今年の4月期のドラマは、「平成」から「令和」へ、元号の変わり目に放送されたというだけで、ドラマ史にその名を残すことになる。その中の一つ、テレビ朝日系土曜ナイトドラマ枠で放送される『東京独身男子』(13日スタート、毎週土曜 後11:15~深0:05)は、 “アラフォー独身男子”が不器用にもあきらめず懸命に生きようとしている姿を通して、“今”を描き出す。“時代をうつす鏡”として、時代の変わり目にブックマークしておきたいドラマかもしれない。
同ドラマの概要を聞いたときから思っていたのは、80年代~90年代前半のバブル時代を彩ったトレンディドラマっぽさ。平成が始まったのは1989年で、ちょうど昭和からバブルを引き継ぎ、ピークに達して、崩壊とともに影を潜めていった“トレンディドラマ”は、まさに“時代をうつす鏡”だった。
トレンディドラマっぽいと感じたのは、主人公たちが人並み以上の容姿を持ち、スペックも高く、気の合う仲間とつるみながら、独身ライフを謳歌しているところ。主演の高橋一生が演じる石橋太郎(高橋一生)はメガバンク勤務。斎藤工演じる三好玲也はバツイチの審美歯科クリニック院長、滝藤賢一は大手弁護士事務所のボス弁・岩倉和彦を演じる。
太郎と三好は同じリッチなマンションに住み、太郎の部屋に集っては不毛なおしゃべりに花を咲かせ、また時には恋愛市場にカムバックした三好のために夜の街に繰り出すなど、固い絆で結ばれている。
“あえて結婚しない”AK男子たちの周りには、三好の妹・かずな(仲里依紗)、岩倉の事務所に所属するやり手弁護士・日比野透子(桜井ユキ)、そして太郎の元恋人であり、今なお心揺さぶられる、旅行会社勤務の竹嶋舞衣(高橋メアリージュン)といった美しい女子がいて…。登場人物があと1人いたら『男女7人夏物語』(1986年)じゃないか、と思ったほど。
だからこそ、30年以上前と現代の違いが見えてくる。なにせ主人公たちの年齢設定も演じる俳優たちもアラフォー。『男女7人夏物語』は、当時結婚適齢期と言われた男30歳、女27~28歳の男女の物語で、主演の明石家さんまも当時31歳。この10歳の差が、“東京独身男子”たちの恋愛を困難なものにしていく。
太郎は、3年前に別れた恋人・舞衣と偶然にも再会。1度は夢見た彼女との“結婚”への未練を秘かに感じ始める。三好はめでたく離婚を果たしたのに、彼のアイデンティティに関わる重大な問題に直面して不安を覚え、岩倉は郷里の父が病に倒れ介護をすることに。順風満帆な人生を送っていた彼らは、重大な岐路に立たされる。結婚しようと思えばいつでもできると思っていた3人だったが、いざ相手を探し始めたら、なぜかうまく行かない!?
脚本を手がける金子ありさ氏は、主人公となる3人のAK男子について、「太郎は理想と現実の間でもがく『ごく普通の男性』にしたいと思いました。そのもどかしくなる不器用さ、悩んで幸せを追い求める姿を描く事で、多くの男性・女性の『分身』となれば」と。
三好に関しては、「あっけらかんとした『やんちゃ男性』」であり、「バツイチで、結婚生活にトラウマを持つ彼が、太郎たちを『独身沼』により深く沈めるという(笑)、ある意味重要な役どころ」とのこと。
最年長の岩倉は、「『独身最高峰』と銘打ちました。酸いも甘いも?み分けた彼の言葉は重いけれど彼が、『父親の介護』という転機を迎える事で、結婚とは、家族とは…と太郎たちも考えだします」と、それぞれの人物像を説明。金子氏は「彼らを通して、2019年現在を生きる『大人たち』へのエールを送る事ができたら」と、話している。