「モノ消費からコト消費へ」「現金からキャッシュレスへ」…お金に対する価値観は時代とともに変わります。
いま目の前に1万円を差し出され、「好きなことに使ってください」と言われたら、どうしますか?
「ちょっといいお店で食事」「自分磨きのためにオンラインサロンに入る」「気になっていたクラファンに支援する」「大切な人に贈り物」「ドネーションデビュー」…。
無数にある「1万円の使い道」の中から1つを選び、実際にやってみる、いや、お金を使ってみる。満足できた? その逆に、物足りなかった? 楽しかった? つまらなかった?
そうしたリアルな体験と実感をもとに、いまの時代の「豊かなお金との付き合い方」を探ります。
ハフポストが考えるこの試みにチャレンジしてくれるのは、SNSを主な舞台に「自由に生きるために、社会の空気を変えていく」マルチタレント、はましゃかさんです。
こんにちは!はましゃかです。
実は数カ月前にハフポストさんから「1万円あったら何する?」
と夢のようなことを言われました。
落ち着いて考えてみても、「都民税の足しにしたい!」「冬用のふとんがほしい」など現実的なことしか思い浮かびません。
でも私多分、1万円渡されたら嬉しくって速攻で遊びに行っちゃうと思うんだよな。デートとか。デート好きだから。すごく軽率にデートするし。デート…ん?
デートで男性に奢ったらどうなるんだろ〜〜!?!?
デートで男性に奢ってみる
はい。今回のテーマはこちら!!!理由は単純な興味です。
という訳で奢られデートに付き合ってくれる人探すことになったんですが、
私のほかに友達と軽率にデートする人なんているのか?と物好きな人を探したところ…
いた!!!!!!!!!!
2兆個の趣味を持つ平成生まれ、ヒラギノ游ゴさん。「『女呼ぼうぜ』キャバクラを幻視する男」 などの連載で、男社会にバリバリ言及しているライターの先輩。
お誘いを入れたところ、うろたえつつOKしてくれたので早速デート開始。
待ち合わせは、全ッ然詳しくない吉祥寺駅にしてみました。
払う側が全然詳しくないところでノープランデートする、ってなんかスリリングで面白いことになりそうじゃないですか?っていうちょっとした好奇心により決定。
まぁ、この好奇心が後から筆者を泣かせるんですけど…!
私「こんにちは!よろしくおねがいします!全額しっかりおごられてくださいね!」
ヒラギノさん「怖いよ〜」
私「今日何しようかな〜。映画とかどうです?」
ヒ「そういえば気になってる映画あったな…」
私「『アラジン』でいいです?」
ヒ「えっ…あっうん」
というわけで『アラジン』に決定。
思い出してもここ強気すぎる、自分。
払うから!と『アラジン』を強制していなかったか?普段はもっと慎重に考えるのでは?
アラジン・ハラスメントに当たらなかったか?
アラジン代、大人1800円、私が誕生日月だったため割引で1100円。
映画館で購入する飲み物、ポップコーンもこちら持ち。
ヒ「ポップコーン安かった…安心した…」
映画、私は大満足。ヒラギノさん大丈夫だったかな、途中あくびしてた気がするけど。
は「はー面白かった!つぎなにします?」
ヒ「何しようか、井の頭公園行ってもいいし、お買い物してもいいし…」
は「タピオカ飲みたくないです?」
ヒ「えっうん、いいね〜」
というわけでタピオカに決定。
これってタピオカ・ハラスメントではないか?
ここも私、強気すぎたかも。
払うから!とタピオカを強制していなかったか?普段はもっと遠慮がちにタピオカに誘っていないか?タピオカ・ハラスメントに当たらなかったか?
不安は募る一方です。
メニューをチェック。
ミルクティー390円、烏龍茶ミルクティー430円。
は「私はぜったいに烏龍茶ミルクティー」
ヒ「ぼ…ぼくは390円のやつで…」
私「いや絶対烏龍茶気になってる顔でしょ!!!」
ヒ「自分の払わない40円の重みすごい」
私「心から楽しんでくれ〜!」
その後タピオカ片手にぶらぶらするべく、井の頭公園へ行ったんですけど、なんか、なんか、ここまでの一連の流れ…違和感がすごい…!
