時間外労働の上限規制などが盛り込まれた働き方改革関連法が4月1日に施行される。ワーク・ライフバランス社の小室淑恵社長は、働き方改革の必要性をいち早く訴え、経営戦略として企業が労働時間削減に取り組むことの意義を説き続けてきた。
3月18日には、同社が主催したシンポジウム「働き方改革と人生100年時代の企業経営」で、新たに「男性社員が育休を100%取得できる職場づくりの宣言」を提案。
約150人の企業の経営者たちを前に、小室さんは「一緒にこの社会を引っ張っていく側になっていただけたら。ここから新しいムーブメントを起こしていきましょう」と呼びかけた。
勝利の法則は「働き方改革 → ダイバーシティー → イノベーション」
ワーク・ライフバランス社が、企業に対し労働時間削減に取り組む「労働時間革命宣言」の提案をしたのは、2016年6月。小室さんは、働き方改革は企業が勝ち残るために必要な方策だと訴える。
「イノベーションを起こすためには、多様な人材がフラットに議論する場が意思決定層にまであることが大事。では、なぜ多様な人材が現場にいないのか。これまでは事実上、働き方の門前払いが存在していたからです。つまり長時間労働ができないと、重要な仕事や登用は与えられなかったんです」
「イノベーションの源泉は、ダイバーシティー。多様性を阻害する働き方を変えなくてはいけない。働き方改革、ダイバーシティー、イノベーション、と一気に進んでいかないと、勝てません」
男性新入社員の8割が育休取得を希望
安倍晋三首相が「女性活躍」をアベノミクスの柱として掲げたのは2014年。女性活躍推進や働き方改革の法整備も進み、女性が家庭と仕事を両立する環境は着実に整ってきた。
2016年の育休取得率は、女性が8割を超えたのに対し、男性は5.14%にとどまる。
一方、我が子が誕生したら「育休を取得したい」と考える若い男性は多い。
公益財団法人「日本生産性本部」が2017年度の新入社員に行ったアンケートでは、「子供が生まれたら育休を取得したい」と回答したのは、女性で98.2%、男性で79.5%に上った。
シンポジウムで、小室さんは「男性が育休をとると、新しいコミュニティーに参加したり、生産性が高い働き方ができるようになる。育休はイノベーションを生むいい機会です」と語った。
すでに「男性育休100%企業宣言」への賛同を表明している企業もある。
その一つ、自動車部品メーカー「アイシン」について、小室さんは「現在は取得率が13%ですが、いいんです。今のパーセンテージは。これから100%に向かうという宣言が大事なんです」と強調。
この日参加した企業のうち58社が新たに賛同を表明した。
大和証券が最優秀賞
シンポジウムでは、トップが自ら働き方改革に取り組んでいる企業を表彰した。
最優秀賞は大企業部門が大和証券、中小企業部門が三重県の調剤薬局「エムワン」が受賞した。
主な受賞企業は以下の通り。
【最優秀賞】
・中小企業部門
エムワン(三重県)・大企業部門
大和証券【特別賞】
・労働時間部門
さくらインターネット株式会社・ビッグインパクト部門
株式会社ジャパネットホールディングス・インセンティブ部門
三菱地所プロパティマネジメント株式会社・評価制度部門
住友生命保険相互会社・業界改革部門
大塚倉庫株式会社