最近、このような動画が話題になりました。
赤信号で待つのが好きという人はあまりいないでしょう。
ましてや、待つのが楽しいという人となると探す方が困難です。
しかし、そんな「赤信号」を楽しくさせる試みがあったとしたらどうでしょう?
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ポルトガルのリスボンにある交差点では、信号無視が多発していたそうです。
非常に危険な交差点になっていました。
そこで、行政はどうしたか?
一般的には、罰則を厳しくする……なんて手段がとられそうですが、ここでは全く逆の方法論がとられました。
のです。
具体的には、赤信号のサインを、「踊らせ」ました。
陽気な音楽とともに。
そして、その踊るサインも、実は広場に設置されたブースで作られたもので、市民が踊るのに連動して動くという画期的なアイデアでした。
広場で市民がブースの中で踊る→連動して、交差点の赤信号のサインが同じ動きをする。
それをみた信号待ちの人たちは、楽しくなって一緒に踊りながら赤信号を待ったのです。
ぜひ一度動画を見てください。
さて、ここで、本題です。
アメリカの心理学者でスキナーという人がいました。
彼は、「オペラント条件付け」というものを定義して、学習者の自発的で意図的な反応や逓減を学習目標とした手続きを研究しました。
勉強が嫌い、やりたくないという子ども。
約束を守らない子ども。
いっこうに仕事を覚えない部下。
彼らは、指導者側から見て、「自発的で」「意図的な」「望ましい」行動はしていません。
そこで、多くの場合、「アメ」や「ムチ」を与える事で、どうにか彼らを行動させようとします。
その時に、ぜひ意識して欲しい事があります。
それは、「行動随伴性」という4つの視点です。
①自発的な行動の頻度が高まるような何らかの刺激が生まれて、それにより自発的な行動の頻度が高まった。(正の強化)
②自発的な行動の頻度が高まるような何らかの刺激がなくなり、それにより自発的な行動の頻度が低まった。(負の罰)
③自発的な行動の頻度が低まるような何らかの刺激が生まれて、それにより自発的な行動の頻度が低まった。(正の罰)
④自発的な行動の頻度が低まるような何らかの刺激が消失し、それにより自発的な行動の頻度が高まった。(負の強化)
例えば、
「叱って、叩いて、それによって、たくさん子どもが勉強するにようなった」(①)
しかし、それをしなくなったら、勉強をしなくなった。(②)
お父さんが嫌いで、それに反発するように勉強しなかったのが、(③)
お父さんがいなくなったことで勉強するようになった。(④)
という4つの事例があります。
「勉強するようになった」とか、「勉強しなくなった」という観点においては2種類ですが、
なんらかの「刺激」(そしてそれは、自発的な行動の頻度を高めるものなのか低くするものなのかの2種類ある)が出現した事によってそうなったのか、あるいは、消失した事によってそうなったのか、
その点を分析すると、その子(あるいは部下)の行動の癖が見抜けます。
「やる気になる」という要素ってやはり人それぞれなので、「一般論」を試してみてもうまくいかないケースの方が多いのです。
よって、「試行錯誤」が必要になってきます。
その試行錯誤をする時に、上記の4つの視点で分析すると、より効率的に、「より良い方法」を見つけることができます。
この信号機のケースも、「赤信号のサインが踊る」という刺激によって、自発的にその場で待つという頻度が増えている訳ですが、当然それをなくせば減るのかもしれません。
今度は逆に、信号無視の罰を強化して、それによって、自発的にその場で待つという頻度が増えた割合を比較して、どちらが有効なのかを検証するとよいでしょう。
人間の行動は、環境の変化にかなり左右されます。
よって、指導的な立場にいる人が部下や子どもの自発性を促したい場合、あるいは自分自身が自分をコントロールしたい場合には、自分の行動随伴性を分析すると良いのです。
自分の望ましい行動の頻度が上がった時、あるいは、自分の望ましくない行動の頻度が下がった時、それは何によってそうなったのか、それを4つの視点で分析する。
そうすることで、自分自身をコントロールするヒントになるのだと思います。
あるいは、部下や生徒をいかに指導して行くのかの大きなヒントになる事でしょう。
あれ?この子ちょっとやるようになったかしらね?
なんでそうなったのかしら?
4つのうちどのケースに当たるのかしら?
そんな視点で見つめてみてください。