男性の半数が日常生活の中で男性であるがゆえの生きづらさを抱えているーー。こんな結果が、一般社団法人「Lean In Tokyo」の調査で明らかになった。
調査は10月3〜28日、あらゆる年代の男性309人を対象にオンラインで、生活の中で感じる生きづらさについて聞いたもの。
若い世代ほど男性ならではの「生きづらさ」を抱えている
調査によると、「男だから」という固定概念やプレッシャーにより生きづらさや不便さを「感じる」と答えた男性は51%にのぼった。
年齢別に見ると、20〜40代では生きづらさを「頻繁に感じる」「たまに感じる」と回答した人が5割を超えたのに対し、50代以上では4割。60代以上の35%は「まったく感じない」と回答した。
生きづらいと感じ始めた時期「小学生以前」が最多
生きづらさを感じるようになった時期は「小学生以前」が30%で最も多かった。キャリアや家庭内の性別役割に直面する「社会人」という回答は26%で、2番目に多かった。
Lean In Tokyoでは、特に40代以下が生きづらさを感じている理由について、2010年以降の「イクメン」や「女性活躍」などジェンダーギャップを埋める取り組みが活発化したことで、男性のジェンダーバイアス(男女平等)に関する認知が高まったためだと見ている。
また、男性ならではの生きづらさを幼いうちから感じ始めたという結果について、「学校や家庭など、教育環境でもジェンダーバイアスが作用していることがうかがえる」と指摘している。
「男は泣いてはダメ」
どんな点に生きづらさを感じるのか。記述式回答に寄せられた具体的なエピソードを見てみる。
「男は泣いてはダメと言われ続けてきた」
「なんだかんだ言って、矢面に立たされるのは男性」
「しっかりしていなきゃいけないという固定観念から、弱みをさらけだしたり、悩みを相談する姿があまり歓迎されないことがある」
「ベルトやネクタイの着用を求められることが肉体的に負担」
「生涯仕事に就き収入を得て、家族を支えていかなければならないというプレッシャーがある」
「男性ゆえに勤続し家庭を支えることが求められ、たとえ転勤などで不自由、不都合を被っても文句を言いにくい」
「おじさんは多少けなしてもよいという風潮は残り続けている」
年齢別にみる「男らしさ」の呪縛とは…
年齢別にみると、20代では性格面や振る舞いに関する「男らしさ」の呪縛に悩む人が多いのが特徴。
「デートで、男性がお金を多く負担したり女性をリードすべきという風潮」や「男性が弱音を吐いたり、悩みを打ち明けることは恥ずかしいという考え」を「生きづらい」と感じることが最も多かった。
家庭や職場でのキャリアや収入面での役割に悩むようになるのが、30代以降。特に、40代と50代では「男性は定年までフルタイムで正社員で働くべき」が「生きづらさ」のトップだった。
全世代でトップ3に入ったのが、「力仕事や危険な仕事は男の仕事という考え」。
Lean In Tokyoでは「あらゆる年代の人が、様々なコミュニティーで直面する場面だからではないか」と指摘している。
制度よりも意識改革が必要
では、「生きづらさ」を解消するにはどうしたらいいのだろう。
最も多かった回答は「多様な働き方を尊重する文化の醸成」で、「個性を尊重する文化の醸成」「日本の教育の改善」が続いた。
働き方改革や女性活躍などへの取り組みが進む中、制度や政策は整ってきたが、意識が制度に追いついていない現実が浮き彫りになったと言えるのかもしれない。
調査では、「パートナーとの家事・育児の分担について、世間や職場でのしがらみを気にせず自分らしい生き方が選択できるとしたら、どのような役割分担が理想ですか?」という設問も用意された。
55%が「共働きで、育休の取得なども含め、家事・育児を男女が均等に分担する」と回答している。女性活躍の風潮について「とても良い」「良い」と回答した人も49%にのぼり、「良くない」「とても良くない」を大きく上回った。
調査を行ったLean In Tokyoは、「『男だから』『女だから』という考え方を撤廃し、個々人の多様性が認められる社会を目指すことが重要」としたうえで、「男性に向けられるジェンダーバイアスに着目し、課題の改善に向けた議論をすることは、男性のみならず女性やその他のジェンダーの人々にとっても、より良い社会の実現つながる」と指摘している。