二度目の世界舞台へ挑む川島永嗣。彼が口にしたのは、落選した仲間たちへの思いだ。特に中村憲剛とは川崎時代も共にプレーしており、特別な感情があるようだ。
■「パラグアイ戦で負けたところから、ブラジル大会を意識してやってきた」
21日にスタートしたブラジルW杯へ向けた日本代表の指宿合宿。4日目の24日には2010年南アフリカW杯ベスト16進出の立役者ともいえる本田圭佑、長友佑都、川島永嗣の主力3人組がようやくチームに合流した。
守護神・川島は、4年前の南アのパラグアイ戦でPK戦負けした苦い過去を糧に、ベルギーで自己研鑽してきた日々に思いを馳せながら、初日の2部練習をしっかりとこなしたようだ。
「ホントに自分自身は4年前にパラグアイ戦で負けたところから、しっかりここ(ブラジル大会)を意識してやってきたし、気持ちの変化っていうのはそこまではないです。
合流前は18日まで試合をしていましたし、数日オフを取りましたけど、頭を切り替えるだけでよかった。自分の中で今シーズンが始まってから長くなるって言うのは分かっていた。
プレーオフが終わってからも、そんなにシーズンが終わったって感じじゃなかったし、気持ち的にもフィジカル的にもシーズン中のコンディションと全く変わらない。自分としては特別何かをしようとは思っていない。
本番まで残りの時間で、1%でも2%でも自分自身もチームもレベルアップしているかどうかが重要だと思います」と、彼はベテランらしい落ち着いた口調で、現在の心境を語っていた。
■「W杯に懸ける憲剛さんの強い思いも知っていました」
ベルギーでシーズンを終えたばかりの川島【写真:Kazhito Yamada / Kaz Photography】
わずかなオフの期間には、川崎フロンターレ時代のチームメートであり、先輩である中村憲剛とも会って話をしたという。中村憲剛は自身のブログでもブラジルW杯の落選がどれほど大きな喪失感だったかを記していたが、その思いを川島は痛いほど分かっているようだ。
「代表が発表になった後、向こう(ベルギー)からも電話しました。ホントはW杯の後に食事行こうって話はしていたんですけど、少し時間もあったし、フロンターレにも顔出しに行こうと思っていたんで、会う機会が持てました。
ホントにここまでずっと一緒でしたし、フロンターレでも一緒にやってきて、時間を共有してきたんで、W杯に懸ける憲剛さんの強い思いも知っていました。もちろん憲剛さんだけじゃなくて、この場所にいたかった選手は多いし、気持ちも大きい。
自分たちは23人の力だけじゃなくて、そういう選手たちの気持ちも含めて、より大きな力を出していきたいと思います」と川島は落選した仲間たちの思いを背負って、二度目の世界舞台に向かうつもりだ。
■「W杯は大きな可能性を秘めている大会」
GK争いは一段と激化している【写真:Getty Images】
4年前は大会前に楢崎正剛から正守護神の座を奪う形でピッチに立った。チームの悪循環を断ち切りたいという岡田武史前監督の大胆な判断が、川島の立場をガラリと変える結果になったのだ。
「4年前はいろんな意味で人生の転機だった。それだけW杯は大きな可能性を秘めている大会。ただ、当時は海外と戦う場合もイメージの中でやらなければいけなかったけど、今は自分の中でより明確になっているところがあります。
海外に出て厳しい状況の中でやってきたことは、前回とは違うところだと思いますから」と彼自身の見える風景は確実に変化した。それをブラジルの地で発揮することが、何よりも重要である。
サンフレッチェ広島2連覇の原動力となった西川周作(現浦和)の追い上げもあり、GK争いは一段と激化しているが、予期せぬ出来事が起きない限り、今大会では川島が中心となってゴールを守ることになるだろう。
彼の的確なコーチング、シュートストップ、味方との連携、攻撃への起点となる動きがあってこそ、日本は自分たちらしいサッカーができる。それを目指す川島のチャレンジはこれからが本番だ。
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(2014年5月26日「フットボールチャンネル」より転載)