夏の高校野球選手権大会が8月6日に開幕し、地方大会を勝ち抜いた49校が、日本一を目指して熱戦を繰り広げる。
高校野球でおなじみとなっている坊主頭について、ハフポスト日本版は甲子園出場校を対象に調査を実施した。野球部の髪型が「坊主」と回答したのは43校で、全体の87%に上った。
その中で、ほとんどの高校が髪型を自由としているが、選手が自主的に坊主にしていると説明。「伝統」や「慣習」などが理由だという。
自由なはずなのに、なぜ同じ髪型ばかりなのか。
部活動の問題に詳しい名古屋大学院の内田良准教授は、 「多くの学校が、部員が同じ髪型にしていることについて、自主的と言ってしまうことに危うさを感じます。伝統や慣習といういい加減な言葉で、半ば強制していることをごまかしているのではないでしょうか」と問題視する。
一方で、7つの高校が、坊主の強制や「髪型を決めている」などと回答。「野球に集中してほしい」「衛生面」といった理由を挙げている。
茨城・霞ケ浦は「入部以降は坊主。3年間は野球に集中してほしいという気持ちから」と説明。また大阪・履正社は「髪型は6ミリ程度と決めており、入学の時に説明している。長髪が清潔感がないというわけではないが、帽子もかぶるので衛生面が理由」と話している。
各校の回答
調査では、(1)野球部員の髪型が坊主か坊主でないかを尋ねた上で(2)坊主だった場合は、髪型は強制、推奨、自由のどれに当てはまるのか(3)その理由を聞いた。回答したのは各校の教頭を中心に、野球部顧問・部長や広報・事務局の担当者。
各校の回答内容は以下の通り。
⚫︎坊主ではない(5校)
北北海道 旭川大高:野球でも考えてプレーすることが求められるので、普段の生活から自分で考える習慣を身につけて欲しい。自主的に考えさせる結果が坊主の禁止
岩手 花巻東:理由は分からない。自由。昨夏から坊主をやめようと、みんなで伸ばし始めた。坊主を選択している人もいれば、坊主ではない短髪の生徒が多い
秋田 秋田中央:主体性を持って判断させるため。4月から、禁止に近い。放っておくと坊主にしてしまうので、坊主以外でふさわしい頭髪を自分たちで考えるようにさせている
⚫︎坊主(43校)
南北海道 北照:強制ではなく自由。小さい頃から野球に親しんでいるので、彼らの中で当たり前になっている
【東北】
青森 八戸学院光星:代々、坊主で通しているので、言わなくても入部の時点で坊主できます。理由は分からない
関東
茨城 霞ケ浦:強制で、入部以降から坊主が条件。理由は3年間は野球に集中してほしいという気持ちから
千葉 習志野:自由ではなく、口頭で坊主でと伝えている。習志野高校で野球する場合は坊主でと理解してもらっている。理由は衛生面で、汗を掻くスポーツなので、ヘルメットや帽子もかぶるので。坊主が理由で野球部員が集まらないなどがあれば、対応を考える。
東東京 関東一:推奨... 伝統だから。変わる時が来れば変わっても良いが、大きなきっかけがない
【北信越】
新潟 日本文理:決まりはない
長野 飯山:強制、推奨、自由かは分からない
富山 高岡商:髪型は自由で、慣習的に坊主。脱坊主の議論は出てない
石川 星稜:坊主を強制。理由は特になし
福井 敦賀気比:強制、推奨、自由かは分からない
【東海】
静岡 静岡:髪型は自由、生徒が自主的に坊主にしている
愛知 誉:強制はしていないが、坊主が当たり前になっていて、何も言わなくても入学の時から自ら坊主
岐阜 中京学院大中京:強制はしていないが、坊主として伸びてきた場合は、短くするように伝えている。理由は特にない。いままでそうだったのと、高校球児らしいと思う
三重 津田学園:髪型自由で、結果的に坊主
【近畿】
滋賀 近江:暗黙のルール。指導者から坊主にするようにとは言っていない。理由は、汗を掻くので清潔感がある
京都 立命館宇治:強制、推奨、自由かは分からない
大阪 履正社:髪型は6ミリ程度と決めていて、入学時に説明している。長髪が不衛生というわけではないが、帽子もかぶるので衛生面が理由
兵庫 明石商:自由なのか、個人の判断なのかは分からない
奈良 智弁学園:強制、推奨、自由かは分からない
和歌山 智弁和歌山:強制はしていない。詳細は分からない
【中国】
岡山 岡山学芸館:頭髪は自由たが、伝統や慣習、生徒の自己判断で坊主にしている
広島 広島商:強制はしていない、伝統的に坊主
鳥取 米子東:強制、推奨、自由かは分からない
島根 石見智翠館:強制、推奨はしていない。当たり前のこととして、生徒が坊主にしている
山口 宇部鴻城:強制や坊主にするように言っていないが、伝統的に坊主
【四国】
香川 高松商:強制はしていない。自由だが、結果的に坊主になっている
徳島 鳴門:強制、推奨、自由かは分からない
愛媛 宇和島東:強制や推奨はしていない。髪型が自由で、結果的に坊主
高知 明徳義塾:強制はしていない。昔から慣習的に坊主
【九州】
福岡 筑陽学園:強制ではない
佐賀 佐賀北:強制はしていない。自由で結果的に坊主
長崎 海星:強制、推奨、自由かは分からない
熊本 熊本工:強制、推奨、自由かは分からない
大分 藤蔭:推奨。先輩から後輩に代々引き継がれている。理由は分からない
宮崎 富島:強制、推奨、自由かは分からない
鹿児島 神村学園:強制、推奨、自由かは分からない
沖縄 沖縄尚学:推奨、暗黙の了解。沖縄で野球をする生徒は坊主というイメージがある。理由は高校野球らしいから
⚫︎不明
神奈川 東海大相模
坊主の学校、かつては3割だった。
日本高校野球連盟と朝日新聞社が、全国およそ4000校の加盟校を対象に、5年ごとに実施ているアンケート調査を見ると、高校野球界の坊主頭の割合はここ25年で大きく変動している。
高野連によると、調査を始めた1993年度は、部員の頭髪を「丸刈り」と決めていた学校は51.1%だった。次の98年度には30.9%に急減したが、そこから増加に転じた。03年度は46.4%、08年度は69.2%で、13年度は79.4%とピークを迎えた。直近の18年度は76.8%で、ほぼ横ばいとなっている。
高野連は、ハフポスト日本版に「野球部員の頭髪については各加盟校の判断にお任せしております」と話している。
「自分のことを選択できる子を育てて」
内田良准教授は「自分のことを選択できる子供を育てるのが高校教育です」と、高校野球が教育理念とかけ離れていると指摘する。
「今は、髪型を一つに決める時代ではありません。髪型という身近なことからでも、自分で選択肢を選んでいく流れとは逆行しています。とりわけ、本人の身体に関わることに介入しているのは、大きな問題です」
強制している学校については、「ありえない。黒染め強要や地毛証明書など、堂々と身体に介入するブラック校則が明るみに出ていますが、その象徴的な事例です」と批判した。
球数制限の問題にも触れながら、子供の人権侵害に関わることだと訴える。
「伝統や野球特有と言っても、今の時代は認められないと気づいて欲しい。子供の人権、安全を考えた上で、教育活動の野球が成り立つはずが、人権や安全を踏みにじる形で野球が成り立ってしまっている。 その大前提に立ち返って、髪型の自由について考えてほしい」
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ハフポスト日本版では、高校野球の髪型についてのアンケートを実施しています。ご協力よろしくお願いいたします。