塩野義製薬は3月、発達障害をスマホやタブレットのゲーム形式で操作する治療用アプリの販売に参入すると発表した。開発した米国の会社に投資し、アプリの日本などでの販売権を得た。
対象となる発達障害は「小児注意欠陥多動性障害(ADHD)」と「自閉スペクトラム症(ASD)」の2つによる症状を改善するもの。
小児ADHDに働きかけるアプリ「AKL-T01」は脳の前頭前野を活性化するように設計されているもので、ピボタル試験をすでに完了し、米国食品医薬品局(FDA)に承認を申請している。
後者のアプリ「AKL-T02」はASDの不注意症状を治療する製品を開発中で、小規模な試験を完了。大規模な臨床試験を計画中だという。
■ 導入の背景は一筋縄にはいかない発達障害治療の難しさ
なぜ、発達障害の治療にゲームアプリの導入に至ったのか?その理由と背景について、塩野義製薬・広報部の石野雄介さんに聞いた。
━━治療用ゲームアプリ導入を決めた理由は?
ADHDや自閉スペクトラムなど、発達障害の治療は一筋縄には進みません。現状では錠剤などの薬を服用することが治療法の1つですが、今販売されている薬を服用するだけでは症状が全て良くなるというわけではありません。
治療に向けて様々なツールが今後必要となってくる中で、治療用アプリはその1つになり得ると考えたことが導入の理由です。
━━最近では、教育現場でゲームアプリを導入したり、タブレット端末を積極的に使用されたりしています。そういった事情も反映していますか?
いいえ。例えば、eスポーツ市場が盛り上がりを見せていたり、ゲームが教育の現場に導入されたりしていますが、我々のこの決定は、それとは別だと思っています。発達障害の治療というものを、“解決すべき社会の課題の1つ”だと捉えて考えています。
━━導入実現に向けた今後の流れは?
まず、今は医療機器としての承認を目指しています。いつ頃承認されるかはまだ未定ですが、臨床試験を2019年内に開始予定ですので、今年中に導入できればと考えております。
━━導入予定の地域は?
日本と台湾での導入の予定です。この治療用アプリが、新たな治療の選択肢を提供することに繋がればと思います。