トランプ大統領、新型コロナ対策として「光の体内照射」や「消毒液の注射」を提案⇒専門家から批判相次ぐ

「危険なので決してやらないように」「主に自殺に使われる方法」といった呼びかけが続いています。
Engadget 日本版

米国のトランプ大統領は23日、記者会見のなかで、新型コロナウイルス対策として(漂白剤やイソプロパノールなどの)消毒液の注射と、「紫外線または強力な光」を人体に照射し肺など体内のウイルスを破壊する案について発言しました。

この発言は連邦政府による新型コロナウイルス対策への取り組みとして、国土安全保障省(DHS)の科学技術担当官が日光や気温・湿度などの環境が及ぼす影響と、家庭用の漂白剤や消毒用アルコールなどの効果について説明した際、大統領が補足あるいは提案としてコメントしたもの。

DHSは3月より、新型コロナウイルスはどのような環境で不活性化するのか、感染を抑止できるのかについて実証実験を進めており、23日の会見ではビル・ブライアン次官がこの結果について発表しました。

そちらの内容は、唾液中の新型コロナウイルスを様々な温度・湿度や太陽光あり・なしの環境に置いたところ、たとえば摂氏21度から24度で湿度20%、日光なしでは半減期が18時間だったのに対し、同じ温度で高湿度(80%)の場合は6時間、さらに夏の日光(に相当する紫外線)ありでは2分間だったなど。

また一般的に家庭で使われる漂白剤や消毒用アルコール(イソプロパノール)でも、短時間でモノの表面についたウイルスを不活性化できたことを示し、米国民が日常の中でできる対策について説明しました。

トランプ大統領の発言はこの発表のあと。用意された原稿ではなく、おそらくいつものようにその場で思いついたか思い出したことを口にしたらしく、口語的に不明瞭な部分もありますが、流れと大意としては「紫外線や、あるいはただの強烈な光を体内に当てる、皮膚の上からか、何か他の方法かはわからないが、そうしたことはまだ未確認だそうだが、テストしてみるべきだと(担当者に)伝えた。どうなるか興味深い」

また「消毒液(disinfectant)は、わずか一分でそれ(ウイルス)をやっつける。注射か何かで体内に入れるやり方がないだろうか。クリーニングのような。肺に入ってすごい数になるからだ。なので、(消毒液の注入は)検討に値するだろう。(試験には)医者が必要になるだろうが、試す価値があると思っている」

この会見には、米政府の新型コロナウイルス対策チームに所属する調整官で、従来から米国の状況や対策について表に立って説明してきたデボラ・バークス医師も同席しています。大統領が「強烈な光の照射で体内のウイルスを破壊」「消毒液を注射」案を発言中のバークス医師の反応はこちら。


バークス医師はこの後、大統領に「熱や光を使ったコロナウイルスの治療について聞いたことはあるか」と問われ、人体が発熱するのは感染症に対応するためだが、治療法として熱や光を使った例は知らないと回答しています。

DHSのブライアン次官はこの後の記者の質問に対して、紫外線の体内照射実験等は予定していないと答えました。

この大統領発言を受けて、政府機関を含む医療関係者や公衆衛生関係者からは、「漂白剤や消毒液を飲んだり、吸引したり、体内に注入するのは危険なので決してやらないように」「主に自殺に使われる方法」といった反応や呼びかけが続いています。

米国CDC(疾病管理予防センター)が4月20日に発表した報告書によれば、2020年1月〜3月には、洗剤や消毒液関連の健康被害報告が前年同期比で20%から16%増加しました。こちらはおそらく新型コロナウイルスのニュースで予防意識が高まりそうした製品が多く使われるようになったためと推測されています。

トランプ大統領の発言はあくまで専門家に対して自分のアイデアを試してみるよう伝えたとの内容であって、国民に対する自家療法アドバイスではありませんが、不安のあまり消毒液を直飲みしたり吸い込んで病院に運ばれるかたが増えないことを祈るばかりです。

関連記事

注目記事