スタディプラス、月額980円で人気の受験参考書を使い放題に。赤本や「速単」もスマホで利用可能

現在は人気参考書など30冊が使い放題。2020年夏までに100冊まで拡充する予定
Tech Crunch 日本版

 洋服や住居、家具といった生活には欠かせないインフラから、映画(動画)や音楽、書籍のように日々の暮らしを豊かにしてくれるエンタメまで、今やあらゆるものの“サブスク化”が加速している。

今回紹介するのも9月17日にローンチされたばかりのサブスクリプション型サービス「ポルト」。このサービスがサブスク化するのは大学受験生向けの参考書だ。

開発したのは学習管理アプリ「Studyplus」を展開する教育系スタートアップのスタディプラスで、ポルトは同社にとっての新規事業となる。

出版社12社が参画、人気参考書など30冊が使い放題


ポルトは大学受験生向けの電子参考書を月額980円で自由に使えるスマホアプリだ。

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紙の参考書をシンプルに電子書籍化したものとは違い、スタディプラス側で各参考書のデザインをスマホに最適化した形で提供するため、アプリからでも使いやすいのが特徴。問題ごとに解答・解説がチェックできる機能や、英単語や英文を読み上げてくれる機能を備える。

またデジタルのメリットを活かして各参考書の進捗率や正答率といったデータを蓄積したり、しおりや付箋を使う感覚で後からチェックしたい問題を簡単にブックマークすることも可能。スマホで参考書や問題集を開きながら「紙のノート」に問題を解いていく使い方も想定し、ノートを撮影した写真データを参考書ごとに紐付けて管理できる機能も用意されている。

もちろん定額使い放題だからといって肝心のコンテンツ(参考書)がイケてなかったらどうしようもないけれど、ポルトにはローンチのタイミングで教育系出版社12社が参画。現時点で定番の参考書を始め30冊が使い放題の対象だ。

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 詳しいラインナップは公式サイトから見ていただくとして、代表的な英単語帳シリーズの1つ「英単語ターゲット」や「速読英単語(必修編)」、地歴・公民ではおなじみの「山川 一問一答」シリーズ、一部科目のみではあるものの「センター試験過去問研究(赤本)」などがすでに登録されている。

ポルトの事業責任者を務める長田拓也氏の話では、各出版社の協力のもと「(単に数を集めるというわけではなく)実際にStudyplusで記録数が多い人気の参考書を中心に提供してもらっている」そう。参考書は今後も拡充する計画で、まずは2020年夏を目処に累計100冊を予定しているという。

並行して新興出版社啓林館、Z会ソリューションズ、第一学習社と協業し学校法人への販売体制を構築。ポルトを授業や自宅学習で利用する学習用デジタル補助教材としても展開し、2020年度には約100校への導入を目指していく。

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「スマホ参考書」を用いた勉強スタイルの普及へ


スマホが普及する前に大学受験を経験している人にとっては、もしかしたら「スマホで受験勉強」と言われてもいまいちピンとこなかったり、あまり良い印象を持たないかもしれない。僕自身も受験生だったのは11年前で、受験勉強には紙の参考書や問題集を使っていた。

実際長田氏に話を聞いていても「スマホ×電子参考書」という流れ自体はまだあまり普及していないそう。すでに一部の参考書がKindleなどで電子版として提供されているものの、高校生などにヒアリングする限り利用度や認知度は高くないと感じているという。

一方でスマホを使って勉強をすること自体は、もはや今の高校生世代にとって珍しいことではない。勉強にスマホやタブレットを使う「スマ勉」という言葉が存在するくらいだし、ツイッターやインスタなどのSNSで勉強用のアカウント(勉強垢)を作ってモチベーションを上げる学生もいる。

「スタディサプリ」のようなサービスを使えば従来は予備校で提供されていたような講座をスマホから受講できるし、普段は気晴らしに使っているYouTubeも勉強系YouTuberの動画を見れば勉強用のツールになる。

「例えばマンガもかつては紙が主流だったが、そこから電子書籍やスマホのマンガアプリが普及し、今ではスマホの縦長フォーマットからスタートした人気作品が紙の単行本になるような流れもある。高校生もスマホでマンガを読むので、参考書が同じようにスマホになっても馴染んでもらえる可能性は十分あると考えている」(長田氏)

ユーザーアンケートでは「紙の参考書が重くて持ち運びにくい」「なるべくスマホで済ませたい」という回答もあったそうだけど、スマホの中に参考書を収納しカバンを軽くできるのは電子参考書の大きなメリット。サブスクの観点ではある程度ラインナップが増えれば、複数の参考書や問題集をどんどん試し読みして「自分に1番合っているものを探す」目的で使うこともできそうだ。

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 長田氏によると今後は「マークシート方式の問題集に回答を入力すると自動で採点してくれる機能」などいくつか新たな仕組みの導入も検討していくそう。Studyplusとの連携も強化しながら、蓄積された学習データを基に各ユーザーに最適な参考書をレコメンドする仕組みなども視野に入れていく。

「創業者の廣瀬自身がもともとコンテンツをやりたいという思いがあったことに加え、コンテンツ会社と連携して参考書をスマホアプリで提供することで『ユーザーの手間をかけずに学習の記録が蓄積していき、そのデータを解析してレコメンドに活かす』というような構想自体も初期から考えていたもの。ただそのためには十分なコンテンツが入ってこないと難しかった」(長田氏)

2012年リリースのStudyplusは2019年9月時点で累計ユーザー数が470万人のプラットフォームに成長。2016年から始めた教育事業者向けの「Studyplus for School」も含めた事業の拡大とともに出版社側との関係性も徐々に構築され、今回のタイミングで「(12社に参画してもらう形で)ようやく実現できた」(長田氏)。

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「ポルトというサービス名を選んだのは言いやすく、覚えやすいということに加えてラテン語で『持ち運ぶ』という意味があること、そしてポルトガルにはポルトという港町があり『同国が世界へ進出する起点になったこと』からきている。このサービスを受験生にとっての港町のような存在になるようにしていきたい」(長田氏)

なおスタディプラスでは8月に増進会ホールディングス(Z会グループの持株会社)、新興出版社啓林館、旺文社ベンチャーズ(旺文社のCVC)の3社から資金調達も実施している。これはポルトに限った話ではなく既存事業のアップデートも見据えた調達になるが、今後各出版社との連携も強めながらさらなる事業成長を目指す計画だ。

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