2月9日に開催される第92回アカデミー賞授賞式。すでにノミネーションが発表されており、メイクアップ・アーティスト賞の候補には、日本出身のカズ・ヒロ氏(旧名・辻一弘)も名を連ねている。
今回、映画『スキャンダル』でメイクアップ・ヘアスタイリング部門にノミネートされたヒロ氏。2018年には『ウィンストン・チャーチル ヒトラーから世界を救った男』で同部門アカデミー賞を受賞している。
『スキャンダル』は、2016年に米放送局で実際に起きたセクハラ告発事件をテーマにした作品。シャーリーズ・セロンやニコール・キッドマンなどが実在する女性キャスターを演じている。
その中で、人気キャスターのメーガン・ケリーに扮した、セロンの驚愕の変身ぶりが注目されている。セロンはケリーを「演じた」というよりも、もはやケリーそのもので、ケリーの家族でさえ2度見するほど酷似していたという。担当したヒロ氏が、その変身プロセスをハフポストUS版に話してくれた。
「セロンさんは、自分の名残を鏡で見たくなかったんです」とヒロ氏は話す。「彼女自身、そして周りがストーリーに没頭する為に、ケリーさんそっくりに変身することは、彼女にとってとても大切でした。」
ヒロ氏は、ニコール・キッドマンや、他の俳優も担当しており、役に命を吹き込むのは、熱心かつ素早い作業が必要とされた。
撮影前には約6週間の準備期間、4度のリハーサルをして、撮影中にも常に微調整が行われた。
ヒロ氏はセロンの頭の3D鋳型をとり、セロンとケリーの特徴と違いを研究し、どんな補装具が必要かを考えていった。
「難しいのは、2人がどんな顔をしているかを皆が知っていることです。...もしメイクが半ばケリーさんだったら、人々は『セロンの顔に何かついてる』と思われてしまいます。だから、完全に変身する必要があったのです。また、メイクは最低限にしたかったんです。メイクを厚くすると、演技がしにくいからです。だから、最も重要な部分以外は減らしました」
ケリーの角ばった顎ラインや重めの瞼、そして少し上向きな鼻とセロンより大きい鼻孔はその「重要な部分」。鼻を大きくする為、ヒロ氏は3Dスキャナーとプリンターを使い、5回の調整を経て特注の「鼻栓」を作成した。
撮影が始まってからも、瞼や顔につけたシリコンなどの微調整は続いたという。セロンは目の色を濃くするカラコンも装着した。
このメイクアップの過程は毎回、約3時間に及んだという。
ヒロ氏は『スキャンダル』制作への参加について、「とても光栄なこと」と話し、チームの素晴らしさと、作品の時事性の高さについて言及した。
「私たちの作品が評価されて嬉しいです。...今世界で起こっていることを知る、重要な映画だと思っています。多くの素晴らしい才能が集まるこのプロジェクトに参加できて、とても幸運に感じています。今までのキャリアの中で、最も素晴らしい経験の一つでした」
『スキャンダル』は日本では2月21日から公開される。
ハフポストUS版の記事を翻訳・編集しました。