夫婦別姓が選べない今の戸籍法は、法の下の平等を定める憲法に違反するとして、IT会社「サイボウズ」青野慶久社長らが国に損害賠償を求めた控訴審の判決が2月26日、東京高裁であった。
小川秀樹裁判長は、控訴を棄却した。
原告側は上告する方針。
原告側は訴訟で、外国人との結婚・離婚などでは戸籍上の氏を選択できるのに、日本人同士の結婚では認められていないのは戸籍法に不備があると指摘していた。
これに対して二審判決は「本来比較対象とならない場面を捉え、その取り扱いの違いを差別だとするもので、採用することはできない」と原告側の控訴を棄却した。
また、夫婦別姓の選択肢がないため不利益を被る人たちがいる点については、結婚前の氏の通称使用が認められていることなどを理由に、憲法違反とまでは言えないと結論づけた。
一方、夫婦の氏をどう定めるかという議論は、一審判決と同様「国会で論ぜられ、判断されるべき事柄だ」とした。
夫婦別姓は「多様化に向けての第一歩」
判決後、原告の青野氏と代理人の作花知志弁護士が記者会見を開いた。
作花弁護士は、一連の訴訟をきっかけに別の夫婦別姓訴訟が起きたり、国会議員らからも夫婦別姓を求める声が上がっていると強調。
次のように期待を込めた。
「最高裁で法律が変わるような判断もしてもらいたいと思いつつ、最高裁のアピールを国会の議論にも取り込んでもらって、苦労している人がいるとう現実を直視してもらいたい」
青野氏はまた、最高裁の判事のひとりが旧姓で判決文を書いていることに触れ、「法律の最高機関が法的根拠のない名前で判決を書く。いわば『偽の名前』で書くということが起きている。今の状態が法律上欠陥があるのは明らかだ」と訴えた。
多様な個性を活かしていかないといけない時代に、選択的夫婦別姓の実現が「試金石になる」と強調した。
「選択肢が一つしかない社会から二つにしようという変化が、多様化に向けての第一歩。最後まで戦っていこうと思っています」
裁判に勝つことが目的ではなく、「最終ゴールは、立法されて苦しんでいる人が救われることだ」と締めくくった。
訴えた内容や争点は?
青野氏ら原告側は、日本人同士の離婚や日本人と外国人の結婚・離婚では、戸籍上の氏を選択できるのに、日本人同士の結婚では認められていないのは戸籍法上の不備だと指摘。
家族に関する法律は、個人の尊厳などに基づいて制定すべきと定めた憲法24条などに反するとして、戸籍法に新しいルールを設けるよう求めていた。
これに対して一審の東京地裁は「民法750条を改正しないまま戸籍法を改正するのは法体系を無視している」という国側の主張を全面的に認定。「日本人同士の結婚で旧姓を名乗れるようにすることで、法律上の氏が2つになるのは現在の法律で予定されていない」として、原告の訴えを退けた。
一方原告側は控訴理由書で、外国人と結婚した日本人は、戸籍法の改正だけで夫婦別姓が認められていると反論。
また、結婚で名前を変えた人が離婚後に婚姻時の氏を名乗り続ければ、民法上の氏と戸籍上の氏という2つの法律上の氏が存在するなどと主張していた。