「外人が連れてる日本人女はブス」発言を真っ向から否定する

だれがだれと付き合おうと他人には関係のない話です。とくに悪いことをしているわけでもないのに、人の恋路にわざわざ小石を投げつける必要はないと思います。
wowwa via Getty Images

お笑いコンビ「メッセンジャー」の黒田さんという方がある番組内で、「外人が連れてる日本人の女、ブスが多いんですよ」という発言をしました。ドイツ人の彼と来月結婚予定のわたしは当然、この発言を知って、いい気持ちはしません。
この発言を報じたニュースには、こんな風に書かれています。

北斗は「私が言うのもなんだけど、たしかにスゲーのと…」と言って笑いを誘った。進行役のハーフタレント・ホラン千秋は「私の親もそうですからね。父親が外国人で日本人の母親ですから」と述べた。アンミカが「おかあさん、きれいよね」と尋ねると、ホランは「いや、そんなにきれいでは確かにないです」と応じて場を盛り上げた。

番組内には、ハーフ(ダブル)であるホラン千秋さんや、アメリカ人男性と結婚したアンミカさんがいたようです。そのうえで、「外人が連れてる日本人の女、ブスが多い」という発言があり、場が盛り上がったとのこと。

この流れに違和感があるのは、わたしだけでしょうか?

言いたいことはわかります。主に白人男性とアジア人女性のカップルについて、そういう見方があるのも知っています。でもそういった印象は自分の心のなかにとどめておけばいいもので、わざわざハーフや外国人男性と結婚した人の前で、公共の電波を使って伝えるものではありません。

しかも驚くのは、ヤフーニュースに数多くの賛同意見が寄せられていたこと。「外人と一緒にいる日本人女はブス」と考えている人が一定数いるというのは、なかなか衝撃的です。

 外国人と付き合う=自国では相手にされない、という妄想

 ではなんでこんな主張がまかり通るのか? 賛同の声を集めるのか?

わたしもドイツ人パートナーがいるので何度か同じようなことを言われましたが、そういう主張の底には、

「自国で相手にされなかった女が美意識がちがう外国人に拾ってもらっただけ」
「日本人から好かれないから外国人に走った」
「外国人にだまされているのに気づけないバカな女」

という、よくわからない妄想があるような気がします。でもこれは結局、「自分の相手をしてくれない都合の悪い女を悪く言いたい」だけなのではないでしょうか。

自分の言うことを聞かないと「かわいげがない」、誘いを断ると「気取ってる」、優位に立てないと「ブス」。都合が悪くなるとこういう攻撃をする人は結構いますよね。それと似たようなことなのかなぁと推測しています。

>「外人が連れてる日本人の女、ブスが多いんですよ」

コメント欄が同意の嵐という地獄。「外人」は外国人に失礼だし、「連れてる」は女に失礼だよ。「日本人に相手にされないブスが価値観ちがう外国人にかまってもらってる」思想って改めて歪んでると思うぞ…https://t.co/886rGBYFkL

— 雨宮@『日本人とドイツ人』新潮新書 (@amamiya9901) March 25, 2019

たしかに、海外では思わぬ人がモテることもあるでしょう。ドイツでは日本的な「かわいい」が「幼い」と見られることもありますし、ブラジルではヒップが大事、という話も聞くので、国や文化によって価値観がちがうのは事実です。「なんであいつが?」と思うこともあるかもしれません。

とはいえ実際のところ、外国人と付き合っている日本人女性は、わたしのように、日本人男性ともお付き合いをしたことがある人も多いのではないでしょうか。

とくべつな人間がとくべつな理由で外国人と付き合うのではありません。だれにだって、今後外国人のパートナーができる可能性はあるのです。この記事を読んでくださっている、あなたにだって。もしかしたらお子さんが留学し、外国の方と結婚するかもしれないんですよ。

たとえ日本でだれとも付き合ったことがなかったとしても、国を超えて素敵な人と出会ったのであればそれはそれで祝福すべきことですよね。

いずれにせよ、だれがだれと付き合おうと他人には関係のない話です。ほとんどの人は、外見ではなく中身を好きになって一緒にいるというだけ。とくに悪いことをしているわけでもないのに、人の恋路にわざわざ小石を投げつける必要はないと思います。

他人の顔面偏差値をいちいち測定するな

「外人が連れてる日本人女はブス」というからには、まず「外人」と認識し、さらに「そいつが連れてる日本人女」の顔を見て、「ブスだなぁ」と判断するわけですよね。

日本では外国人が相対的に目立ちやすいので、目がいくことはあるでしょう。わたしも日本で彼と歩いてると、ジロジロ見られることがしょっちゅうあります。

でも、「あ、外国人だ」とは思っても、「外人に連れられてる日本人女だ! 顔面偏差値チェック! やっぱりブスでしたぁ〜!」なんて発想になるものでしょうか。

あまりに素敵な人で二度見してしまった…ならともかく、日常的に他人の容姿の良し悪しをチェックして、あまつさえそれを公言するのは、品のいい振る舞いではありません。やるとしてもせめて、心の中でお願いしたいところです。

日本のテレビ番組の倫理観は別世界のようです

テレビ局に勤めている方がいたらすみませんが、テレビ番組の倫理観、やっぱりちょっとどこかおかしいと思います。

デブ、ハゲ、ブスいじりが当たり前のように行われ、アイドルの体重を公開して泣かせ、独身=結婚できないキャラに仕立て上げ、オネェを「オッサン」と笑い、外国人ゲストをドン引きさせる……。そしてそれを放送してしまう。倫理観が数十年昔のまま止まっているような気がします。

 テレビで流すということは、少なくとも番組に携わった人たちが「ネタになる」「おもしろい」と思っているということ。本当にこれは、「おもしろい」一幕だったんでしょうか? 他人を「ブス」ということが?

こんなことを書くと、「嫌なら見なきゃいい」というコメントがきそうですが、それでは問題を野放しにするだけです。言われっぱなしになるということです。おかしいことには「おかしい」と言う権利があるので、言います。

他人をブスだと思うこと、国際カップルにネガティブな印象を抱くのは個人の自由。「傷ついた!」なんてセンチメンタルなことを言うつもりはありません。ただ、不愉快だから、納得がいかないから、反論したいのです。

他人の容姿をとやかく言うことが社会的に「NG」になっているご時勢に、こういった発言を放送するのはなかなか問題だと思います。そしてそれを持ち上げて、「そうそう、外人に連れられている女はブス!」と賛同するのも、個人の自由とはいえ「意味わかんないなぁ」というのが正直なところです。

そして最後に言わせてください。
犬じゃあるまいし、女を「連れてる」なんて表現をするな!

※このブログ記事は、「雨宮の迷走ニュース」に掲載された

写真はイメージです。筆者とそのパートナーの写真ではありません。

UPDATE】2020/08/16 17:40 写真を取り替えました。

注目記事