なぜ人は「あおり運転」をしてしまうのか。岡山トヨペットが作った動画が秀逸すぎる

車間距離を詰めてあおる、進路妨害するといったあおり運転は、誰しもが加害者にも被害者にもなり得るという。
岡山トヨペット「STOP ROAD RAGE」サイト
岡山トヨペット「STOP ROAD RAGE」サイト
岡山トヨペット「STOP ROAD RAGE」サイトより

車を走行中、割り込みや追い越しに対して、車間距離を詰めてたり、進路を妨害したりといった報復行動におよぶ「あおり運転」が問題になっている。

8月16日には茨城県警が、あおり運転をした後に男性を殴ってけがをさせたとして、傷害の疑いで住居、職業ともに不詳の宮崎文夫容疑者(43)の逮捕状を取り、全国に指名手配している。

なぜ人はあおり運転をするのか。「ロードレイジ」と呼ばれるこうした行為は、実は「一部の危ない人の事故」ではなく誰しもが加害者にも被害者にもなり得るという。

危険な運転が社会問題になるなか、自動車販売店の岡山トヨペットが制作したあおり運転が起きるまでの加害者、被害者の心理描写を表現した動画「STOP ROAD RAGE」が話題を呼んでいる。

動画では、はじめ軽快に走っていた1人が、対向車線の自転車にベルを鳴らされ、少し感情が揺さぶられる。

その後、子ども連れに追い抜かれ、前を走る2人の速度にだんだんとイラつき始める。そして子ども連れが犬を眺めるために急に止まるなどの行為に怒りが爆発。

速度を上げてあおり始め、子ども連れも恐怖で焦りがつのる。最後はあおった側が追突事故を起こして終わる。

怒りが沸き上がっていく心理描写は、とてもリアルで恐ろしい。

あおり運転そのものを取り締まる法律はない

ロードレイジとは、自動車走行中の追い越しなどに対して、あおり運転や、進路妨害するといったドライバーの報復行動のことをいう。

アメリカでは30年以上も前から社会問題になっているという。

警察庁によると、道路交通法違反の「車間距離保持義務違反」で、全国の警察が2018年の1年間で摘発した件数は1万3025件にのぼり、前年の1.8倍となった。

実は道路交通法には、あおり運転そのものを摘発する規定はない。そのため、車間距離保持義務違反が適用されることが多い。

件数の急増は、2017年6月に神奈川県の東名高速での事故を受け警察庁が摘発強化を指示したため

この事故では、ワゴン車があおり運転をされた末に停車させられ、後続の大型トラックによる追突事故で夫婦2人が死亡し、子ども2人がけがを負った。

警察庁によると、あおり運転による危険な運転操作には、次のような違反が関わっている。

あおり運転による危険な運転操作はいくつもの違反が絡んでいる
あおり運転による危険な運転操作はいくつもの違反が絡んでいる
警察庁公式サイトより

急いでいて…ハンドルを握ると気が大きくなって…運転中のちょっとしたイラつきが速度にのって大きくなる

 岡山トヨペットがあおり運転の心理やアンガーマネジメントを説明した「STOP ROAD RAGE」によると、あおり運転が起きる要因は「急いでいた」「車の価値=自分の価値」と誤信して気が大きくなる、などちょっとしたきっかけだという。

こうした状況の時に、周りの行為や速度にイライラが募り、怒りが暴発するという。

岡山トヨペット「STOP ROAD RAGE」サイト
岡山トヨペット「STOP ROAD RAGE」サイト
岡山トヨペット「STOP ROAD RAGE」サイト

日本アンガーマネジメント協会が20代〜60代男女420人にインターネット上で行ったアンケートによると、「運転をしていてイライラしたことはありますか?」という問いに対し、90.2%の人が「はい」と答えた。

※グラフが見られない場合はこちら

また、あおり運転や急な割込みなど、危険な運転を周囲の車にされたことがある人は76.0%にのぼり、とくに軽自動車など小さな車に乗っているときにあおられるという経験者が多かった。  

※グラフが見られない場合はこちら

あおり運転、ロードレイジの加害者にも被害者にもならないために気をつけること

あおり運転の被害者にならないようにするには、まずどうすればいいのだろうか。 

日本アンガーマネジメント協会あおり運転撲滅プロジェクト事務局は、次のような注意点として挙げている。

【あおり運転に巻き込まれないための注意点】

・目的地に余裕を持って到着すること
・割り込まないこと
・追い越し車線でゆっくり走らないこと
・あおらないこと
・他の運転者を挑発しないこと
・緊急時以外にクラクションを鳴らさないこと
・危険運転者には抜いてもらうこと
・絶対に車から降りないこと
・相手の車が見えなくなるまでやり過ごすこと

また、イライラして危険な運転をしてしまい、あおり運転の加害者にならないためには、怒りのコントロールが必要になる。

【気持ちを落ち着けるアンガーマネジメントテクニック】

・6秒ルール(どんなにイラッとしても6秒待ってみる)
・家族の写真など、 大切なものを見えるところに置く。
・気持ちが落ち着く言葉を自分に言い聞かせる (例:「大したことない、大丈夫」など)
・深呼吸をする

カッとなっても、まずは深呼吸をして、待ってみる。そして冷静になれるような心の余裕をもって運転することが大切だ。

急いでいるときなどはついつい余裕がなくなってしまうこともある。車に乗るときは、自分がだれかの命を奪ってしまうかもしれない凶器になる可能性があることをしっかり認識し、時間にも心にも余裕をもっておくことが大事だ。

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