マーベル・スタジオ(ディズニー傘下)とソニーの間で、出資条件をめぐる対立問題に揺れていた「スパイダーマン」シリーズの次回作。
ファンが固唾を飲んで行方を見守っていたが、9月27日、マーベル・スタジオとソニー・ピクチャーズが、次回作を共同製作することを公式に発表した。
次回作は「スパイダーマン:ホームカミング」(2017)「スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム」(2019)に続く、シリーズ第3作となる。2021年7月16日にアメリカで公開予定で、タイトルはまだ決まっていないという。
気になる合意内容は?ジョン・ワッツ監督も再登板へ
出資比率は、マーベル・スタジオを持つディズニーが25%を受け持つ。また受け取る収益は25%となる見込みで、ディズニーが保有するスパイダーマンのグッズに関する商品化の権利に変更はない。
ソニー・ピクチャーズはこれを受け、公式Twitterで「共に前に進めることをうれしく思います」とツイート。
また、報道によると「スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム」までで契約満了となっていたジョン・ワッツ監督は再登板に向けて契約交渉の最終段階にあるという。
ディズニーとソニー両社の契約が無事サインに至ったことで、ワッツ監督の契約は正式に締結されるとみられる。
そもそも何で争っていたの?マーベル・コミックスのヒーローたちが共演できない20年にわたる“大人の事情”
もしスパイダーマンがマーベルを離脱していたら、もうアベンジャーズで一緒に戦うこともないし、新たな作品が世に出てもアイアンマンことトニー・スタークからもらった様々な遺産が登場しないスパイダーマンになっていただろう。
そもそも、なんでスパイダーマンがマーベルを離脱するという大変な事態になっていたのか。
これまでの契約は、「マーベル・スタジオが公開初日の興行収入のうち5%を受け取る」という内容だった。
一方のマーベル擁するディズニー側は「収入の取り分を50:50にしたい」と主張していたため、交渉が決裂していたと報じられている。
こうなった原因は、去ること約20年前に起きた、マーベルの経営危機がきっかけだ。
アメコミで数々のヒーローを生み出した「マーベル・コミック」。コミックをきっかけに作られた映画やアニメは好評を博していたものの、1990年代、マーベルは倒産の危機に瀕していた。
社を潰さないため、マーベルはキャラクターたちの映画化権などを他社へ売却することに。
アベンジャーズでも活躍する緑色の怪人「ハルク」はユニバーサル・ピクチャーズへ行き、「ファンタスティック・フォー」はコンスタンティン・フィルムへ。その後FOXと共有されることになった。
突然変異によって超人的な能力を持って生まれたミュータント集団が繰り出すアクションが人気の「X-MEN」は20世紀FOXへ渡る。ちなみに20世紀FOXも2019年にディズニーに買収されている。
そしてスパイダーマンは1998年、ソニー・ピクチャーズに買われることになった。この時に実はマーベルのすべてのキャラクターがソニーに移る可能性があったことを、ウォールストリートジャーナルが報じていた。
つまり、一度ソニーに権利が移っていたが、ソニーがマーベルと共に再度映画を作ることとなり、その際に契約したのが「公開初日の興行収入のうち5%をマーベルへ渡す」ことだったのだ。
その後、ディズニーは2009年にマーベルを買収していた。
スパイダーマンのマーベル離脱をめぐっては、20年にわたる「大人の事情」が蜘蛛の糸のように絡み合った状態だったが、ひとまずは最悪の危機を脱したようで、ファンにとってはホッと胸をなでおろす結果になっただろう。
スパイダーマンがホームレスになっちゃうかと思ってた…🕷
両社の対立をめぐっては、今回の発表前に正式なリリースはなかったものの、様々な憶測が飛び交っていた。
スパイダーマン役で、数々のうっかりネタバレ列伝で知られるトム・ホランドがInstagramでソニーをアンフォローしちゃったり、報道陣に対して「スパイダーマンの未来はまた変わったものになるけど、それが最高で素晴らしいことに変わりはないよ」と離脱を匂わせる発言が飛び出したり、ハラハラさせる騒動が続いた。
また、ソニー・ピクチャーズのアンソニー・ヴィンシクエラ会長兼CEOも「扉は閉ざされている」と交渉が終了していることを説明。
「交渉が決裂し、スパイダーマンがマーベルを離脱するのでは」と報道されたこともあり、8月下旬からの1カ月は「スパイダーマンがホームレスに」と嘆くファンが悲鳴をあげていた。
Twitterでは「#SpiderManHomeless」というタグも誕生。
だが、今回の再契約を受け、歓喜の声も続出した。トム・ホランドはInstagramで映画「ウルフ・オブ・ウォールストリート」(2013年)で証券会社の社長を演じたレオナルド・ディカプリオが「俺は辞めない!ショーは続く!」と絶叫するシーンを投稿。
MJ役のゼンデイヤら共演者も次々と投稿に喜びのリプライを返した。
アベンジャーズでハルクを演じたマーク・ラファロは、地球上の人類が半数消えてしまったサノスの指パッチン「The Decimation(ザ・デシメーション)」をもとに「指パッチンから戻った!また会える気がしていたんだよ」とハートの絵文字をつけて祝福した。