プランの決定権を担っている気がしてイキってしまい、
そんな自分に罪悪感を感じる流れ。
これ…私が勝手にお金払ってるだけで…
相手が本当に楽しんでないかもと思うと…めちゃくちゃ不安になってきた…!
っていうかここからディナー払うのか、足りるのか…?お店決めないと。
デート中にお金足りるかなって思う気持ち、
次のプランが決まらない時の焦り、つらすぎる、なんて情けないんだ自分って思っちゃう…。
こんな気持ちになるんなら、おごられるのってめっちゃ楽だったわ。
決めてもらうのもめっちゃ楽だったわ………。
思い切って聞いてみました。
は「あの、ディナーの場所決まってないんだけど…しっかりしてよって思います…?」
ヒ「うん、ちょっと」
帰りて〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!!!!
「払う側がデートの主導権を握る」地獄
今回の奢りデートでポイントになるかなと思ったのは「どのお店いくか決める」瞬間。
どっちが払うか決まってる状態でどんな値段のお店に行くか決めるのって難しくない?
面白くなるから当日まで決めずにいようと余裕ぶっこいていた私、
当日のこのタイミングになって変な汗しか出ない。
最初は「どこ行くかなんて口出せないよ〜」なテンションだったヒラギノさんにいまや
しっかりしてと思われてる状況。呼吸止まりそう。
必死の思いで一回だけ行ったことあるお店をピックアップ。
美味しかったし、あそこなら大丈夫だろう。もちろん予約の電話するのも私。
え…なんで私、払うことが決まってるってだけでこんなにリーダーシップとらなきゃって気持ちになってるの…?
もういや!!!責任感手放したい!!!!!
ここで、現在の残高をチェック。
6千円とちょっと。ん…?1人3千円…ギリギリなのでは…?
パニックになった私、ポンコツが加速し、
「このお店で合計3千円しか使えない!」という謎の認識をしてしまう展開に。
シンプルに算数ができないトラップ。
もうムリ絶対足りない。。。という気持ちになり、
結局、レストランではバーニャカウダ(1200円)(と飲み物)しか頼めなかった………。
恥ずかし〜〜〜〜〜〜〜!!!!!!!
「奢る側」の無敵の気持ちって何なんだ
えっ世の「奢る側」のみなさん…お金足りないかもしれない中どうしても奢らないといけない時って…こんな気持ちなんですか…?デートって…楽しいのか…???
野菜を待ちながらも、苦手なものが入っていないか不安すぎて苦しい。
ヒ「ごめん、にんじん苦手だわ」
は「胸が痛え…は、払ってもらうのって精神的にすっごく楽だったんだ…」
ヒ「うん。今日過ごしてみて、批評側に回れる、品定めする側にいられるんだってことはわかった。金払ってでもアタシといたいんでしょ?みたいな無敵の気持ちになる。
たとえば好みじゃない料理が来たり店員さんがミスしても、他人事でいられるわ」
私はにんじんが運ばれてくることにこんなに怯えているのに!!!!
野菜来ました。にんじんありました。帰りたい。
ヒ「お食べ〜」
は「ん…?なんかそれ、奢り慣れてる人の口癖っぽい」
ヒ「やば、気を遣わせないように、先に食べていいよって言い方をふざけて変えてるつもりだったんだけど…」
は「ちょっとわたしも言いたい。おたべ〜」
ヒ「やめて〜!払わないと思うと先に食べられない!」
は「私…いっぱい食べるコ好きなんだよね」
ヒ「やめてそれ言ってるわ。くそだせえじゃんおれ…」
は「おいしい?よかった、もっと食べな?」
ヒ「言ってる…言ってるんだよな…これでいい気になってるんだよな…」
逆をやっただけなのになんでいじめてるように見えるんだ…?
は「私も今回、行きつけの場所で払ったら、やってあげてる感に気持ち悪くなりそうだったのと、ノープランで路頭に迷ったら楽しかろうと思って慣れない駅にしたのに、結局来たことあるところに来てしまいました…。
ハズレだった時全責任が自分にくるなんて、そんなキャパない」
ヒ「ぼくもそれになるわ、1回目のデートは行き慣れたところに行く…しかも挑戦する時は、今からめっちゃダサいこと言うけど…年下で、お金もあんまりなくて、自分に結構好意を持ってくれる人を誘うわ…」
は「お互いのダサいところが露呈していく会」
ヒ「あ、飲み物頼むけどなんか飲む?」
は「いや……えっと…大丈夫です………(めっちゃ飲みたい)」
算数ができないのでもう上限額に達したと勘違いし、お会計に進むことに。
最後くらいはかっこつけたいと、ヒラギノ氏がお手洗いに行ってる間にこっそり支払い。
店を出て残額を確認すると、お金残ってるやんけ!!!!!
