いにしえより「酒は百薬の長」と言いますが、お酒にはストレスの解消、人間関係の円滑化、食欲アップ、動脈硬化の予防など、カラダだけでなく精神的にも様々な「効能」があります。しかし、お酒の飲み過ぎで粗相してしまったり、二日酔いに悩まされたり、さらには体調を崩してしまったり…ココロにもカラダにも健康的なお酒の飲み方はどうすればいいのでしょうか? お酒と上手に付き合うための3原則(①酔いすぎない、②二日酔いにならない、③依存しない)を解説します。
酔いすぎない
■お酒に酔うってどういう状態?
そもそも酔っている状態はどのように作り出されるのでしょうか? お酒を飲むと、肝臓で代謝されない、あるいは、代謝しきれないアルコールが血液中に溢れ出します。「酔い」は、このアルコールが脳に回り、アルコールの麻酔作用によって脳がマヒしてしまうことで起きるのです。
アルコールによる麻酔作用は脳の外側から徐々に起こります。まず脳の外側(高次機能)がマヒすることで、おしゃべり、陽気、さわやか気分、幸せ気分、自制心の欠如などが認められます。さらに 、脳の中心部(小脳や大脳辺縁系)へ麻酔作用が広がっていくと、ロレツが回らない、千鳥足、情緒不安定などが認められるようになります。さらにアルコールの血中濃度が高まっていくと、まともに立てない、意識朦朧(もうろう)状態の泥酔状態となり、呼吸停止を起こし死に至ることもある危険な状態になりますので、酔いすぎは禁物です!
二日酔いにならない
■お酒を飲んだ時、深夜に目が覚めるのは「二日酔い物質」が原因
お酒でよくある困りごとは「二日酔い」。二日酔いの最大の原因は「アセトアルデヒド」と呼ばれる二日酔い物質です。アセトアルデヒドはアルコールが肝臓で分解される過程で生じる物質ですが、分解しきれなかったアセトアルデヒドが血中を巡ることで様々な症状を起こします。アセトアルデヒドは毒性が強く、胃痛や胃もたれ、頭痛、動悸などのつらい症状が現れます。また、アセトアルデヒドは覚醒作用があり、睡眠の質を低下させます。お酒を飲んだ後はよく眠れるけど、目が覚めたら朝の3時だった、という経験のある人もいるでしょう。それは、アルコールの麻酔作用で入眠し、アルコールが分解されてできたアセトアルデヒドで目が覚めているのです。
■二日酔いを抑えるには「水」
二日酔いにならないためには、アセトアルデヒドが早く分解されカラダの中から消えてしまえばいいのです。アセトアルデヒドの分解反応を起こすには「水」が必要です。しかし、お酒の利尿作用や血管を広げる作用によって、カラダは脱水状態になってしまい、アセトアルデヒドが分解されにくいのです。二日酔いにならないためには、まず「水分」を摂るようにしましょう。目安としては、コップいっぱいのお酒を飲んだら同じ量の水を飲むようにしましょう。
二日酔いにならないためには、水分をたくさん摂ることの他に、肝臓の解毒作用を高めることも重要になります。その大前提として、自分の肝臓のアルコール代謝能力・二日酔い物質の解毒能力がどれほどのものか、を自覚する必要があります。
■お酒に強い人弱い人
ご存知の通り、お酒に強い人弱い人はアルコールを分解できる酵素を持っているか持っていないか「遺伝」によって決まります。お酒に強い弱いは人種により大きく異なります。白人や黒人はほぼ100%がお酒に強い人ですが、東洋人では弱い人が約半数を占め、欧米ではこれを「オリエンタルフラッシュ」と呼んでいます。日本人の場合、55%が強い人。残りの45%の弱い人のうち、少しは飲める人が約37%、全く飲めない人(下戸)が約8 %といわれています。自分がアルコールを代謝できる体質かどうか、それを頭に入れてお酒を飲む量を調整するようにしてください。
■酷使している肝臓の働きを高めるために
1. アミノ酸を摂る
肝機能を上昇させるためには、アミノ酸の摂取がオススメです。グルタチオンやシステイン、分岐鎖アミノ酸(BCAA)などのアミノ酸には肝機能を向上させたり、肝臓へのダメージを軽減する効果があると報告されています。これらは赤肉・魚介類などの動物性タンパク質に多く含まれていますので、肝疲労が気になる方は積極的に摂取するようにしてください。また、サプリメントでも摂取することができます。
2. ビタミンB1を摂る
お酒をたくさん飲んだ時、アルコールを分解するためにビタミンB1が大量に消費されてしまいます。それだけでなく、お酒によって腸からビタミンの吸収が落ちたり、腎臓から排泄されやすくなるため、ビタミンB1不足に陥ってしまいます。ビタミンB1はサプリメントだけでなく、豚肉・うなぎ・たらこ・ナッツ類の食品に多く含まれます。二日酔いが長引く方・アルコール摂取量が多い方はビタミンB1不足のために肝臓の解毒作用が落ちているかもしれませんよ。
3. アルコールの吸収速度を抑える
アセトアルデヒドの産生を抑えるためには、アルコールの量だけでなく吸収速度も大切です。アルコールの80%は「小腸」で吸収されます。何かを食べてからお酒を飲むと、胃の出口が塞がれ小腸へのアルコールの移行が遅くなり、肝臓に一度に負荷がかかることはありません。
また、アルコールの濃度によってもアルコールの吸収速度が異なります。濃度が濃いから吸収が早いというわけではなく、実は、アルコール濃度が15-30%のお酒が最も吸収が速いといわれています。さらに、炭酸を含むお酒(シャンパンやハイボール)は胃の運動を刺激しお酒を早く小腸に移行させるので、血中アルコール濃度が上昇しやすいのです。酔っている時、その酔いがアルコール量のせいなのか、吸収速度のせいなのか、考えてみると飲む量にブレーキがかかるかもしれません。
依存しない
■隠れアルコール依存症に注意!
お酒は手軽で身近な存在です。アルコールと上手に付き合って行く3つ目のポイントは「依存しないこと」です。隠れアルコール依存症は意外と多いのですが、あなたは当てはまっていませんか?
最近 6ヶ月の間に次のようなことがありましたか?
- 酒を飲まないと寝付けないことが多い
- 医師からアルコールを控えるようにと言われたことがある
- せめて今日だけは酒を飲むまいと思っていても、つい飲んでしまうことが多い
- 酒の量を減らそうとしたり、酒を止めようと試みたことがある
- 飲酒しながら仕事、家事、育児をすることがある
- 私のしていた仕事をまわりの人がするようになった
- お酒を飲まなければいい人だとよく言われる
- 自分の飲酒についてうしろめたさを感じたことがある
*「はい」が1点、「いいえ」が0点になります。合計点が3点以上で アルコール依存症の疑い、合計点が1-2点で要注意です。(項目6による1点のみの場合は正常)
(引用:KAST-F)
以上、おいしく健康的にお酒と付き合う3原則について解説しました。まず、お酒に強いか弱いか自分の体質を知ること。そして、体質に合わせた飲酒量に抑えること、肝臓を酷使しないことで因子に伴うトラブルを回避できます。また、知らずしらずの間に依存症になっていることに注意が必要ですね。この3原則を頭に入れて、健康的なお酒の飲み方を身につけてくださいね。
この記事は2019年2月5日VoCE公式サイト掲載記事「日本人でお酒に強いのは◯◯%!隠れアルコール依存症チェックリストも!」より転載したものを元に加筆・修正したものです。