夏休みの宿題の定番として知られる「青少年読書感想文全国コンクール」。
本好きで文章が得意な人ならばすぐに書き上げられるものの、自由研究に追われ、漢字ドリルや計算ドリル、海の絵を描いていたらもう8月の終わりが目の前に迫り、焦って図書館へ行き、本をめくる……なんて人も多いかもしれない。
時代は移り変わり、いまは図書館に行かなくても、書店の本棚へ探しに行かなくても、電子書籍で本が読める。
夏休み最終日の夜、もう図書館も書店も閉まっていても、Amazonのkindleや電子図書館の青空文庫があればセーフだ。そう思いきや、なんと「青少年読書感想文全国コンクール」の公式サイトに、驚きの文言がつづられていた。
Twitterでは8月20日、公式サイトのキャプチャ画像とともに「いつの時代のコンクールなのよ…」というユーザーのツイートが話題を呼び、リツイートが1万2000件を超えた。
なぜ電子書籍はいけないのか。事務局に聞いてみた。
電子書籍はアップデートがあるのでNG
結論から言うと、電子書籍は内容のアップデートがあり、児童の書いた引用部分などが分からなくなる恐れがあるため、禁止しているという。
事務局の担当者は電子書籍など、オンラインで配信される作品は「随時更新されるケースもあり、児童生徒が読んだ内容を特定するのが難しく、また、電子書籍は閲覧するために機器が必要なことなど、これらを審査対象に含めるには新たな対応が必要となります」と回答。
ただ、この数年間で電子書籍の利用も増えている。電子書籍は今後も対象に含まれないのだろうか。
事務局は「電子書籍等の利用が拡大している現状は認識している」といい「国が進める学校現場のICT化の動向や整備状況、児童生徒の電子書籍の利用状況などを十分考慮しつつ、各地区の審査員の先生方のご意見をもとに、今後、電子書籍等を対象に含めるか判断をしていく予定です」と説明している。
読書感想文の審査では、児童生徒が読んだ本(対象図書)を用意し、感想文の内容が対象図書の内容に沿ったものか、引用等が適切かどうかなどを確認するという。
その際に、書名、著者名、発行所などを記入する欄がある「応募票」をもとに対象図書を特定。審査では刊行された出版社のほか、単行本か文庫本か、なるべく発行年や版まで同じものを揃えるのだとか。
電子書籍では、アップデートで過去の内容が確認できない可能性があるため、対象から外しているという。
自由読書では辞書の感想文をまとめた人も
読書感想文には、2つのパターンが用意されている。
1つは、読書感想文コンクールの主催者が指定した「課題図書」を読んで書くパターン。
課題図書は、専門家が新しく出版された書籍の中から、選んだもの。
一方、自分で読みたい本を自由に選んで読書感想文を書く「自由読書」のパターンもある。実はこの「自由読書」、規定上は辞書でも漫画でもOKなのだ。
注意書きには、「教科書、副読本、読書会用テキスト類またはこれに準ずるもの、別冊付録を含む雑誌、パンフレット類、日本語以外で書かれた図書、そして自分の学年の課題図書は対象としない」とあり、それ以外なら自由に選べる。
過去の読書感想文では、辞書を題材にした読書感想文で都道府県代表に選ばれた事例もあるという。
ただし、受賞を狙って書く場合には学校から推薦された作品が、市区町村、都道府県、そして全国と段階的に審査されていくため、市区町村などの独自ルールではねられてしまうこともあり、事前に学校に確認をとるほうが無難だ。
青少年読書感想文コンクールは読書活動の振興等を目的に1955年に始まったもの。
受賞をすれば受験や内申点に有利に働くかもしれないが、本に触れるという純粋な目的だけを考えれば、何を読んでもかまわないし入賞を狙う必要もないだろう。
本の感想も、本に迎合したり感動したりしなくてもよく、批判的な目線を向けても、退屈だと感じればその退屈さを挙げていってもいい。
どうしても書き方が分からない、と悩んだ場合は、過去の入選作品がまとめられた「考える読書」を見ると、感想を自分の言葉でどう表現すればいいのか参考になるかもしれない。