「あらかじめ質問を頂いている」安倍首相、“制限時間”で打ち切った新型コロナ会見に言及。蓮舫氏の質疑に答弁

新型コロナウイルスの感染拡大を受け、首相が開いた2月29日に開いた記者会見について、立憲民主党の蓮舫議員は「そんなに早く帰りたかったんですか?」と厳しく追及した。
参院予算委員会で答弁する安倍晋三首相=2日、国会内
参院予算委員会で答弁する安倍晋三首相=2日、国会内
時事通信社

立憲民主党の蓮舫議員が、3月2日に開かれた参議院予算委員会で、安倍首相が2月29日に開いた記者会見が時間を理由に打ち切ったことを厳しく追及した

安倍首相は蓮舫議員の質疑に対する答弁で、総理会見について「(事前に)記者クラブと広報室側である程度の打合せをしていると聞いている」とした上で、「あらかじめ質問をいただいている」と発言した。

両者のやりとりから、あの会見の“問題点”を振り返る。

参院予算委員会で答弁する安倍晋三首相=2日、国会内
参院予算委員会で答弁する安倍晋三首相=2日、国会内
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「答弁原稿を読んでいるように見えた」との指摘に、安倍首相は?

蓮舫議員はまず、安倍首相に対し「2月29日の総理会見。あれで国民の不安は払拭されたとお考えですか?」と質問。

すると安倍首相は、「未知のウイルスとの戦いでございますから、国民の皆様も大変な不安を持っておられるのだろうと思います。(中略)国民のみなさまの不安を払拭するために全力を尽くしていきたいと思っております」と回答した。

安倍総理の答弁に対し、蓮舫議員は「何も響かない、何も答えていない会見だったと思いますと一蹴。

続く質問は記者会見での質疑応答の際の対応に及んだ。

蓮舫議員は「確認するんですが、最後に記者との質疑のやりとりをされた時に、答弁原稿を読んでいるように見えたんですが、これは事前に記者クラブの幹事社を通じて質問内容を確認しているんですか?」と質問。

すると安倍首相は「幹事社の方が質問されますので、その場合、詳細な答えができるように通告をいただいているところでございます」と答弁し、質問を事前に受け取っていたことを認めた。

参院予算委員会で質問する立憲民主党の蓮舫参院幹事長(中央)=2日、国会内
参院予算委員会で質問する立憲民主党の蓮舫参院幹事長(中央)=2日、国会内
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なぜ、フリーランスの記者からの質問に答えなかったのか?

蓮舫議員は続いて「(記者クラブに加盟していない)フリーランスの記者からの通告も受けていますか?」と質問。

これを受け安倍首相は、「それは...例えば総理の記者会見においては、これはおそらく取りまとめを広報室で行なっておりますので、詳細については今ここでお答えすることはできないことでございます」とした。

明言を避けた安倍総理に対し、蓮舫議員は「ジャーナリストの江川紹子さんが、『まだ質問があります』と挙手をしました。なぜ答えなかったんですか?」と具体的な例を挙げて再び追及した。

すると安倍首相は、「これはですね、あらかじめ記者クラブと広報室側である程度の打合せをしていると聞いているところでございますが、時間の関係で打ち切らせていただいたということでございます」と答弁。

制限時間を理由に、質問を受付けることができなかったとの認識を示した。

回答を受けた蓮舫議員は、「時間の関係で打ち切った。ではその後、重要な公務がありましたか」と質問。

すると安倍首相は「その後も打合せを行ったところでございますが、しかし基本的にいつもそのような形で総理会見というのは行われていたものと承知をしております」と説明した。

参院予算委員会で答弁する安倍晋三首相=2日、国会内
参院予算委員会で答弁する安倍晋三首相=2日、国会内
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さらに蓮舫議員が、「いや、36分間の会見が終わってすぐに帰宅しています。そんなに急いで帰りたかったんですか」と皮肉交じりに投げかけた。

これに対し安倍首相は「いつもこの総理会見においては、ある程度のこのやり取りについてあらかじめ質問をいただいているところでございますが、その中で、誰にお答えをしていただくというのは、司会を務める広報官の方で責任を持って対応しているところであります」として、自身の責任ではないと主張した。

すると、蓮舫議員はすぐさま次の質問に移った。

「いや、会見で総理は、様々なご意見・ご批判(について)総理大臣としてそうした声に真摯に耳を傾けるのは当然(と仰っていた)と。だったら、広報官を止めて(質問を)遮らないで、会見をもっと続けて江川さんやみんなの声に答える(など)、なんで自らそこでリーダーシップを発揮しなかったんですか」と投げかけた。

安倍総理はこれを受け、「総理会見においては、多くの社が出席をされておられますし、多くの方々が何問か質問をしたいという希望を持っておられるわけでございますが、その中において、広報官の方で整理をしているというわけでございます」とした上で、「また質問の通告をあらかじめ頂いているのは幹事社の方々からは頂いておりますが、それ以外の方々からは頂いていないということでございました」と答弁。

経緯は説明したものの、蓮舫議員が言及した質問の答えとしては十分とは言えないものだった。

首相は「その後も打ち合わせを行った」と会見時間に制約があったと強調していたが、会見終了20分後には官邸を出て東京都内の私邸に帰宅していた。

2月29日の記者会見は、ネット上などで、「なぜ時間いっぱいで打ち切り?」「そのあとの首相動静ではすぐ私邸に帰っている。ならば質問に最後まで答えるべきだったのでは」など批判の声が相次いでいた。

結果として、両者の質疑応答を振り返ると、あの日の総理会見はあらかじめ質問とそれに対する回答が“決まっている”状態で行われたものと指摘されても否定できないものであったと言える。

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