生理用品のセレクトショップ「illuminate」青山ブックセンターで始まる。ファンシーもカッコいいも、選べる時代が来た

青山ブックセンター本店で7月29日まで。性にまつわる“?”やジェンダーについて考える書籍も一緒にセレクトできます。

“生理”のインフラを整えたい。いまの生理を取り巻く市場は『ボールペンしかない文具店』みたい。

アパレル経営者で起業家のハヤカワ五味さんは、6月20日に立ち上げた生理用品のセレクトショップでこう話した。

商品のコンセプトを説明するハヤカワ五味さん
商品のコンセプトを説明するハヤカワ五味さん
Huffpost japan/Shino Tanaka

 生理と言えばファンシーな絵柄のついたナプキン。ほとんどの女性がその一択で商品に手を伸ばさざるを得ない状況だ。
ときおりタンポンを使うことがあっても、初めて目にしたらどう使うかもわかりにくい。月経カップなんて、そもそもどこで買えばいいのか分からない。

文具店みたいに鉛筆があってもいいし、ペンや万年筆、消しゴムもノートも色んな種類があったほうが「こうしたい」と思う自分にフィットしたものが選べるはず。

生理用品だって、同じように選択肢を広げればいい。
そんな思いを抱いたハヤカワさんは、デザイナーのMinaさん、Aineさんらとともに、生理用品のセレクトショップを中心としたプロジェクト「illuminate(イルミネート)」を開始した。 

プロジェクト「illuminate(イルミネート)」を開始したメンバー。左からMinaさん、Aineさん、ハヤカワ五味さん
プロジェクト「illuminate(イルミネート)」を開始したメンバー。左からMinaさん、Aineさん、ハヤカワ五味さん
Huffpost japan/Shino Tanaka

 6月20日から7月29日まで、東京・渋谷区の青山ブックセンター本店でこれまでなかったようなパッケージデザインのナプキンや月経カップなどを販売するポップアップショップを展開している。その後も大阪で出店を予定しており、夏ごろにはインターネットで購入できるシステムを整えたいという。

生理用品にはいろんな捉え方がある。すべての意見を尊重したい

シンプルなものから、オーガニックなパッケージデザインもあるナプキン。月経カップにタンポンや「illuminate」のロゴ入りバッグが並ぶ商品棚を前にハヤカワさんは、こう話した。

「生理用品に対する捉え方っていろいろあると思うんです。それこそ自分から話したい人もいれば、隠しておきたいという人もいるし。そのすべての思いを尊重したいんです」 

月経カップ「フルムーンガール」
月経カップ「フルムーンガール」
Huffpost japan/Aya Ikuta

「今まで女性はある意味選択肢がなかった側面がある。こうあるべき、とか。今はその選択できないという状態から、選択できる・選択しなくてはいけないみたいな転換点にあるのかなと思っている」

「女のコだから」の枕詞で、「カワイイ」「ファンシー」の選択を薦められて全ての女性の気分が上がるわけではない。
シンプルでカッコいいものが好きな人もいる。

月経が毎月くるものの、性自認は男性だという人もいる。

ハートや花柄が飛び、フェミニンなデザインの生理用品ばかりの棚を前に、選択することが辛い、選択しなくちゃいけないけど選択肢がないというパターンもあるかもしれない。 

オーガニックコットンを使った生理用ナプキン「シシフィーユ(sisiFILLE)」
オーガニックコットンを使った生理用ナプキン「シシフィーユ(sisiFILLE)」
Huffpost japan/Aya Ikuta

 様々な状況を想定した選択肢を提示することが、このショップの目標という。

今後の展開。「インフラ」として目指すもの

急に生理用品が必要になったとき、いまは駅の売店やホテルなどでサッと買えたり、陳列したりするところはあまりない。
ハヤカワさんは、「生理用品のインフラ整備」として、今後ホテルなどの宿泊施設や、鉄道会社と協力して生理用品がどこでも手にできるような環境を整えられたらと考えている。

駅にある売店でも、鉄道会社によって生理用品の取り扱いは様々。例えばJRであれば東京駅にはあるが、すべての駅の店舗で買えるわけではない。
私鉄や地方路線によっても、対応は千差万別だ。

「キヨスクでは陳列されてないが『言えば出てくる』なんて都市伝説があるくらい。2020年のオリンピックで国外からたくさんの方が来るタイミングで、知らない国で生理用品がなくてどうしたらいいか分からないという事態もなくしたい」とハヤカワさん。
公共施設などでも入手できるようにしたいと考えている。

“生理”をどう教えるのかについても、性教育の観点からできることがあるという。
教える側に恥ずかしさがあれば、聞いている側も恥ずかしいと受け取るだろう。動画の教材などを作れば、そこにも変化をつけられる可能性がある。

また生理を勉強しながら、「性自認が女性じゃなくても、生理はあるんだよ」と説明を加えることで様々なSOGIがあることも一緒に学べる機会を増やすこともできるかもしれない。

「価値観は自分だけじゃなく教育や環境でいつの間にか作られていくもの。そこを自覚して増える選択肢もある。選べることに意味がある。今ある価値観は否定しないけど、これからの価値観についてよりポジティブに動けたらいいなと思っています」と語っていた。

「#NoBagForMe」も発足。そこで生まれる議論が大切

ハヤカワさんは、生理用品などを扱う大手メーカー、ユニ・チャームが発足した「#NoBagForMe」にもプロジェクトメンバーとしても関わっている

このプロジェクトでは、従来のパッケージとは異なる、隠す必要性を感じさせないようなデザインの生理用品を開発するという。

「#NoBagForMe」は、直訳すれば「自分は(生理用品を隠すように包む)紙袋いりません」となる。しかし、紙袋を持たないことがかっこいいと伝えたいわけではない。いままで通り、隠してほしいと思う人がいてもいい。

「illuminate」にも「#NoBagForMe」にも共通しているのは、新しい「選択肢」を届ける、ということだ。

「#NoBagForMe」のプロジェクト発表後はネット上で大きな反響があった。ハヤカワさんはブログで、「Twitterや掲示板などで多くの声をいただき、現在の複雑な状況や様々な思いを肌で感じることができました」とも綴っている。

「議論することは悪いことじゃない、というニュアンスはしっかり伝わっていきたいと思います」。ハヤカワさんはそう話す。

「議論すること自体が悪いことで、一方が勝てば一方が負けるみたいな構図ができちゃっている。すると人格否定のコメントみたいなものも出てしまう。議論自体はいいけどそういう構図から離れ、健全な議論になってほしいと思います」

青山ブックセンター本店のポップアップショップには、「illuminate」の商品のほか、プロジェクトメンバーがチョイスした生理やジェンダーに関する25冊の本も並べられている。 

プロジェクトメンバーが選ぶ25冊の本も並んでいる
プロジェクトメンバーが選ぶ25冊の本も並んでいる
Huffpost japan/Aya Ikuta

生や性についてふと考えたとき、誰かと話したくなったとき、「なんで生理って恥ずかしいものだと思われてきたんだろう」「男らしく、女らしくの呪縛ってどうして起きるのか」といった素朴な疑問が湧くこともある。
そんな疑問に、グッとくる答えを探す糸口になるような1冊にも出合えるかもしれない。 

 【ポップアップショップ今後の予定】
6月20日〜7月29日 東京・青山ブックセンター本店
7月31日〜8月6日 大阪・大丸梅田店

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