そろそろ新型コロナウイルスの流行が国内でも始まりそうです。
当初は「新型肺炎」と呼ばれていましたが、多くの人にとっては「新型上気道炎」と呼ぶべき感染症であることが分かってきました。
ただし、重症化している人が少なからずいることも、中国における間違いのない事実です。だからこそ、日本も水際対策に力を入れ、どのような人が重症化しているのかを明らかにしながら、国際的な連携のもとに封じ込める可能性にかけてきました。
しかし、封じ込めは難しそうだということが見えてきました。もちろん、これは失敗ではありません。そういうウイルスだということです。
これまでに分かってきた情報からは、感染経路も重症度もインフルエンザに似た感染症のように思われます。ただし、現時点では、インフルエンザのような迅速診断キットがないため、医療現場では確定診断ができません。
また、治療薬も予防薬もないという違いがあります。エイズの治療薬が有効との情報がありますが、下痢や嘔気など副作用が強いため、軽症者が内服する意義はなさそうです。
さらに、当面は(おそらく数年は)ワクチンがありません。感染症の流行とは、一定人数が免疫を獲得することで終息していくものですが、この感染症にはワクチンがないため一定人数が感染することは避けられないでしょう。
今回は、疫学や臨床の情報などを詳しく解説することはいたしません。ただ、これから始まるであろう国内流行に備えるため、一般の方々に理解し、そして心がけてほしいことを、シンプルに3つお伝えします。
1)ほとんどの人には風邪にすぎない
重症者や死亡者の情報ばかりが先行していますが、実は、ただの風邪で治っている人が圧倒的に多いようです。
とくに、あなたが若くて健康ならば、感染しても、いつもの風邪のような経過で終わるでしょう。感染することを極端に恐れることなく、食事と睡眠をしっかりとりながら、いつものように過ごしてください。
2)高齢者と持病のある人を守ろう
ただし、高齢者や持病のある人のなかには、感染して肺炎をこじらせたり、持病を悪化させたりする人がいるようです。守るべき人が誰であるかを理解し、その人たちを守ることに協力してください。
症状のある人は周囲に感染させないよう、咳エチケットや手洗いを心がけ、外出を自粛しましょう。
とくに、高齢者が集まって暮らしている介護施設を守ることが重要です。症状のある人は訪問しないように注意してください。
3)安易な受診で救急医療をつぶさない
いつもの風邪と同じだと感じておられるなら、いつもの風邪のように行動してください。あわてて救急を受診したり、原因ウイルスの種類を知る必要もありません。水分をしっかりとりながら、ゆっくり自宅で休んでいてください。
そのことが、救急医療の機能を保ち、高齢者や持病のある人を守ることにもつながります。もちろん、息苦しさや高熱など、いつもの風邪とは違うと感じたときには、迷わずに病院を受診するようにしてください。
最後にもうひとつ…
この時期、感染症流行への不安に付け込む便乗商法が増えてきます。無駄なものを買って管理する労力も残念ですが、もっと心配なのは、効果のないものを信じて、必要な対策がおろそかになることです。
感染対策の基本は、こまめな手洗いと適切なマスク使用。そして、感染している人が咳エチケットを心がけ、外出を自粛することです。あまり特殊なことは考えず、こうした基本を大切にすることを心掛けていただければと思います。