2020年3月3日午後7時35分、ニューヨーク、タイムズスクエアにある41個のデジタルビルボードは、SK-Ⅱのブランドカラーである赤色に染められた。
「ニューヨークでエキサイティングな発表がある」と自身のインスタグラムで予告していたシモーン・バイルズがステージに上がると、観客からは歓声とどよめきが起こる。
エキサイティングな発表の全貌が、ついに明らかになる時が来たのだ。
実写×アニメーションによる圧倒的な迫力と映像美
一体、ニューヨークで何が起こるのか?
シモーン・バイルズのインスタグラムの予告を見て集まった人々は、真っ赤に染め上げられたビルボードを固唾を飲んで見守っていた。
そして、ついにシモーンが登場すると、タイムズスクエアには歓声が響きわたった。
シモーンのカウントダウンを合図にデジタルビルボードに映し出されたのは、アニメーションとなったシモーン自身の姿。
連動されたスクリーンを舞台に華麗に舞うシモーンのアバターと、ネット上での批判や悪意の化身である「“Kaiju”(怪獣)」との戦いを描くストーリーの予告編動画に、観客のボルテージは急上昇。
アニメーション、実写など多様な要素が組み合わされた動画の圧倒的な迫力と映像美に、ニューヨーカーたちからの歓声と拍手は鳴り止まなかった。
自分の美しさは自分で決める。他人が決めるべきではない
東京2020オリンピックの公式スキンケアブランド「SK-Ⅱ」は、2020年2月よりスタートしたキャンペーン「#NOCOMPETITION 美は #競争ではない」に関連し制作された動画『SK-Ⅱスタジオアニメーションシリーズ”VS”』の予告編を初公開した。
その予告編では、見た目、振る舞い、感じ方にまで抑圧を与える不必要な美の競争に対して、「アンチ」、「プレッシャー」、「ルックス」、「ルール」、「リミット」、「マシーン」という6つの異なる側面からこの問題を切り出し、「“Kaiju”(怪獣)」として具現化された心の中の敵と対峙するアスリートたちの姿が描かれている。
これを記念して、今回タイムズ・スクエアにて、オリンピックで4つの金メダルを持つ米体操選手のシモーン・バイルズとともに大々的なイベントを開催したのだ。
本動画の公開に当たり、シモーンはキャンペーン「美は #競争ではない」への思いをこう語った。
「この動画は文字通り、私の人生で最大の、美に対する批判との戦いそのものです。自分のストーリーを多くの人と共有できたことは私にとって大きな意味がありました。このような美の批判を受けたことがある若い女性や女の子たちが今日ここで起きたことを見て、美の基準の押し付けと戦っているのは自分だけではないということを知ってほしいと思います。私たちは美しさとは何かを自分自身で定義することができます。私たち自身の美しさを他人が決めるべきではないのです。」
また、グローバルSK-Ⅱの最高責任者(CEO)であるサンディープ・セスは、次のように語る。
「美しさにはいろいろあります。しかし、決してあってはならないことが一つあります。それこそが美の競争です。ビューティブランドとしての私たちの役割は、不要なプレッシャーや不必要な競争から女性たちを解放し、自信と前向きさを持てるように後押しすることです。私たちはアスリートたちのストーリーに深くインスピレーションを受け、どのようにして彼女たちが美の競争に打ち勝ったかを、かつてない方法で表現したいと考えていました。そこで、マンガなど日本文化の要素と、アニメーション、実写など多様な動画の要素を組み合わせて今回のシリーズを制作するに至りました。SK-II初のアニメーションシリーズ『VS』を皆様にお届けできる日を楽しみにしています。どうぞご期待ください。」
日本から綾瀬はるかもパネルディスカッションに登壇
翌日はパネルイベントが開催され、日本から女優の綾瀬はるかも参加。シモーン・バイルズやジャーナリストのケイティ・クーリックとともに登壇した。
イベントの冒頭では、私たちは美しさの競争をするために生まれてきたわけではないのに、結局その競争に参加していること、この競争が現代のソーシャルメディアや自分たち自身によって助長されていることなどが、北米地域のブランドディレクター、ケイシー・ マエオライリーから問題提起された。
そして、「美は #競争ではない」というキャンペーンをSK-Ⅱが行う理由は、この活動が議論形成、女性の自信構築、前向きさの広がりを促すための原動力となるためだと述べた。
綾瀬はるかは「個人的には競争は良いと思います。なぜなら私たちの想像を超える動力を与えてくれます。それが競争者、またそれを見る人々に素晴らしい経験をもたらします。でも、美の競争は良くありません。それは毒性があります。」とコメント。
さらに、ケイティに「綾瀬さんにとって美は何を意味しますか?」と問われると、綾瀬は「自分自身であるということです。これは美は競争ではないということ。私たちは自分で美は何かを決めます。私はこれがとても美しい方法だと信じています。」と締めくくった。
人と人が繋がりやすくなった現代において、個人の容姿、行動、発言などは、不特定多数の人からの批判や嘲笑の対象となりやすい。
さまざまな“望まない競争”を経験し、美しさからのプレッシャーに苦しんでいる多くの人たちとともに、「美は #競争ではない」の声をあげることで、私たちはより多くの可能性と、自分らしい美しさを手に入れることができるのかもしれない。
(取材&文:松田祐子)