全国各地でインフルエンザが流行しはじめている。特に沖縄では9月半ばから注意報レベルを大きく上回る患者数が報告されている。
まだまだ暑さが残る中での大流行の兆し。背景にはどんな要因が考えられるのか。予防や対策は?
沖縄県在住の感染症内科医の高山義浩さんが、ハフポスト日本版に寄稿した。
沖縄県では、インフルエンザが異常なほどに流行しています。県が公表する速報値によると、9月9日から15日までの1週間における県内の定点当たり報告数が50人を超えました。これまでも数年に1回、沖縄県では夏にインフルエンザの大きな流行を認めてきましたが、今回は冬の大流行に匹敵する規模となっています。
しかしながら、大流行となる要因がそろっているタイミングではありました。というのも、例年、インフルエンザのワクチンは10月から12月にかけて接種されるため、9月というのは住民の基礎免疫がもっとも低下している状態にあります。つまり、一旦流行が起きてしまうと、一気に広がりやすくなっているのです。
さらに、夏休みが終わって学校が再開しているため、子どもたちのなかで感染拡大しやすくなっていることもあります。日本でもっとも小児人口比率が高い沖縄では、大家族で祖父母との交流も活発なため、世代を超えた感染拡大も起こりやすいと考えられます。
また、この時期の沖縄は、まだまだ真夏。どの家庭も、どのレストランも、どのショッピングモールも、がっつり締め切ってエアコンを効かせています。このため、インフルエンザの飛沫感染が効率的に起きやすい乾燥寒冷かつ閉鎖環境で皆さん過ごしています。このあたりが、いまの季節、本土と違って沖縄で流行しやすい原因となっています。ただし、地球温暖化とともに全国の皆さんにとっても他人事ではなくなるかもしれません。
少し気がかりなのが、政府の熱中症対策として、2018年度に公立学校の冷房設置費に充てる臨時交付金が創設されたこと。2019年になって全国の小中学校に続々とエアコンが設置されていますが、これが沖縄における夏のインフルエンザ流行を後押ししている可能性があります。
全国と比べればエアコンが普及していたとはいえ、2年前の調査では、沖縄県でも設置率74.3%に過ぎませんでした。それがいま、各市町村が交付金をえて設置が急速に進んでおり、9月1日時点では87.4%にまで増えているとのことです。
このあたり、市町村別に差が大きく、たとえば2018年12月の新聞記事によると、糸満市では2018年12月1日時点で、市内の普通教室のクーラー設置率は、小学校が21.2%、中学校が1.3%でした。それが、2019年の2学期までに全普通教室にクーラーを設置することになったとのこと。
公立小中学校の空調(冷房)設備設置状況の推移(全国) 出典:文部科学省:公立学校施設の空調(冷房)設備の設置状況について(令和元年9月19日)
もちろん、これは涼しくて快適な環境で子どもたちが過ごせるという意味では喜ばしいことです。ただ、その代わりに感染症のリスクが高まっていることは自覚すべきかもしれません。感染症というのは、人間社会の隙をつくように襲ってくるものなのです・・・。
何より大事なことは、熱や咳のある子をしっかり休ませるなど基本的な感染対策について、これまで以上に心がけること。とくに今の季節は、ワクチンによる集団免疫効果が期待できないため、公衆衛生的なインフルエンザ対策を徹底するしかありません。