家事もセックスも、思ってることを言おう。 男女平等の国スウェーデン出身、LiLiCoの言葉

好評連載 第6回 LiLiCoの「もっとホンネで話そう。私たちのこと」
LiLiCoさん
Yuko Kawashima
LiLiCoさん

スウェーデンと日本と、ふたつのアイデンティティーを持つタレントのLiLiCoさん。30年前に来日して以来、独自の視点で日本を見つめ続けてきました。 

本連載では、そんなLiLiCoさんが、世間を騒がすイシューからプライベートの話題までホンネで語り尽くします。

今回のテーマは「ジェンダーギャップ(男女格差)」です。日本は、2019年のジェンダーギャップ指数が153カ国中121位。政治や経済の分野における女性リーダーが少なく、男女間の賃金格差や、家庭内での家事・育児負担の偏りなども課題となっています。

一方で、男女平等の国として知られるスウェーデンは、153カ国中4位。共働きが当たり前の国で生まれ育ったLiLiCoさんは、いまの日本をどう見ているのでしょうか。3月8日の国際女性デーのタイミングで話を聞きました。

父が、日本のTVディレクターを見て驚いたこと

Yuko Kawashima

数年前、とある番組が、うちのスウェーデンの別荘の取材をしてくれたときのこと。撮影中、現場のディレクターを見て、うちのお父さんが耳打ちしてきました。 

「女性がディレクターなの? 日本って変わったね」

日本の社会は、確かに少しずつ変わってきているのかもしれません。 

テレビの仕事をしていると、男女に能力差はないなと感じます。アイデアのある人・ない人、機転が利く人・利かない人は当然いますが、そこに性別は関係ない。

たとえば『王様のブランチ』(TBS系)は女性視聴者が多く、出演者のリポーターも全員女性。そのため、現場でさまざまな細かい指示をするアシスタントプロデューサーは、意識的に女性を選んでいるそうです。

でも、『美と若さの新常識』(NHK)は同様に女性視聴者が多いけれど、ほとんどのスタッフが私より年上の男性ですよ。

性別や年代によって好みやセンスは違うこともありますが、そもそも視聴者には男女の両方がいます。制作側は、自分たちの得意なことをやればいい。

男性でも女性視聴者に望まれるものが作れる人はいますし、美についての番組なら男性が入ることで、女性とは異なる視点が入って刺激になります。もちろん逆もしかり! 男性向けの番組で女性の新しい視点が刺激になることもあります。

 

母は「男女の格差」が嫌で日本を飛び出した

Yuko Kawashima

50年以上前、私の母は(職場における)男女格差が嫌で日本を飛び出したそうです。 

バックパッカーとしてやってきたスウェーデンでお父さんと恋に落ち、移住を決めた母。その裏には、女性である自分は就職しても男性と同じように仕事ができないのが嫌だという思いがあった。

「勉強ができて、あれだけいい学校を出たんだから、お茶くみなんてすべき仕事ではないと思ってい」と、よく母は話していました。 

母が移住した当時、スウェーデンはすでに女性社長も当たり前な社会でした。とはいえ、外国人が差別される現実もありました。母はクレバーで誰よりも仕事ができたけど、外国人だからという理由で給与は低いって言っていた。 

Yuko Kawashima

私は子どもながらに「男女平等の国なのに違うじゃん」と思っていました。

男女に限らず、人間は平等であるべき。

新しく何か理由をつけて、上下関係を作って誰かが偉そうにするのは違うからね。外国人だから、LGBTQだから、といった差別もなくなってほしい。

 

家事をリスト化して話し合ってみる 

Yuko Kawashima

日本では、家庭内での家事・育児の負担が女性に偏りがちで問題になっていると聞きます。私は自分で家事をしたいタイプだけど、夫婦で家事を分担したい人も世の中にたくさんいるよね。

もし妻側が家事をしない夫に対して不満を抱えているなら、自分のしている家事、夫のしている家事をリスト化して、話し合ってみたら?  

「ちょっと時間ちょうだい」って言って、向かい合って、こんなふうに話してみたらどうかな?

私たちって二人とも働いているじゃない? 家の中のことが見えないからわからないと思うんだけど、仕事をしながら家事をするのって難しいんだよね

もしそこで「俺は仕事してるんだから、無理」なんて返す夫だったら……ハズレの夫を引いたと思うしかないかもしれない...。仕事してるってだけで偉そうにしている男は嫌いよ。

子育ては、夫婦がイーブンでやるべきだと思ってる。イクメンという言葉はナンセンス。「オレ、イクメンです」と自ら言う男性、私は大キライです。だってカッコ悪いじゃない?

この2、3年で、お父さんがベビーカー押している光景を見るようになって、微笑ましいし、日本ってすごい勢いで変化していっているんだなと思っている。

スウェーデンでは共働きが普通だから、子どもも家事をする一員なんですよ。

3歳ぐらいになったら、片付けぐらいは自分でできるように教えるの。歩て、色がわかるなら、「緑の箱には人形をしまう、赤の引き出しには車のおもちゃをしまう」って教えれば、自分でできるようになるよ

 

家事もセックスも、思ってることを口にしよう

Yuko Kawashima

日本人の夫婦関係の不満を聞いていると、問題は男女の不平等じゃなくて、深い会話が少なすぎることじゃないかと思うことも多い。

この前出演した『あさイチ』(NHK)はセックスレスがテーマだったんですけど、「セックスについてと話せない」って声が多すぎて、私、言っちゃったもん。

「夫婦なのに? ほかの誰ともセックスできないのに?」って。

会話って言っても、会議方式じゃなくていいのよ。キスやセックスの最中に、「こことか好きよ」って自然に伝えればいい。もっと言えば、言葉もいらない。自分の好きなところに手を持っていけばいいんだから。

家事分担もそうだけど性だって、自分の思っていることを口に出して伝えてないんじゃないのかな。日々、自分の好きなこと、嫌いなことを表明していくべきだと思う。我慢してばかりで不満がたまったら「爆発」しか待ってないから。

 

義母のプレゼントを我慢していた私 

Yuko Kawashima

「嫌われたらどうしよう」「機嫌を損ねられたら面倒くさい」って、不満を言わないままの夫婦もいるって聞きました。

不思議! なんで? 嫌われたっていいじゃない。思ったことを言って、嫌われる勇気って必要なんじゃないかな。生まれ育った環境が違うんだから、すべてを好きになれるわけないよ。

私は、苦手なことがあったり、苦手な人がいたりしたら、好きなことと同じようにはっきりと周りに言うようにしているんです。 

そのほうがいいと教えてくれたのは、実は前の夫。

私はナッツアレルギーがあるんですが、お義母さんがナッツの入ったプレゼントをいつもくれるから困っていたのね。気を遣ってしまい、言い出せずにいたんです。 

でも当時の夫に「アレルギーのことを伝えないと、うちのお母さんは延々それを持ってくると思うよ」って言われて。それで「そうだよね、言わないと変だよね」って納得。

その人が何を好きで何を嫌かわかった方が、自分も相手もハッピーだと思う。

例えば、私だって夫が髪のセットに40分もかかるのがいやですよ(笑)。「私が10分なのにまだ?」「時間がもったいない」って思う。

だけど、彼にとっては自分と向き合える時間なのかもしれない。私だって一人でいるとき鼻くそほじくるの好きだし(ちょっと違うかっ!笑)、お互いさまですよ。だから最近、何とも思わなくなった。

 

お互いに忙しくても「話す時間」をつくる 

Yuko Kawashima

うちは夜にあまり一緒に過ごせない代わりに、朝ご飯の時間は、私たちの大事なコミュニケーションの時間。1時間ぐらい話す時間を取るようにしています。

テレビを見ながら雑談もするし、プライベートの予定のこと、お互いの仕事のことも話します。あれがなかったら、今、何もわかり合えなかったかもしれない。

理解してほしいからしゃべるし、理解したいからしゃべってもらうんです。

私は以前、仕事の話はいっさい家庭でしなかったんだけど、そうしたら仕事をしていないと思われてる雰囲気を感じるようになって(笑)。だから最近は、少しだけ仕事の話もするようにしています。

今朝も「今日はインタビュー3本と仕事の飲み会があるから、舌だけすごい疲れて帰ってくるかも」って話したら、「がんばってね」ってハグしてくれた! 

仕事のことがわかってたら、「ごめんね、今日片付いてないでしょう」って言っても、「いいよ、仕事忙しかったんでしょ」ってわかってくれてるし。

関係を変えるのって、会話次第なのよ。

 

 

LiLiCo流「2020ありがとうキャンペーン」

Yuko Kawashima

令和は、コミュニケーションの時代にしてみたらどうかな。そうしたら、この国は本当にいい国になるんですよ。

例えば、働き方改革がなかなか進まなくて、パートナーと家事や育児が分担できていない男性は、「2020ありがとうキャンペーン」をやったらどうですか? 

お皿洗いも洗濯も子どもの世話も大変ですすぐにできないのなら、せめて「ありがとうね」って一言はたくさん伝えてほしい。「なんだ、わかってるじゃん」って妻は思うかもしれません。できたら、そのうえでハグしてください。

日本のジェンダーギャップ指数が低いのは、まだまだ全体では変化に対応できない人が多いからじゃないかな。

幸せになるためには、自分が一歩踏み出すしかないんですよ。

そして、マニュアル化された古い価値観の家族像を捨てる。個々の変化の連鎖でしか、社会って変わらないからね。

(取材・文:有馬ゆえ 写真:川しまゆうこ   編集:笹川かおり)