「女性差別、憲法に反するとハッキリ」 東京医科大不正入試で、返金義務ありの判決

女性や浪人生から実質的に一律減点していた東京医科大の医学部不正入試問題で、返金義務があるとの判決。対象者は女性の元受験生だけで2831人に。
東京医科大共通義務確認訴訟で記者会見する弁護団
東京医科大共通義務確認訴訟で記者会見する弁護団
Yuriko Izutani / HuffPost Japan

東京医科大の医学部不正入試問題で、大学側に、元受験生に対して受験料などを賠償する義務があるかどうかが争われた裁判の判決が3月6日、東京地裁であった。

受験生の代わりとなった原告はNPO法人「消費者機構日本」(中山弘子会長)。

判決で前澤達朗裁判長は、同法人の訴えをほぼ認め、不公平な取り扱いをされた女性や浪人生に対して、大学には受験料などを返還する義務があるとした。一方で、旅費や宿泊費に関しては、今回の制度での返金が適当ではないとして認められなかった。

対象者は判明している女性の元受験生だけで2831人にのぼる。

判決後の記者会見で、NPO法人の佐々木幸孝代表理事は、「多くの受験生らの真摯な努力を大きく踏みにじるもので到底許されない。東京医科大は真摯に受け止めて」と話した。

裁判で東京医科大側は、得点調整の事実自体は認めたが、違法ではないなどと主張していた。これに対し判決では「事前に説明せず密かに得点調整を行ったことは、消費者との関係で違法との評価を免れない」とした。

さらに、その前提としても、「私大でも公の性質を有するのが相当。入学者の選抜でも憲法を尊重する義務を負うと解釈すべき。本件得点調整は、憲法14条などの趣旨に反するもので、違法である疑いが極めて強い」と法の下の平等に反すると指摘した。

弁護団は「なるべく早く被害回復されるように」

弁護団は、記者会見でこの判決を評価した。

「一部却下されたとは言え非常にいい判決で嬉しくなりました。消費者被害救済のための制度ではありますが、女性差別という重大な問題。この訴訟で、私立大でも許されない、憲法の趣旨に反するという文言も含めてハッキリ言っていただいた」(白井晶子弁護士)

「この裁判を通じて、東京医大は酷い主張をしていた。それを判決が一蹴して、明確に憲法14条違法ということも含め認めていただいた。裁判所も速く判断されたと思う、対象消費者である元受験生が、なるべく早く被害回復されるように望んでいる」(本間紀子弁護士)

東京医科大の第三者委員会による報告書によると、少なくとも2006年~18年度に、医学科の入試で女性や多年浪人生に対して実質的に減点するなどの得点調整が行われ、他の受験生に比べて不利な扱いとされていた。そしてその得点調整は受験生には知らされないまま、受験生が募集され、受験料が徴収されていた。

「消費者裁判手続特例法」で初の判決

この裁判は、多数の被害者がいる消費者事件で、被害者が個人で裁判をしなくても、集団で一定の被害回復の手続きを行えるようにする目的で作られた、「消費者裁判手続特例法」(2016年施行)に基づく初めてのもの。

そのため、受験生個人ではなく、特定適格消費者団体になっている同法人が原告となっている。

この勝訴が確定すれば、元受験生が団体を通じて返金を受けるための手続きが行われる。ただし、対象者は特例法が施行された後の2017、18年度の元受験生に限定されている。

この他、元受験生個人らが慰謝料などを求めた裁判は別に行われている。

弁護団長の鈴木敦士弁護士は「法的効力はないが、こうした判決が出たことを参考にしていただき、よい判断をしてもらえたらと思う」と話している。

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