国際芸術祭「あいちトリエンナーレ」の企画展の一つである「表現の不自由展・その後」が8月3日で中止されたことについて、疑問の声があがっている。
ペンクラブが抗議 「芸術の意義に無理解な言動」
「言論や表現の自由の擁護」を理念として活動する日本ペンクラブは8月3日、声明を発表。名古屋市長の河村たかし氏が展示中止を求めるコメントを出したことなどについて、政治的力の行使や検閲に当たると厳しく指摘した。
声明で、日本ペンクラブは、芸術に対する行政の役割について「作品を通じて創作者と鑑賞者が意思を疎通する機会を確保し、公共の場として育てていくことである」と言及。
さらに、展示の中止を求めた河村たかし名古屋市長や、「補助金交付の決定にあたっては、事実関係を確認、精査して適切に対応したい」と述べた菅義偉内閣官房長官など、行政や政治家らが相次いで同展示を牽制するコメントを出したことについて、「行政の要人によるこうした発言は政治的圧力そのものであり、憲法21条2項が禁じている「検閲」にもつながるものであることは言うまでもない」と厳しく批判した。
一眼的な見方ではなく、多様な価値を表現できる場所を築くことの重要性を主張した。
青木理さん「表現が萎縮していくというのが怖い」
ジャーナリストの青木理さんは8月4日、テレビ番組『サンデー・モーニング』(TBS系)にコメンテーターとして出演。
同企画展に批判が殺到し中止の判断がされたことについて、「芸術への政治の介入」だと非難した。
番組で青木さんは、企画展の中止について「極めて残念」とした上で、「気になったのは、(今回の一件で)政治家とか政府の公官が「けしからん」的なこと色々と発言しているのは、これはある種、芸術への政治の介入になりますから考えて欲しい」と懸念を示した。
その上で、公的な資金が「あいちトリエンナーレ」に使われていることに対して、「『政府に批判的な芸術に(対して)公的資金に入れるのはどうか』という議論があるんだけど、これ別に政府の金じゃないですからね。税金ですから」と発言。その時の政権の主張に沿ったものだけではなく、さまざまな意見を持つ幅広い人たちのために使われる「公的な資金」の根本的な意味を改めて指摘した。
青木さんは、芸術に対して政治が介入することが前例になることを恐れるとの懸念を示した上で、「(今回の展示中止は)あいちトリエンナーレの展示室での枠を超えて、ある種日本の社会全体で、日本の表現に対する現状を演じてしまった(示してしまった)ということですよね。繰り返しますけれど、これが前例となって、表現が萎縮していくというのが怖い」と語った。
「行政に批判的な意見を封殺する論理になる恐れ」と与党議員も懸念
この問題については、自民党の議員からも批判の声があがっている。
衆議院議員の武井俊輔さんはツイッターで、「間違えてはいけないのは、税金は政府や行政に批判的な人でも納税しているものであり、それを再配分するもの。 政府や行政に従順、ないしは意向に沿ったものにしか拠出しないということでは、決してあってはならない」と、公的な資金についての捉え方について言及。
さらに、河村名古屋市長の「税金を使っているから、あたかも日本国全体がこれを認めたように見える」との発言について、「行政に批判的な意見を封殺する論理になる恐れ」があると懸念を示した。
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