12月20日に公開され全世界で注目を集めている映画『スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明け』に、シリーズで初めて同性同士がキスをするシーンが描かれた。
同シーンについて、世界各国で対応が分かれている。
同性愛が法的に認められていないシンガポールやアラブ首長国連邦(UAE)では作品から削除された一方、映像コンテンツにおける同性愛などの描写に政府が厳しく検閲する中国ではそのまま公開された。BBCなどが12月24日に報じた。
シンガポール、アラブ首長国連邦では当該シーンをカット
エピソード9にあたる最新作では、1977年公開の『新たなる希望』から42年にわたって紡がれてきた物語が完結するが、同性同士がキスをするという同性愛のシーンが描かれるのは、シリーズの長い歴史の中で初めてだった。
各国で対応が分かれているシーンは、物語の終盤に女性の兵士同士が互いを讃えあいキスをするという場面。
BBCによると、シンガポールで公開される映画を規制する情報通信メディア開発庁(IMDA)は、ディズニーが当該シーンを削除したのは「作品の年齢制限を上げないためだ」と説明した。
同国では映画を6つの階層に分け、年齢で制限する形で分類していて、同性同士のキスシーンを削除すれば、保護者の指導があれば13歳未満の子どもでも鑑賞できる(PG13)作品に分類される。
The Hollywood Reporterによれば、アラブ首長国連邦(UAE)の映画館でも、当該シーンは作品から削除されていたという。
2019年12月現在、シンガポールでは同性同士の結婚は認められておらず、同性同士の性行為は違法となっている。
また同じく、アラブ首長国連邦でも同性愛は違法で、見つかった場合には極刑が課される可能性もある。
性的なコンテンツへの検閲が厳しい中国では、そのまま上映
対応が異なるのは、中国だ。
同国では同性愛それ自体は合法で、2018年には共産党の機関紙・人民日報に「同性愛は精神病ではない」という文章も記載された。
中国の国会に相当する全国人民代表大会(全人代)が民法の婚姻に関する規定について国民から意見を求めたところ、同性婚を認めるよう求める声が多く寄せられていたことが最近分かっている。
その一方、中国では映像コンテンツにおける同性愛などの描写については、政府が厳しく検閲してきたという事実があり、伝説的バンド・クイーンを題材とした映画『ボヘミアン・ラプソディ』の一部のシーンが削除されたのはその一例だ。
だが、South China Morning Postによれば、『スター・ウォーズ』の当該シーンは編集でカットされることなく劇場で上映されていたという。
スターウォーズには、「単純に分けることの出来ない、いろんな立場や肌の色が違う人がいる」
同作の監督を務めたJ.Jエイブラムス氏は、画期的とも言える同シーンをシリーズで初めて描いた。
エイブラムス氏は12月11日、ハフポストのインタビューに応じ、『スター・ウォーズ』の物語の中で映し出す「多様性」のあり方について、以下のように語っている。
私がスター・ウォーズを作品として素晴らしいと思える理由の1つは、やはり差別がないことだと思っています。
男性や女性という性別はもちろん、単純に分けることの出来ない、いろんな立場や肌の色が違う人がいる。
そこでは決して、血の繋がりも関係ない。これは銀河で生きる者たちだけではなく、人間にも言える。
ハリウッドが作る物語は、これまでどうしても人種的な偏りがあったりしたけれども、多様な人が存在する物語の方が今の時代を反映したものになるし、観客も惹きつけられるのではないかと思っています。
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