ローマ教皇が11月26日午前にバチカンへの帰国の途についた。23日に来日し、被爆地の長崎・広島の訪問に始まり、東日本大震災の被災者との面会や東京ドームのミサ、天皇との会見など、過密スケジュールを終えた。
国賓来日や大きな政治的会談・会合などで、よく注目される料理。教皇は訪日中に何を食べたのか。
11月25日に駐日ローマ法王庁大使館で開かれた昼食会で、教皇に料理を振る舞った千葉県佐倉市、印西市のレストラン「オリベート」に話を聞いた。
提供されたのはコース6品。メニューは以下の通り。(順番は提供順。相手側の要望で寿司が最初になったという)
①「日本の伝統」
寿司の盛り合わせと野菜すし
②「絆のボロネーゼ、千葉の架け橋」
千葉の被災した緑農野菜、八千代黒牛ポルチーニ茸、黒トリュフの饗宴(きょうえん)
③「黒潮の恵み」
千葉県産金目鯛と長生ネギのヴァポーレ炙り雲丹のソース
④「房総の祝菜」
桜の木の香りを纏った千葉県産牛フィレの炭火ロースト、バルサミコ仕立ての緑農人参と千葉の落花生と共に
⑤「四季のうつろい」
晩秋の紅葉を感じるクラシックティラミス 成田ゆめ牧場のヨーグルトと塩麹で作った発酵ソース
⑥「ひととき」
自家製の焼き菓子
「イタリアで食べるより美味しい」
レストランの運営会社社長を務める萩原勇作さんによると、昼食会では18人のシェフやスタッフで、ローマ教皇や随行者、大使館職員ら総勢50人に料理を振る舞った。
昼食会後、萩原さんらは教皇と面会し、英語で「ありがとう」と感謝を伝えられたという。教皇はひとり一人と握手を交わし、感謝の印にロザリオをプレゼントした。
セキュリティ上の理由で配膳はできなかったが、代わりに運んだお付きの人から、教皇が「イタリアで食べるよりも美味しかった」と言っていたと伝えられたという。
オリベートは2015年、知人を介してローマ法王庁大使館のパーティーに自家製のパンを提供したことをきっかけに、ほぼ毎年開かれる晩餐会での料理提供を務めるようになった。
今回の昼食会のオファーがあったのは10月26日。オリベートがある千葉県が台風15号、19号の大雨で甚大な被害を受け、復興に向けた最中だった。
「日本の魅力と千葉を元気に」
萩原さんは昼食会の料理テーマをそう決め、教皇に日本の食の魅力を伝えるのと同時に、昼食会を通して被災している人に元気を届けることを目標に据えた。
そのための手段として、地元産で“被災した食材”を使うことにこだわった。
萩原さんは、ハフポスト日本版の取材にこう語る。
「生産者が大雨被害に遭い、品質に問題はないけれども変形してしまった規格外などの野菜を使っています。教皇側にも確認して了解を得ました。昼食のコースや、今回のオファー自体にも、復興や応援の意味合いも込められていると思います」
「私たちは名もない地元密着のお店ですが、それでも信じていただいて、料理提供をさせてもらえたのは、千葉や地元を元気にしたいと思っていたので、とてもいい経験になりました。活性化につながると嬉しいです」
お店でも提供
今回昼食会で出されたのとほぼ同じ内容のコース料理は、12月2日からオリベートで1日2組限定で提供する。また「絆のボロネーゼ、千葉の架け橋」「四季のうつろい」については、アラカルトでも提供するという。