日本を代表する漫画原作者、小池一夫さんが4月17日に亡くなっていたことが、本人のTwitterで19日に公表された。
昭和世代には、「子連れ狼」をはじめ、著名な漫画家と共に劇画タッチの漫画を次々と世に生み出してきた原作者として親しまれた。
一方で2010年から始めたTwitterでは、漫画原作者として時流を読む目をいかんなく発揮。2019年4月の時点で89万人を超えるフォロワー数をほこり、数々の“セリフ”で平成世代の心も揺さぶってきた。
稀代のクリエイターである小池一夫さんの軌跡を振り返る。
モンキー・パンチさん、楳図かずおさん、石ノ森章太郎さん━━数々の著名漫画家ともタッグ
小池さんは秋田県に生まれ、中央大学在学中に「桃太郎侍」などの作品を世に出した時代小説家である故・山手樹一郎さんに師事。
さいとう・たかをさんの漫画会社「さいとう・プロダクション」に入社。1970年から独立して作品に取り組み始めた。
漫画原作者として一番有名なのは「子連れ狼」。
水鴎流剣術の達人である剣豪・拝一刀が、殺害された妻・薊の無念を晴らすために非業な柳生一族への復讐を決意、息子の大五郎とともにさすらいの旅を続ける壮大な物語だ。時代劇漫画の金字塔と言っても過言ではない。
1970~1976年に連載され、1973~1976年には昭和の銀幕スター萬屋錦之介さん主演のテレビドラマの好評を博した。ドラマのオープニング曲にある「しとしとぴっちゃんしとぴっちゃん」というフレーズでも親しまれた。
数ある漫画原作の中でも、特に劇画漫画を中心に活躍。バイオレンスとエロを追求したアナーキーな作品を多く生み出した。
愛をテーマとしてラブコメディ要素の強い「魔物語 愛しのベティ」では、原作活動に対して第27回小学館漫画賞(1981年)で特別賞を受賞。異彩の作品としてファンから愛された。
小池さんは時代物だけでなく、様々なタッチの漫画家ともタッグを組んだ。
「ルパン三世」シリーズで知られるモンキー・パンチさんが、1970年に描いた「セクレタリー・バード(書記官鳥)」では原作者を務めた。
モンキー・パンチさんが亡くなった一報が出た4月17日、 ライバルでもあった彼に対して当時の思い出を語り「淋しくなるなあ」とつづっていた。
「まことちゃん」「漂流教室」などを描いた楳図かずおさんとは、1973年にビッグコミック上で「唇役にございます」を描いた。
このほか、1977年には「空中不動産や」の原作を務め、「サラリーマン金太郎」シリーズの本宮ひろ志さんが作画を担当した。同年には「多羅尾伴内」で石ノ森章太郎さんと、1979年には「課長島耕作」シリーズの弘兼憲史さんと「兎が走る」で組んでいた。
『キャラクター原論』を打ち出し、後世の漫画家、クリエイターたちを育てる
1977年には、後世の育成のために漫画家や漫画原作者などを養成する「小池一夫劇画村塾」を開講。
独自の「キャラクター原論」を打ち出し、キャラクターが漫画の面白さをつくり出すとしてキャラ創作やその動かし方、また場面での活かし方などをまとめた手法を伝えた。
第1期生は「うる星やつら」や「犬夜叉」などで知られる高橋留美子さん、3期生には「北斗の拳」の原哲夫さん、「ドラゴンクエスト」シリーズのゲームデザイナー堀井雄二さんらがいる。
このほか「グラップラー刃牙」シリーズや「餓狼伝」など、格闘技を題材とした作品を多く出している板垣恵介さんなど、多くの名だたるクリエイターを輩出した。
作詞家としても活躍。「マジンガーZ」や「科学戦隊ダイナマン」の作詞を担当していたと明かす
作詞家としては、東文彦という名義であることを公表していた。
以前から公表されていたが、2016年にTwitterで作詞家としての別名義を明かすと、過去を知らなかった世代も反応。「意外」「スマホを持つ手が震えてます!」などとファンを驚かせた。
「マジンガーZ」では「Zのテーマ」、「ぼくらのマジンガーZ」を作詞。「科学戦隊ダイナマン」のテーマ曲や、橋幸夫さんが歌うドラマ版「子連れ狼」のオープニング曲も手掛けている。
ご冥福をお祈りいたします。