ドイツの作曲家・ベートーベンが作曲途中で亡くなった為に未完のままだった『交響曲第10番』をAIの技術で完成させようと、音楽学者とプログラマーによるチームが計画を進めている。
AFPやEuroNewsなどの海外メディアが、13日報じた。
彼の作品といえば、日本でも『第九』の愛称で親しまれ、世界的にも有名な交響曲第9番を知る人は多い。
ベートーベンは、その『第九』の作曲と同時期に交響曲第10番の作曲を始めていたが、志半ばであきらめた。彼が生前に残したのは、いくつかのメモや資料だけだった。
AFPによれば、今回のプロジェクトは、AI(人工知能)の学習ソフトに彼の全作品を学習させ、その分析をもとに第10番の未完の部分を作曲させるというもの。
ベートーベンの出身地であるボンという街の「ベートーベンハウス」のアーカイブ責任者のクリスティーン・シーゲルトさんは、「コンピューターはまだ多くのことを学ぶ必要はありますが、進歩は目覚ましいものでした」と印象を語った。
また、ベートーヴェン管弦楽団の指揮者として活動するダーク・カフタンさんは、「まったく新しい領域に入った」とコメントした。
一方、AIでの作曲については懐疑的な意見もある。
イギリス・マンチェスター大学の教授でベートーべンの音楽について幾つかの著書もあるクーパーさんは、「(AIによる作曲は)ベートーベンの意図を歪める危険性がある」と指摘し、「制作された短い抜粋を聞いたが、それは『ベートーヴェンが意図したものである』という説得力を持つような音楽の再構築には到底聞こえなかった」と批判した。
これに対し、EuroNewsによれば、同プロジェクトのリーダーを務めるマティアス・ローダーさんは、「AIによって制作される作品はより有望なものだ」と主張している。
「AIは、非常に短い時間で信じられないほどの分量のメモを学びます。最初の結果こそ、人々は『大してよくないじゃないか』というかもしれませんが、分析が進んでいくと、ある時点で、本当の意味であなたを驚かせます」とコメントした。
AIによって制作される交響曲第10番の完成版は、来年4月28日に開かれる生誕250年を祝う行事で演奏される予定だという。