6月23日、沖縄は「慰霊の日」を迎えた。
太平洋戦争において、旧日本軍による組織的戦闘が終わったとされる1945年からこの日で74年になる。
最後の激戦地になった沖縄県糸満市摩文仁の平和祈念公園では、太平洋戦争末期の沖縄戦の犠牲者らを追悼する「沖縄全戦没者追悼式」が開かれた。
追悼式では毎年、沖縄の子どもたちがかつての沖縄戦に思いを寄せた詩を朗読している。
2019年は、糸満市立兼城小6年の山内玲奈さんが語りかけた。
沖縄戦では、県民のじつに4人に1人が命を落としたといわれている。
山内さんは参列した安倍晋三首相や、玉城デニー知事、戦争で犠牲になった県民の遺族たちに向けて、美しい沖縄の海や空が見てきたであろうこれまでの沖縄の景色から、平和への思いを述べた。
平和の詩では、戦争を知らない時代に生まれたものの、この戦争を語り継ぐ重要性に言及。
そして生きる上での幸福について「お金持ちになることや 有名になることが幸せではない」「家族と友達と笑い合える毎日こそが 本当の幸せだ」「未来に夢を持つことこそが 最高の幸せだ」と語った。
玉城知事、平和宣言でウチナーグチと英語を交え語る
玉城知事は、追悼式で就任後初の「平和宣言」となった。
玉城知事は「県民は想像を絶する極限状況の中で、戦争の不条理と残酷さを体験した」と沖縄戦の犠牲を振り返り、続けて「人間が人間でなくなる戦争は二度と起こしてはならない」と決意を述べた。
宣言では、沖縄県宜野湾市にあるアメリカ軍の普天間飛行場の移設に伴い、名護市辺野古沿岸部の埋め立て計画を進める政府への抗議の意を強く示した。
玉城知事は、日本国内のアメリカ軍専用施設が沖縄に約7割集中する現状にも言い及び「県民投票の結果を無視して工事を強行する政府の対応は民意を尊重せず、地方自治をもないがしろにするものだ」と批判。
辺野古への県内移設について2019年2月にあった県民投票で7割超が「反対」の民意を示したことに言及した。
基地移設は辺野古だけが唯一という固定観念を捨て、県民の民意に沿い「県との対話による解決を強く要望する」とし、本土に住む人々へ向けても「国民全体が当事者であるとの認識を持っていただきたい」と呼びかけた。
最後には、沖縄の言葉であるウチナーグチと英語で「平和を愛する沖縄のチムグクル(真心)を子や孫に伝えなければなりません」と結んだ。
一方、来賓あいさつに立った安倍首相は辺野古などの基地移設問題については今年も言及せず、沖縄に基地やアメリカ軍関連施設が集中することについて「何としても変えていかなければならない」と語った。
その上で「基地負担軽減に向けて、確実に結果を出していく決意であります」とした。
平和の詩「本当の幸せ」【全文】
青くきれいな海
この海は どんな景色を見たのだろうか
爆弾が何発も打ちこまれ
炎で包まれた町
そんな沖縄を見たのではないだろうか
緑あふれる大地
この大地はどんな声を聞いたのだろうか
けたたましい爆音
泣き叫ぶ幼子
兵士の声や銃声が入り乱れた戦場
そんな沖縄を聞いたのだろうか
青く澄み渡る空
この空は
どんなことを思ったのだろうか
緑が消え
町が消え
希望の光を失った島
体が震え
心も震えた
いくつもの尊い命が奪われたことを知り
そんな沖縄に涙したのだろうか
平成時代
私はこの世に生まれた
青くきれいな海
緑あふれる大地
青く澄みわたる空しか知らない私
海や大地や空が74年前
何を見て
何を聞き
何を思ったのか
知らない世代が増えている
体験したことはなくとも
戦争の悲惨さを
決して繰り返してはいけないことを
伝え継いでいくことは
今に生きる私たちの使命だ
二度と悲しい涙を流さないために
この島が
この国が
この世界が幸せであるように
お金持ちになることや 有名になることが幸せではない
家族と友達と笑い合える毎日こそが 本当の幸せだ
未来に夢を持つことこそが 最高の幸せだ
「命どぅ宝」
生きているから笑い合える
生きているから未来がある
令和時代
明日への希望を願う新しい時代が始まった
この幸せをいつまでも