航空旅行が温室効果ガスや気候変動に与える影響は特にヨーロッパで注目されている。また、企業の社会的責任の観点からも関心が高まっている。航空輸送アクショングループ(ATAG)は、地球全体の温室効果ガスの排出量のおよそ2%は航空産業によるものだと伝えている。航空旅行は世界的に増加しており、航空旅行者が増えることで排出量も増える。国際民間航空機関(ICAO)は、2020年までに航空機による温室効果ガスの排出量は2005年時よりも70%増加すると予測している。 (Katherine Campbell、翻訳=梅原洋陽)
航空業界の気候変動への影響は確実に注目を集め始めている。フランス政府は最近、同国の空港を利用する全てのフライトに新たな環境税を導入することを発表した。新たな税の導入は航空会社の業績や利用者の懐に影響を与えることになるかもしれないが、航空旅行が気候変動にもたらす影響力の高さを物語っている。
この挑戦に真正面から向き合っているのが、KLMオランダ航空の「フライ・レスポンシブリー(責任ある航空旅行)キャンペーン」だ。航空会社にも関わらず、短い距離の旅行をする際は飛行機以外の乗り物を選ぶことを勧めている。同社のウェブサイトでは、自社の取り組みや、航空業界や旅行者が航空旅行をよりサステナブルにするにはどのようなことができるかを紹介している。
航空機での移動も企業の社会的責任に
飛行機の温室効果ガスの排出に関する問題は、実は航空業界だけの問題ではない。ほぼ全ての企業が何かしらの形で飛行機を利用しており、これによって二酸化炭素の排出や気候変動、自社の評価を下げるというリスクを伴っている。
米フォーブスのライターであるマイケル・ゴールドステイン氏は、環境活動家の影響で、飛行機のイメージはきらびやかな「ジェット族」から「飛行機利用は恥」という風にシフトしていると述べている。多くの企業にとって、企業活動全体の温室効果ガスの排出量と比べると飛行機での移動が占める割合はたいしたことないだろうが、今後の企業の社会的責任に関わる問題になるだろう。
テクノロジーは従業員の飛行機利用を減らす助けとなってくれるはずだ。ビデオ会議はミーティングを行ったり、情報を共有し、人間関係を構築するのに有効な代替案だ。移動方法を複数組み合わせるのも良いだろう。電車や車を短い距離では利用しながら、飛行機を効果的に組み合わせることもできる。ビジネスクラスではなくエコノミーの利用を企業が義務付ければ、一人当たりの炭素排出量を減らすことができる。荷物を減らすことにも意味がある。そして、カーボンオフセットを利用し、飛行機利用による二酸化炭素の排出を補うこともできる。
「測定しないものは管理できない」という昔からの格言があるが、飛行機の温室効果ガスの排出問題に関しては、測定するものを管理すると言えるかもしれない。業界や地域により、環境に与える影響の測定方法は異なる。国際民間航空機関のものも含め、航空旅行者一人当たりの温室効果ガスを計算するさまざまなツールがオンラインで見つけられる。単純な計算方法なら、どの企業でも簡単に使えるだろう。
温室効果ガスの排出量を測定し、責任を持つことで、自社の航空機利用が環境に与える影響を評価することができる。そして、排出量の減少にインセンティブを与えたり、環境に対して責任を持ち、透明性があるイメージを、情報開示をしながら築くことができる。
例えば、排出量のオフセットにかかる費用を旅費の予算に組み込むことは企業が航空機利用の費用対効果を考える良いきっかけになるだろう。
単純な指標を、排出量の計算ツールに組み込むことも有益だが、航空機の利用による排出量を削減させることのみではなく、さまざまな企業目標とのバランスをとった新たな指標も必要かもしれない。他の重要な目標を考慮せずに航空機の排出量にだけ注目していては最適な解決策は見つけられないだろう。
法整備や条例は環境問題の取り組みの中で大きな役割を果たしてきた。航空機による温室効果ガスの排出や航空旅行の環境への影響を考えると、今後の規制や税規制の対象となるかもしれない。
気候変動は重要な社会的課題として認識されており、さまざまなステークホルダーにとって航空旅行がもたらす環境へのインパクトは重要な問題だ。今後の規制の動向が不確定な現段階で、企業が行動を変えて、主導権を取って行くことは多くの利益をもたらすことになるかもしれない。
社会的、環境的な取り組みを行っている企業は今後、飛行機を使用した出張に関して、特に環境に与える影響の観点から説明を求められるようになるだろう。
これは挑戦でもありながら、チャンスにもなるだろう。注目度の高い課題に対してリーダーシップを持って取り組み、環境に関する社内の意識を高め、社外の評判も高めることになるかもしれない。幸いなことに、ステークホルダーからの質問に答え、責任ある航空旅行を追求するために企業が活用できる指標は多く存在している。
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