環境問題の改善のため積極的に発言を続ける16歳の活動家、グレタ・トゥーンベリさんにヘイト発言を繰り返したり、怒りをぶつけたりする大人たちに、オーストラリアABCテレビが“作った”「コールセンター」が話題になっている。
コールセンターと言っても、実際のものではなく、もちろんコント動画だ。
動画の内容は、社会風刺のネタを得意とし、オーストラリアのクイズ番組「Pointless AU」で活躍するマーク・ハンフリーズさんとアンドリュー・リッチフォードさんが考えた。
動画に字幕を付けると、次のような流れだ。
まず冒頭に、神妙な面持ちで中年男性が視聴者に語りかける。
こんにちは。私はあるお恥ずかしい悩みを抱えた中年男性だ。私は、あの『地球を救いたい』と言っているスウェーデンの女の子に理不尽な怒りを覚えている。
幸運なことに、そんなとき私が電話できるある番号がいまはあるんだよね。
場面が移り変わり、コールセンターにつながると、女性の担当者が電話を取った。
(コールセンターの担当者)
「こんにちは。こちらは「グレタ・トゥーンベリ相談窓口」です」
(コールセンターのナレーション)
何らかの理由で子供に怒鳴る必要がある、いいオトナを受け入れるために「グレタ・トゥーンベリ相談窓口」があるのです。
画面には、次々にグレタさんに向けて怒りをぶつける大人たちが現れる。
(年配の男性)
「彼女はいたずらに不安を煽っている!」
「彼女は世界の終わりを、世界の終わりかのように言うんだ!」
(中年の男性)
「言動のすべてが行き過ぎているんだ!」
「今、彼女が模擬国連で話しているのを見てるんだけどさ」
それに対し、諭すような口調で優しくコールセンターの担当者が語りかける。
(コールセンターの担当者)
「お客様、それは(模擬ではなく)本物の国連でございます」
それを聞いた男性は卒倒。
コールセンターは次のように説明のナレーションで呼び掛ける。
記事のコメント欄に(大声で叫んでいるかのようなコメントに見せるため大文字で何かを書き散らそうと)CAPS LOCKキーに手をかける前に、我々の専門のカウンセラーにあなたの心の状況を審査させてくださいね。
場面はまたコールセンターを受け取った担当者に移り変わる。
(コールセンターの担当者)
「お客様、カウンセリングを開始する前に、いくつかの質問をさせていただきます」
イライラしながら電話を聞く中年の男性。コールセンターの担当者はまず次のような確認をする。
(コールセンターの担当者)
「お客様のTwitterのプロフィール画像は、卵型のものですか?」
男性は、イライラしながら答える。
(中年の男性)
「ああ、ああ、そうだよ。でも自分の写真でこれと言って良さそうなやつが手元にないんだからさ」
ここで穏やかな声でナレーションが入る。
(コールセンターのナレーション)
「お客様がどれほど馬鹿げていることを言ったとしても、私たちは耳を傾けます」
続いて様々な大人たちが登場。中年の女性は、グレタさんへ理不尽な思いをぶつける。
(中年の女性)
「グレタが本当に素敵で、いい子で、思いやりのあるスウェーデンの女の子なら、どうして彼女は私がIKEAの本棚(BILLY)を組み立てるのを手伝ってくれないわけ?」
(中年の男性)
「彼女が再生可能エネルギーをとても心配しているのなら、どうして彼女は頭にソーラーパネルとファンが付いた野球帽とかをかぶらないわけ?」
なかには、映画評を見ながら電話をかけてくる人も。
(別の中年男性)
「(グレタ・ガーウィグが監督をしている)レディ・バードって映画、コメディだって言ってたけどさ、一回も笑えなかったんだけど俺」
(コールセンターの担当者)
「お客様、『グレタ・ガーウィグ相談窓口』をお探しでいらっしゃるのかと思うのですが…」
(イライラする男性)
「(映画批評サイトの)ロッテントマトでトマトメーターが99%だぜ!99%!」
この「ロッテントマト」は、直訳すると「腐ったトマト」だが、英語圏で上映もしくは配信されている作品について、映画評論家による映画レビューをまとめ、その“新鮮さ”をトマトの鮮度に例えたサイトだ。
評論家によるポジティブなレビューとネガティブなレビューの割合を数値化した“トマトメーター”で、その割合が一目瞭然になる。
肯定的なレビューが多いほど数値が高くなり「フレッシュなトマト」のアイコンが付く仕組みになっている。
お手上げ状態なのか、コールセンターの担当者は静かに話を変えた。
(コールセンターの担当者)
「(相談窓口へ)お電話おつなぎいたしますね」
担当者の心情を説明するように、ナレーションが続く。
(コールセンターのナレーション)
大丈夫ですよ。子どもが大人のようにふるまうことによって、大人を赤ちゃん返りさせてしまうってことを我々は良く理解していますから。
(床に寝そべる男性)
「正直に言うとさ、僕は彼女がアメリカへの無料クルーズをゲットしたっていうのにやきもちを焼いてるんだと思うんだよね」
駄々をこねた幼児のように寝そべり、コールセンターへ愚痴を言う男性に担当者は優しく返答する。
(コールセンターの女性)
「お客様、実は彼女は自身の手で航海をしてきたのですよ」
寝そべっていた男性は、それを聞いて気を失ってしまったようだ。
続いて、年配の白髪の女性が、怒りに震えながら電話をかけてきた。
(年配の女性)
「うーん、私が一度もやってもらったことがないのに、なんで彼女がオバマ前大統領とグータッチしてるのか分からないんだけど」
(コールセンターの女性)
「お客様はご自身で重要なグローバルムーブメントを立ち上げることを検討されましたか?」
(年配の女性)
「でも誰かがやっていることに悪口を言ったほうがずっと楽でしょ」
続いて年配の男性は、グレタさんが気候の専門家ではないことにご立腹の様子でこう語る。
(年配の男性)
「私たちは子どもの話を聞くべきじゃなくて、専門家の話を聞くべきでしょ」
(コールセンターの女性)
「さようでございますか、では専門家におつなぎしましょうか?」
だが、男性はそう聞くと、パチンと携帯電話を閉じる。
(コールセンターの女性)
「もしもし?」
最後に、コールセンターの説明が入る。
こちらはグレタ・トゥーンベリ相談窓口です。
気候変動に関して言えば、皆さんにとって彼女が本当の問題であることを私どもは存じ上げていますので。
このコールセンターは、理不尽な怒りに燃える大人たちに、いつでも寄り添ってくれるようだ。
「ハルク」もツイート。動画には様々な反応が寄せられる
大人のような振る舞いをする「子ども」を見てしまうと、大人がなぜか子どもぽくなってしまう社会の面白さをシニカルに伝えている。
ABCテレビが動画を公式Twitterに投稿すると、2日で3万を超える「いいね」が付き、リツイートも1万を超える反響が。
投稿には「むしろ学校をさぼっている10代のあの子に信頼を寄せる大人たちのためにコールセンターが必要だ」という否定的な文言も多く寄せられたが、「いいね、コールセンター」と言ったリプライや、攻撃的なヘイトコメントに「あなたもこのコールセンターに電話できるってよ」などとコメントが続いた。
アベンジャーズのハルク役で知られるマーク・ラファロ氏もツイート。
「地球を救いたい勇敢な少女に怒っている人へ、24時間年中無休の『グレタ・トゥーンベリ相談窓口』を紹介しよう」とつづっていた。