ハモニカ横丁(吉祥寺の有名な飲み屋街)で一軒はいける!
野菜しか食べてないからお腹すいたし、今日のデート振り返り会を開催。
お金を払って買っていたのは“安心感”
は「どうでしたか?一日通して。」
ヒ「すっごいダサいけど、今、敗北感と同じ感情かもしれない…トイレに行ってる間に払ってもらってたのとか、完璧にこの夜を支配された感じがする…」
は「私も今、バーニャカウダしか頼めなかったのにドヤ感がすごい。バーニャカウダしか頼めなかったのに。なんだこれ。なんだこの戦いは」
ヒ「あなたに領収書が渡された時にガラガラと何かが崩れ去った」
は「なにが?」
ヒ「わかりません。後ろから刺された!みたいな気分です」
感情がグチャグチャの2人。
ヒ「自分のダサさを明文化したらすごくスッキリしたというか…自分がめちゃ小さい人間ということがわかった。お金を払って安心を買っていたんだ…これがおれだ…」
は「私もめっちゃ疲れた…こんなことになるなら完璧に予定組んでエスコートして、ありがとうありがとう〜って言われて、ドヤドヤした方が楽だったかも。付き合わせてすいませんって気持ちになったよ」
ヒ「企画聞いた時から面白そう!と思ったんだけど、自分がそこにいるのを想像したらすごい身の毛がよだったんだよね。実際今日やってみて、ああいう(ジェンダーにまつわる)コラム書いてる自分が、まともにご飯食えないくらいダサくなるなんて信じられなかったな…人生レベルで教訓得られた」
は「私こそ、お互いこんなに戸惑うと思わなかった。ヒラギノさんは男女観がフラットなイメージだったから、わーい奢ってくれてありがと〜ってなるだろうかと思ってた…想像と違ってびっくり」
ヒ「わ〜、痩せた〜、今日ですごい痩せた〜」
は「あ〜寿命縮んだ〜」
収入差を乗り越えフラットな関係は築けるのか
想像以上に削られた我々。これ、例えば付き合ってるとかだったらお互いかなり萎えて関係壊れたりするリスクあるんじゃないか?ってくらい落ち込みました、2人とも。
私は男性に「引っ張ってくれる!奢ってくれる!」みたいな面を求めないし、ヒラギノさんも女性に「奥ゆかしさ」とか求めてない。むしろお互い毎日「性別を理由にやんなきゃいけないことがあるの、なくなるといいな〜」と思ってた、なのにこの混乱ぶりって!
今回の実験、何より壁になったのは収入差。ぶっちゃけ今回は相手の方が稼いでるから、もしリアルなデートならよほどの理由(誕生日とか?お礼とか?)がない限り成り立たない。私にとってはありがた〜い1万円も、誰かにとってはちょっとした額なんですよ。切ない。
ん〜、誰とでもフラットな関係でいたいなって思うけど、お互いの収入差がある状態でフラットな関係ってどう築けるんだろ?
家族になってどちらかが働くとか決めて暮らすのは、役割分担だな、いいなって思うけど、こんなんで怯えてたら主夫とか浸透するんだろうか???
今日やったこと、何か意味あったですかね?
もしかしてなんの意味もない一日を過ごし、映画を見て、タピオカを飲んで、傷つけあっただけだとしたら耐えられません。今回のお金は実はどこかに寄付されていて、突然都内に戸建てが手に入るとかのオプションがないと無理。
トラウマになりそうです。
男女とお金、余計わかんなくなりました。深淵を覗き込んでしまいました。
次回のテーマ、都民税を払うか女の子とデートしてみるかで悩んでいます。
これを読んでくれたかたで物好きな人、1回今日の実験、試してもらっていいです?
何か世界を救うような「気づき」があった人は、ハフポスト編集部まで…。
To be continued…