ラグビーワールドカップ2019が日本で開催されています。日本は、アイルランド、サモアに勝利し、ベスト8入り目前となりました。日本チームの熱き誇りは国民に感動を呼び起こし、またホスト国としても盛り上がりをみせています。多くの人々と同様、私も自国チームに声援を送り、ワールドカップの日本開催という興奮に包まれています。大会は9月20日に開幕、11月2日まで開催されます。
私はこのほど、日本ラグビーフットボール協会副会長の清宮克幸氏にお話しをうかがう機会を得ました。清宮氏は元日本代表選手であり、トップリーグで複数のチームを優勝に導いた監督で、現在日本にラグビーのプロリーグを創設するための改革を先導しています。
ラグビーワールドカップ2019大会の日本開催が示しているのは、ラグビーという比較的人気の低いスポーツが日本でプロリーグ設立の可能性を持つこと、若者の間で人気を取り戻す可能性があることです。またラグビーというスポーツは、ピッチの興奮のみならず、ビジネスの成功のための重要な教訓を与えてくれます。
リーダーが、ラグビーから学ぶことのできる教訓として3点があげられます。
1. 変化を受け入れる
ラグビーというスポーツには、流動的な敏捷性と判断力が常に求められます。ほかのスポーツでは監督がそれぞれの試合運びを決定するのに対し、ラグビーの場合、監督の役割はチームがフィールドに適応しそこで自ら判断できるよう導くことにあります。
そうしたリーダーシップスタイルに求められるのは、変化の必要性を受け入れること。こうした姿勢は今、ますます重要になっています。第四次産業革命の急激な変化やグローバリゼーション、地政学的な不安定さを世界が目の当たりにする中で、S&P 500構成企業の銘柄採用期間は急速に縮小しています 。つまり、組織としての意義と競争力を維持するために、リーダーは常に適応することを受け入れなければならないということです。
2. 明確なコミュニケーションをとる
常に明確なコミュニケーションをとらなければ、ラグビーチームは成功できないでしょう。仲間の相互支援についてチームが理解し、信頼しあう必要があります。チームメートには、次のステップをはっきり表現すること、対話を継続することが求められます。
コミュニケーションのスキルは、有能なリーダーとしても重要です。リーダーは、自分たちの使命とこれを達成する道筋について明確に表現できる能力を持ち、チームとオープンかつ率直な議論を継続できなければなりません。
3. 多様性から学ぶ
ラグビーチームでは多様な人材をひとつにまとめることが重要です。多様性を受け入れることで、メンバーひとり一人が独自のスキルセットを持つチームづくりが促されます。こうしたスキルセットはチーム全体を強くします。
ビジネスで言い換えれば、これは自分のネットワークを広げ、外部からの声を歓迎し、さまざまな視点から学ぶ意欲があるということ。異なるバックグラウンドや専門知識を持つ人たちとのやり取りからは、不思議な力が生まれることがあります。
ワールドカップが終了しても、ラグビーというスポーツに新たに芽生えた情熱を日本の人たちが失わないこと、そして、ラグビーから得た教訓を仕事や生活に活かすために全員が協力し合うこと。これはラグビー大ファンである私の願いです。
この記事は2019年10月10日世界経済フォーラム「ラグビーワールドカップが与えるリーダーシップについての教訓」より転載しました。