ホロコースト(ナチスによるユダヤ人の大量殺りく)を否定することは、“表現の自由”に当たるのだろうか。
欧州人権裁判所(ECHR)は10月3日、過去に受けた有罪判決を不服として、ホロコーストを否定する権利を主張していたドイツ人の政治家の申し立てを「正当な根拠がない」として退けた。ブルームバーグ通信やドイツ現地メディアなどが報じた。
そもそも、ホロコーストとは?
ホロコーストについての解説は複数存在するが、一般的にはナチス・ドイツ政権によるユダヤ人の大虐殺(「大量殺りく」とも表現される)のことをさす。
ナチス・ドイツによるユダヤ人大虐殺。
ヒトラーが1933年に政権を握ると、ユダヤ人迫害を開始。第2次大戦開始後に大量虐殺が始まった。
占領下のポーランドのアウシュビッツやソビブルなどの収容所にユダヤ人を移送し、ガス室などで殺害した。45年までに約600万人が殺されたとされる。
移送の責任者アイヒマンは戦後、南米に逃亡。60年にとらえられ、エルサレムで死刑判決を受け、62年に執行された。
《2012年10月11日 朝日新聞 朝刊 2外報より》
大虐殺。特に、ナチスによるユダヤ人の大量殺戮(さつりく)をいう。
《 大辞林 第三版より》
ギリシア語起源の言葉で,ユダヤ教で神に供える犠牲に由来する。
転じて全滅,大虐殺の意となり,とくにナチスによるユダヤ人の集団的虐殺をさす。ヘブライ語では〈ショアーShoah〉という表現も使われる。
強制収容所への収容と強制労働,ガス殺などによって,少なくとも500万〜600万人のユダヤ人が犠牲になった。
《百科事典マイペディアより》
ホロコーストの否定は“表現の自由”の範ちゅうなのか?
ホロコーストを否定することは“表現の自由”だと主張しているのは、ドイツの極右政党・国家民主党のウド・パステルス氏。
ブルームバーグ通信によると、パステルス氏は2010年、ホロコースト国際デーの翌日に行ったスピーチで、「いわゆるホロコーストは政治的・商業的な目的のために利用されている」と言及していた。
パルテルス氏は2012年にドイツの地方裁判所によって最初に有罪判決を受けたが、ドイツのメディア『THE LOCAL DE』によれば、パステルスはその後、2014年に欧州人権裁判所(ECHR)に自身に対する有罪判決を不服として異議を申し立てていた。
彼は2012年の裁判の判決について、自身の「表現の自由」が侵害された上、上訴審を担当した判事が下級審で有罪判決を下した判事の夫であり、夫婦関係があったため、公平な裁判を受ける権利も侵害されたと主張。
しかし、欧州人権裁判所は10月3日、全会一致でパステルス氏の主張を否定。「明らかに正当な理由がない」として申し立てを却下した。