東京都目黒区で船戸結愛ちゃん(当時5)が虐待を受け死亡した事件で、保護責任者遺棄致死罪に問われた母親・優里被告(27)の裁判員裁判が9月9日午後、東京地裁(守下実裁判長)であり、検察側は「命を守るという親として最低限度の行動すら起こさなかった責任は重大」として懲役11年を求刑した。
起訴状によると、優里被告は再婚した夫の雄大被告(34)=同罪などで起訴=とともに、長女の結愛ちゃんに2018年1月下旬から十分な食事を与えず、雄大被告の暴行を知っても虐待の発覚を恐れ放置。低栄養状態による免疫力低下で敗血症を引き起こし、3月2日に死亡させたというもの。
結愛ちゃんは死亡時に、身長108cmに対し体重は12.2kgと、同年代の平均体重(約18kg)を大幅に下回り、あばら骨や腰の骨が浮き出るように痩せた状態で発見されていた。
論告で検察側は、暴行を加えていた雄大被告と優里被告の関係について「支配とまでは言えない」と断じた。
一方で弁護側は、罪の成立に争いはないものの、雄大被告からの心理的DVを受けたことにより、抵抗できなくなっていたとして「もう一人の被害者だった」と訴えた。
精神的な支配下に置かれたことで、反発しさらなる暴力を起こさないことだけを考え、視野狭窄に陥っていたと主張。虐待に積極的だったのは雄大被告であったとして、優里被告に対しては懲役5年が相当だとした。
優里被告は最後に発言を促された。
「自分の命より大切だった結愛のことを、周りに何て言われようと、異常なほど結愛のことを愛していたのに、結愛の心も体も、ぼろぼろにして死なせてしまった事への罰はしっかりと受けたいと思います」
「私のせいで、結愛の肉体はもう、この世にはないんですけど、結愛の名前と、魂を生かせるのはもうあたししかいないので、あたしを通して、結愛と一緒に生き続けたいと思います。以上です。ありがとうございました」
優里被告はこう述べ、一礼した。
判決は9月17日に言い渡される予定だ。