万雷の拍手に包まれて見送られたシアトル・マリナーズのイチロー選手。予想外に歴史的ゲームの証人となった観客たちは万感の思いでイチロー最後の打席を見送った。
アメリカ在住の会社経営者の小野里晃さん(49)もその一人だ。
イチロー選手を観るために帰国したという小野里さんは、8回裏に交代でベンチに下がったイチローの姿に、涙が溢れたという。
「自分が生きている間、こんな選手はもう出てこないと思っているだけに、これが本当にイチロー最後の勇姿になるのかと思ったら、込み上げてくるものがありました」
本場・アメリカでトッププレーヤーとして活躍を続けてきたイチロー選手は、「アジアを代表する選手だった」と小野里さんは語る。
小野里さんの前に座っていた台湾から来たカップルは、アスレチックスファンだが「野球ファンなら、誰でもイチローのファンだ」と、スタンドが一体となってイチロー選手に声援を送っていたという。
「アメリカで活躍するイチローの姿に、心躍らせ、勇気をもらっていた。そんな気持ちにさせられたのは、野茂、イチローだけです」
「不世出の選手だと思います」
小野里さんは、アメリカ在住の日本人にとってのイチロー選手の存在の大きさをこう語った。
延長12回の激闘を終え、ヒーローインタビューを終えた後も、スタンドから観客が立ち上がることはなかった。
「イチロー」コールが鳴り止まず、ベンチからロッカーに通じるドアが開くたびにイチロー選手の登場を期待してどよめきが上がった。
試合終了後約20分を経過して、イチロー選手が再びグラウンドに登場すると、大きな歓声と拍手。イチロー選手もゆっくりと場内を歩いて回りながら、笑顔で手を上げて答えた。
そんなイチロー選手の様子を、マリナーズの選手らは携帯電話で写真や動画に納めていた。