「私はあなたを許します」
アメリカ・テキサス州で起きた殺人事件の裁判で、遺族が被告に向けてそんな言葉を投げかけた。被害者の弟が、許可を得た上で被告とハグをする様子が10月2日に報じられ、話題になっている。
BBCなどによると、この事件は2018年9月6日に発生。当時警察官だったアンバー・ガイガー被告は、仕事から帰宅する際に、自宅と勘違いして一つ上の階に部屋に入った。部屋にいたボーサム・ジーンさんを「侵入者」と勘違いし、銃を撃って殺害したという。
CNNによると、検察側は禁錮28年以上を求刑し、弁護側はガイガー被告の人生や警察官としてこれまでの職務を考慮するよう、陪審員に求めていた。
10月2日の判決の日。ガイガー被告は、禁錮10年(求刑28年以上)を言い渡された。
言い渡しの後、殺害されたボーサムさんの弟ブラントさんに発言の機会が与えられた。
その中でブラントさんは、ガイガー被告に「もしあなたが心から反省しているとしたら、僕自身の気持ちを言えば、あなたを許します」と言葉をかけた。
「神に尋ねたのなら、彼もあなたを許すでしょう」と付け加えた。
ブラントさんはさらに、次のように続けた。
「あなたには刑務所に行って欲しいとすら思わない。あなたにとってベストな計らいを望みます。なぜなら、それが、ボサンがあなた対して望むはずだからです」
ブラントさんは思いの丈を語った後、涙を拭いながら「許されるか分からないけど、彼女にハグをさせてもらえないでしょうか?」と求めた。許可されると、ガイガー被告の元に歩み寄り、2人はハグを交わした。
約50秒ほどの間、ハグをしながら言葉を交わし合っている様子で、被告は涙をぬぐいながら席に戻った。その途中、嗚咽が法廷に響き渡った。
ロイター通信によると、この事件をめぐっては、検察側がガイガー被告に対して軽い求刑を出そうとしたことなどから、抗議デモが起きた。また法廷のムードとは異なり、裁判所の外では、言い渡された刑が軽すぎると抗議する人も姿もあったという。
ブラントさんの行動や判決に対して、さまざまな反応が寄せられている。
「とても難しいことだけど、こうあるべきだと思う。許すことができれば、自由になることができる」「ブラントさんは本当に大きな人。許すという行動から、私はたくさんのことを学んだ」といった好意的な声が上がった。
一方で「10年は軽すぎる」 「もっと重い刑がふさわしい。被害者は自宅でくつろいでいただけなのに殺されたのだから」と、判決に疑問を投げかける人もいた。