけてくるんだろう。
それが不自然なこととどうして気づかないんだろう。
大事な友達、恋人、家族、パートナー、そして、誰かの大切な人たちを救うためにできること。
そのバスの1件以来、いろいろなことがフラッシュバックして本当に本当に嫌な思いをした。
普段大学の友人や同じジムの人たちなど、身近な人たちが私に投げかける視線が、私のあのバスでのいや〜〜〜な体験に地続きで繋がっているように感じた。
全ては「女性は観賞物、自分の性的欲求を満たすためのものである」という考えがあるからだと思う。本人たちがそれに気付いていなくても。
もう女性を観賞物として扱うのはやめよう。
誰かが観賞物として扱われていたら、介入しよう。声をあげよう。助けよう。
これまで、私たちは、そのような状況に遭遇した時、どうしたらいいのか、誰も教えてもらうことはなかったと思う。
だから、私はどうしたらみんながそうしてくれるのか、わかりやすく、今から始めることができるTipsを用意することにした。
これらのTipsは、あなたの隣にいる大事な友達、恋人、家族、パートナー、そして、誰かの大切な人たちを救い、全ての女性を救うと思うので、実践して見て欲しい。そしてすべての女性は、誰かにとって大切な存在だということを自覚して欲しい。
まずは自分が女性を性的対象として見ないようにすること
①わざわざ街中で女性を評価するのをやめよう!まずはそこから!
スカートが短くても、男性が多い空間に女性が入っても、女性の胸の谷間が見えていたとしても、わざわざジロジロ見ることはやめよう。
②「学部の中で誰が一番可愛い」
「同期の中で誰が一番可愛い」
「〇〇の中で誰が一番可愛い」
と自分の身近なコミュニティで女性の外見を評価するのはやめよう。
相手を外見だけで判断していると信頼した関係が築けない。結局外見だけで人を判断することは「女性を観賞物として扱う」ことに繋がる。
あなたたちの身近にいる子たちは、あなたたちの目の肥しのために生きてるわけじゃない。あるコミュニティの中で誰が一番可愛いのかを決めて、何になるんだろう。
あるコミュニティの中で誰が一番可愛いかを決めるかよりも、自分にとってこの地球上でたった1人大切な人のことをあなたの友達に伝えよう。
もし、今そういう人がいなくても、自分にとって大切な人ができた時にどのように振る舞えば良いのか、どのように大切にしたら良いのかを考えよう。
③ナンパをする時は自然に、相手の時間を奪っていることを自覚して、安心安全な状態を確保した空間で行おう。
目の前の女性も同じ人間であることを自覚しよう。
声をかけることで恐怖を植え付けていないのか考えよう。自分自身が安全であることを証明しよう!後
ろから声をかけるのはやめよう!
密室空間でのナンパはやめよう。
女性が危ない目に遭っていたら、どうする?
①仲間内で、身近な女性を性的に評価する行為が行われていたら(誰が一番可愛いかランキング、誰の胸が大きいのかという話題など)、「そんなん言ってるのダサくない?」と言える勇気を持とう。
②誰かがジロジロ見られていたら、その視線を遮ることができる位置に移動しよう。何もしないよりも100倍マシ。
③誰かが声をかけられて危ない思いをしていそうだったら、「大丈夫ですか?」と声をかけてみよう。
たとえ大丈夫だったとしても、決して恥かしいことでははありません。
もし本当に大丈夫じゃなかった時のことを考えて。
あなたの一言で、女性が救われるのだから。
④自分自身が声をあげるのが一番大切なことだけれど、もしその勇気が出ないとしたら、周りの人に「あの人、被害に遭ってそうですが、大丈夫ですかね? 自分たちにできることはあるだろうか?」とほかの人と連帯して。どのようにしたら被害を生まないことができるのか考えよう。
この記事を読んで、明日から少しでも意識を変えて生きてくれる人がいたら私はとてもうれしいなと思います。
*本記事は鈴木七海さんFacebookより大幅改稿
(編集・榊原すずみ)