ニュージーランド航空はこのほど、プラスチック廃棄物を削減する一環として、食べられるコーヒーカップを一部の路線で試験導入すると発表した。バニラ味のクッキーでできたコーヒーカップは同国の企業が開発。ニュージーランド航空は今年、大幅な使い捨てプラスチック廃棄物の削減に着手し、生分解性のコーヒーカップへの切り替えを開始したほか、マイカップの持参をSNSでも呼びかけている。同社の担当者は「最終的には、カップを埋め立て地に持ち込まないで済むようにしたい」と話す。(サステナブル・ブランド ジャパン編集局=小松遥香)
ニュージーランド航空は、先月発表された世界の航空会社の格付け「エアライン・オブ・ザ・イヤー2020」で1位に選ばれた。
同社では年間800万杯以上のコーヒーを提供しているという。今年10月から、国内・国際線の両方で使用するコーヒーカップを生分解性でたい肥化できるものに切り替えた。
食べられるコーヒーカップが導入されるのは、ニュージーランドとオーストラリアの各地域を結ぶトランスタスマン路線の一部とニュージーランド・オークランドの国内線ラウンジ。現時点では、日本路線での導入は予定していない。
食べられるコーヒーカップは、ニュージーランドの家族経営企業「twiice」が「海藻や米でつくるのではなく、本当に美味しい、食べられるコーヒーカップをつくろう」と味にこだわって開発したものだ。小麦粉や砂糖、卵などを使ってつくられたバニラ味のクッキー製コーヒーカップは液体を注いでも漏れることなく、ニュージーランド航空ではデザート用の器としても使用しているという。
ニュージーランド航空は、twiiceと協力して食べられるカップの導入をさらに進め、他の企業とも連携して、長期的に導入できる持続可能な容器を模索する方針。
同社によると、ニュージーランドではたい肥化できるインフラが不足しているという。そのため、プラスチック戦略に関しては、自社で購入する使い捨てプラスチック製品の量をいかに減らすかに重点を置く。
今秋から、飲料水用のカップもリサイクル可能な素材に切り替えた。食事のソースに使われるプラスチック製個包装パックも廃止し、再利用できる小皿を使いソースを提供する。飛行時間が5時間以内の航空便のペットボトルを廃止。年間46万本のペットボトルの埋め立て廃棄を回避でき、30万kg以上の二酸化炭素の排出量の廃棄が見込めるという。
ニュージーランド航空は、今回の食べられるコーヒーカップ以外にもミュージックビデオ仕立ての機内安全動画「It’s Kiwi Safety ~ ラップとダンスで安全説明」を導入するなど、ユニークなコミュニケーション戦略を打つ企業。その理由を同社はこう説明する。
「ニュージーランド航空は革新的かつ先端の技術をお客様に提供し、より楽しい旅行体験を提供することを目指している。ニュージーランドは小さな国だからこそ、新しい取り組みも積極的に導入することができる。また、小さな国が世界の舞台で活躍し、大きな影響を与えることができることを示していきたい」
今年は国内外でこれまで以上に気候危機への関心が集まり、航空会社にとっても新たな時代の局面を迎えた年となった。グレタ・トゥーンベリさんの影響力などもあり、大量の二酸化炭素を排出する飛行機に乗ることを恥ずかしいこととする「Flight Shame(飛び恥)」という言葉が広まった。10月、ロイターやBBCなどは、スイス金融大手UBSが英米独仏の6000人以上を対象に行った調査で、21%が「環境への負荷を理由に、昨年よりも飛行機に乗る回数を減らした」と回答したと報じている。
さらにKLMオランダ航空は、100周年記念を前に「責任ある航空旅行」を呼びかける動画を作製。将来世代に美しい地球を残すために、飛行機に乗らずに会議をする方法や飛行機以外の交通手段でも移動できるのではないかと呼びかけた。
ニュージーランド航空にとっても気候変動への対応は最大の課題という。広報担当者は「二酸化炭素の排出量を抑えるために、ニュージーランド航空はフライトの運用効率を高め、より近代的で燃料効率のいい最新機体への投資を続けている。さらに気候危機に対応するため、サステナビリティに関する数値目標を定め、地上や機内でもさまざまな取り組みを行っている」と話した。
関連記事: